映画『ディストラクション・ベイビーズ』 感想
映画『ディストラクション・ベイビーズ』を見ました。公式サイト↓
distraction-babies.com
楽しいかと訊かれれば楽しくないし、爽快感もカタルシスもない、不快な作品です。でも、「不快=駄作」ではないのです。胸くそ悪い傑作なのです。まあ、個人的には傑作と言えるほど「良い!」と思ったわけではないですが、いろいろ感情を搔き毟られる衝撃作でした。
主人公泰良(たいら)役の柳楽優弥君がね、もうヤベー奴なの。セリフなんてほとんどないの。劇中合計で3言くらいしかしゃべらないの。あとはひたすら殴るか殴られるかだけなの。もうヤベー奴なの。
背中からのショットをずーっとワンカットで撮っていくオープニングで、振り返ったときに初めて見る泰良の顔、あーもうこいつヤベー奴だ。しかもその後喧嘩を始める理由もきっかけも分からない。多分彼の中では「ちょうどいい強さ」など何かしらのジャッジがあって「君に決めた!」なのでしょうが、ケンカを吹っ掛けられる側からすればたまったもんじゃない。何なのお前!
この「話の通じない感じ」、超怖い。『ノーカントリー』のシガーみたいな感じ。話が通じないとか常識や当たり前のルールが通じないって、怖い。
この作品はケンカのシーンがちょっと遠目からのワンカットで撮影されている撮り方が多いです。野次馬目線というかYouTubeに投稿されている映像を見ている感じというか、リアルで生々しい撮り方。ケンカの仕方もスタイリッシュな殺陣ではなく、地味な(だからこそ痛そうな)殴り合い。
正直、泰良の回復力やダメージの少なさは少年マンガチックではあるのですが、そもそも彼のキャラクターがリアルではないのであまり気になりませんでした。それはこの撮り方のおかげもあるんだろうな。
いやー、柳楽君素晴らしい。セリフほぼゼロで佇まいと表情のみで泰良のヤバさを表現しています。
菅田将暉君も素晴らしい。やっぱり彼は上手いなー。どんな役もやれる。今露出過多な感じがして世間から飽きられるのが怖いな。
小松菜奈は、いつもの超絶美少女ではなく性悪万引きキャバ嬢。その悪い目つきもいいぞ!そして理不尽な拉致、狂気に飲み込まれての「やっちまう行動」、ラストの反撃と被害者面。大変な役でしたが、上手かった。
ちなみに菅田将暉君は小松奈菜のおっぱいを揉んで下腹部に手を入れて小松奈菜にケツを蹴られて死にます。いい人生だったな。
村上虹郎君は、イマイチ。もともと感情を抑えた役どころなのであまり演技力は見えづらい役ですが、それでもイマイチでした。私は普段ドラマは全く見ないのですが、以前ふと点けたテレビで彼が高校生役をやっていて、あまりの大根っぷりにわざわざ誰なのか調べちゃったもん。
ラストの同級生の足にしがみつくのはオープニングで兄(泰良)がやっていたのと同じ。つまり彼も兄と同じ道に進んでしまう可能性があったのですが、祭りの喧騒(=ハレの日の狂気)にその邪気を吸ってもらってこちら側に残れたと解釈しています。そして兄はその同じ日に邪気を倍増させてしまう。
あと、チョイ役で池松壮亮。弱そうなチンピラで途中長渕キック(キックを空振りしてこける)を披露しています。
ラストは、彼は悪の完全体になってしまったのでしょうか。どういう解釈をするべきなのかしら。
私はこの作品は新井英樹の『ザ・ワールド・イズ・マイン』というマンガを思いながら見ていました。完全にトシとモンちゃんだろ。そして那奈(小松菜奈)はマリア。監督はどれくらい意識していたのかな。
音楽は向井秀徳。劇伴の不協和音響くディストーションギターがこの作品のテイストにとてもはまっていました。よい。
好き嫌いの分かれる作品です。賛否両論も分かります。ラストで何も解決していないぞ、も分かります。しかし、冒頭にも書きましたが「不快=駄作」ではないので、その感情の整理はしてもらいたい。不快になるほど感情を揺さぶられる映画です。
もちろん泰良(柳楽優弥)にも裕也(菅田将暉)にも共感はできないし感情移入もできない。それでもこの作品から目が離せないという意味でこの作品は成功しています。
これも冒頭に書きましたが、「傑作!」と思えるほどではありませんでしたが、いい作品でした。でも他人に勧めづらいな。
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