やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

「面白い」から「楽しい」へ~リズムネタがウケる理由~

8.6秒バズーカーの「ラッスンゴレライ」については既にいろいろなところで語られつくした感があるので、今さら私みたいなもんが何か語ることももうないのですが、「ボクらの時代」という番組で触れられていてちょっと気になったので、遅まきながら書きます。


この番組で松尾スズキさんが

これ、言っていいのかどうか分かんないけど、「ラッスンゴレライ」っていうのがよく分からなくて、切ない。
まさに「今」っていう笑いについていけてない自分っていうのが。

と発言していました。「言っていいのかどうか」というのは、今の笑いについていけていないことを告白していいのか、ということだと思います。
それを受けて松田龍平さんは

でも、バンドやっている友達に聞いたら、ラッスンゴレライのリズムは、元々音楽やってたんじゃないかみたいな(ことを言う)。要は一番気持ちいいリズム感っていうか。
まあ、シンプルにリズム感を楽しむみたいな(ネタですよ)。松尾さんみたいな屈折している人はあんま好きじゃないのかもしれない。

そう、このネタは「面白い」ではなく、「楽しい」「気持ちいい」のです。
ネタの音楽的分析はこちらをどうぞ。↓shiba710.hateblo.jp
譜面起こしまで!よくぞここまで音楽的に分析したもんだ。本人たちがどれだけ意識してこのリズム・譜割りにしたのかは分かりませんが、結果的に「気持ちいいリズム」になっています。
上記の引用ブログにもありましたが、ダウンタウン松本さんも「あれは曲」と言っています。そう、ラッスンゴレライは「ヒット曲」なんです。


そもそも、音楽のお笑いって、今までもたくさんありましたよね。クレイジーキャッツやドリフはもちろん、牧伸二嘉門達夫もいたし、最近ではテツandトモやAMEMIYAやどぶろっくも「歌ネタ」の人ですよね。
でも8.6秒バズーカーは「リズムネタ」です。(クマムシは漫才のネタの中に歌を入れる形なので「歌ネタ」の範疇ですね)
では、なぜリズムネタの彼らが「曲」なのか。


HIPHOPの登場以降、音楽の3要素「リズム・メロディ・ハーモニー」の中でリズムの比重は大きくなり、メロディの比重は小さくなっています。今の若い人たちはメロディが少なく、譜割りの細かい、リズムが強調された音楽に慣れ親しんだ世代です。
なので、このラッスンゴレライは歌ネタではありませんが、快感のある曲としてウケているのではないでしょうか。


そして、このネタを「面白くない」と言っている人は、正しいです。特に面白いわけではありません。でも、「楽しい」し「気持ちいい」。
今の時代は「やってみた」「歌ってみた」が一般化しているので、一般人が参加するところまで含めてネタでありエンタメなのです。「アナ雪」がヒットしたのも「いい曲だから」「歌いたいから」「歌って楽しい・気持ちいいから」です。


今の時代、面白いことなんてたくさんあります。テレビ以外にもネットの中には面白動画がたくさんあります。
もちろんお笑い芸人の素晴らしい「芸」は面白いですが、これは芸なので、簡単に「やってみた」ができません。参加できないのです。
それよりも、「楽しい」ことをみんなで「やってみた」でシェアする方が今の時代のヒットなのです。
面白いよりも楽しいが優先される時代。ひとりで楽しむよりもみんなで参加したりシェアしたりすることが楽しい時代。


なので、松尾スズキさんはこのネタの面白さを分からなくてもいいと思うのですが、今がこういう時代になっているのであれば、今後松尾さんが「笑い」や「エンタメ」を作る際にもそういう意識を持って作らないと、若者からしたら時代遅れに感じてしまうかもしれません。


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