音楽だけの力ではCDは売れない時代なのかも
耳タコですが、「CDが売れない時代」です。
そんなことはもう分かっている。若者はYouTubeで音楽を聴き、買うとしても1曲ごとのダウンロード。なので、「アルバム」や「盤としてのCD」は全く意味がない。
そんなことはもう分かっている。なので、ライブで物販を頑張ったり、握手会などの接触のためにCDを複数枚買ってもらったり。もはや「音楽の入れ物としてのCD」には誰も(作り手も消費者も)期待していない現状なのです。
しかし最近、ちょっと違う出来事やニュースを目にするようになりました。
アルバムが売れているのです。
3代目JSBのアルバムは初週で50万枚突破。累計では60万枚も超えています。セカオワも累計で50万枚に迫る勢い。そしてテレビにはほとんど出ないワンオクでさえ初週で16万枚以上を売り上げ、オリコンチャート1位を獲得しました。
しかもこれらのアルバムは、枚数を稼ぐための不必要なバージョン違いなどはありません。握手券などもありません。純粋に「このアルバムが欲しい」から売れているのです。
参考記事↓
ONE OK ROCK、新アルバムが16万枚突破 好セールスから見える若者の音楽需要の動向とは? - Real Sound|リアルサウンド
この記事にある
等身大の冴えない日々をギターに乗せて歌っていても、そりゃCDは売れないだろう。だが若者たちは音楽を欲している。壮大なファンタジーでも骨太なアメリカン・ロックでもいいが、ぼんやりした日常を打破するような音楽を、それを与えてくれる自分たち世代のスターを欲しているのだ。
という部分はものすごく頷きました。確かにそうだ。目から鱗です。
かつてロックを始めとしたポップミュージックは「自分の冴えない日常をこのアーティストだけは分かってくれる音楽」だったのですが、今は冴えない日常を「俺たち冴えないよな」と傷を舐め合っても楽しくない時代なのです。
社会や日常が楽しくないから、「楽しくない」なんてわざわざ言われたくないのです。「失われた20年」と言われながらも、かつては日常は楽しいものでした。その渦中には分からなくても。
日常が楽しかったからこそ「楽しくない」と言える余裕があったのですが、今はそれすら無くなりつつあるのかもしれません。
そこで、こういう「日常を越えるエンタテイメントやファンタジー」の音楽が売れているという推論です。
しかしそうであっても、若者は音楽はYouTubeやダウンロードで済ますものではないのか?現在の音楽不況はそういう理解と解釈で語られてきたのではないのか?
ここからは私の推論ですが、これは「ファンというコミュニティにいる証明」なのではないかと思うのです。「いい曲だから買う」ではなく、「このアーティストのファンだから買う」。
曲がいいからファンになるというのが前提ですが、いい曲だけではCDは買わない。買う理由がないから。
そのバンドやアーティストのファンになって、初めて買う。それはジャニーズを始めとした「アイドル」の商売方法です。
人気のあるバンドやアーティストは多かれ少なかれアイドル要素はあるものですが、SNS時代になってその傾向はより強く、濃くなっているように思います。
自分はもちろんファンだから、そのアーティストが新曲を出すのは嬉しい。ただし、買うかどうかは分からない。無料で聴く手段もPVを見る手段もあるのだから。
しかし、Twitterでは自分でセレクトした自分好みの人たちばかりなので、「新曲楽しみだね」「絶対買う」「保存用や布教用も買わなきゃ」など、自分以上のファンがたくさんいるのです。狭くて濃い世界だから。
そうなると、「熱心にYouTubeを見る」のはファンではないのでは?ファンならCDを買うのが当たり前なのでは?となり、買ってしまう。
ライブ会場でTシャツを着たりタオルを回したりするのと「CDを買う」が同列になりつつある気がするのです。ちょっと大げさですが。
ファンである証として、今や無用で高価な「CDなるもの」を買う。それによりコアファンたちと連帯感を持ち、ライトファンへの優越感を持つ。なんて考えるのはさすがに穿ちすぎでしょうか。
こんな私の理屈はともあれ、CDが売れるのはいいことだ。これが次の新曲やいいライブにつながっていくのだから。みんな、CD買おうぜ。
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