いい人だけど苦手な人
私は映画は結構見ますが、ラブストーリーは一切見ません。テレビドラマでもラブストーリーは一切見ません。理由は、私の心に愛がないから。「好きだ」「愛している」のセリフが恥ずかしくてむずかゆくて見ていられないのです。
しかしさすがに私もいい大人なのでそろそろこういうジャンルも見ようと思い、知り合いにオススメしてもらい、見ました。
お話がとんとん進んで会話が多いので、舞台向きの作品だなあと思って見ていましたが、独り舞台が元になっているのか!よく気づいた、さすが私。
悪い人が誰も出てこないので、ずっと微笑ましく見ていられる。いい作品でした。
見る前は「さえない女の子が恋をきっかけにきれいになっていく物語」だと思っていましたが、そこはメインではないのですね。主演のニア・ヴァルダロスの「化粧を頑張るけどそこまで劇的に変身するわけではない」というリアルさもよかった。マンガだったらメガネを外して三つ編みをほどけば目は大きくなりそばかすも消えるのに。
原題は『マイ・ビッグ・ファット・グリーク・ウェディング』で、「大げさなギリシャ式結婚」という意味です。邦題は語呂を考えて「ギリシャ式」の部分を外したのかな。それだけで全然意味変わっちゃうけど。
そう、ギリシャ式の結婚のため巻き起こる騒動がこの映画のメインなのです。
ギリシャ人が一番だと思い込んでいる父親と、結婚は親戚一同との結婚という同族意識、両家の意識の違いなどなど。
上に書いたように悪い人は出てこないので楽しく見ていられるのですが、もし自分だったらとても耐えられないな、と思いました。
勝手に自分ルールを押し付ける相手側の家。なのに「なぜあんなよそ者にうちの娘を…。ワシが何をしたというのだ」と勝手に被害者ぶる父親。でも、この父親も「娘を、家族を愛すること」を一番に考えているのでそういう発言・行動になるし、結局「娘の結婚が嬉しい」なので嫌な人にはなりません。昔気質のお父さん、という感じで微笑ましいです。お母さんは肝っ玉母さんだし。
地域が違えば慣習が違うのも当然で、それが国際結婚ともなればその違いはとても大きいものでしょう。だからこそ歩み寄ったりいいとこどりしたりするべきだと思うのですが、この作品ではギリシャ式一本やり。相手が全て受け入れてくれてよかったね。
そう、この彼氏がいい人過ぎるのです。見た目は小泉純一郎かリチャード・ギアか、という感じの目の細いタレ目の優男。彼が相手方の要望を何でも受け入れます。
家族の顔合わせ会に親戚一同を呼ばれても、ウソのギリシャ語を教えられて笑われても、自分の両親が酒を大量に飲まされてべろんべろんになっても、何でも受け入れて笑って許すのです。極め付きはギリシャ正教の洗礼まで受けています。宗教ですよ、そこまでする?
そして、そこまでするほど惚れた理由やエピソードが描かれないのです。出会いもナンパだし。後半で友人に「お前、相手方のいいなりだな」と言われたときに「だって○○だから」ときちんと答えてくれればいいのに、そこも笑って済ませる。脚本が女性なので少女マンガっぽくなっちゃうのかな。
自分に置き換えて考えてみると、相手方のやり方を受け入れるのは、私もそんなに抵抗はありません。自分が自身の地域に愛着を持っていないから。しかし、たくさんの親戚が勝手に、自由に、強引にこちらのテリトリーに入ってくるのがとても苦手なのです。
これは、田舎やヤンキーなどのやり口です。田舎は排外的で「こっちはこうだから」と自分のやり方を押し付けるくせに周りに合わせたり別の地方のやり方を受け入れたりする柔軟性は持っていない。ヤンキーも勝手に「俺のツレ」を関係ない自分にも押し付けてきます。自分の関係性を他人にも強制するのです。
これらは私の偏見に基づくイメージですが、そういう感じがとても苦手なのです。これは「いい・悪い」ではなく、「苦手」ということ。こういう「近い関係性」が楽しい人もいるでしょうが、私はとても苦手です。
なので、映画を見ている最中も物語としては楽しいのですが、この親戚が自分だったらとても困るなーと思いながら見ていました。映画『セッション』の感想にも書きましたが、「面白い」と「好き」は別物。
主人公の女性がきれいになったのも恋のためではなく自立のためで、恋をしたからどんどんきれいになっていくわけではない。でも、大学で勇気を出して見ず知らずの人に「ここいいですか」と声をかけて相席に座るシーンはよかった。このシーンで彼女が勇気を持てたことや自立してきたことが伝わります。だからこそその後にステキな彼氏が声かけてくれるわけです。
でも、元が独り舞台とはいえあまりに物語がスイスイ進みすぎ。恋に落ちてプロポーズして結婚式と披露宴。特にトラブルやアクシデントがない。ポルトカロス家のギリシャ式結婚式のムチャ振りがトラブルですが、これは旦那側が全て受け入れるので問題なし。両家の結婚に対する考え方などの違いが問題になるかと思いましたが、旦那側はご両親もいいなり。かわいそう(に見えたけどラストでノリノリだったので問題なし)。
「本当にこの結婚でいいのか?」とマリッジブルーになる瞬間は一瞬で解決し、事故なども起きない。本当にスムーズにお話が進むのです。なので、アクション・SF・サスペンス映画畑の私のような人間はちょっと物足りなく思いました。映画としてのカタルシスが薄い。
それでも、何度も書きますが悪人は誰もいないしこの二人の結婚を祝う人ばかりだし、ハッピーなお話なのです。これのどこに文句をつける必要があるんだ。ケチをつける人は自分の心の汚れを気にしろ。
マイ・ビッグ・ファット・ウェディング(字幕版) (プレビュー)
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2003/12/24
- メディア: DVD
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (22件) を見る
- 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
- 発売日: 2015/12/16
- メディア: DVD
- この商品を含むブログを見る
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2004/12/03
- メディア: DVD
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (17件) を見る