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KICK THE CAN CREW『KICK!』 感想

まさに「経て からの ここ」


KICK THE CAN CREWの14年ぶりのアルバム『KICK!』が出ました。名盤です。
キックはKREVAがソロで始めたときに「他の二人とは熱量の差を感じた」という主旨の発言をしていて(うろ覚え)、その後の独り勝ちっぷりを見るにつけ再結成はないんだろうなと思っていました。
それが、数年前から音楽フェスなどでキックとしてパフォーマンスをすることがあり、お、復活もあり得るのかなと思いつつ、とはいえ新曲はやらないのでライブでパフォーマンスするだけなのかなーと思っていたら、新曲・アルバム・復活祭・全国ツアーが一気に発表される用意周到さ!


名盤です。45分を切る10曲ぽっきりなのもいい。ちょっと物足りないくらいが何度もリピートして結局たくさん聴いちゃう。これを私は「ヤクルト効果」と名付けております。
どこを切り取ってもキックであるわけですが、「あの頃の」ではなく「今の」キックなのです。まさに『千%』のサビ「経て からの ここ」です。
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それは、3人ともずっと表舞台に居続けたから、現役感を保ちつつスキルの差もなく、こうして「キャラ立ち3本マイク」として今復活できたのです。


最近のKREVAはシンセを多用した音作りをしていますが、本作はそういったトラックもあり、サンプリングで作ったトラックもあり、ここもやはり「経て からの ここ」ですよ。
リリックもキックらしいやんちゃさやくだらなさ(彼ら曰く「川原の土手感」)はありつつ、ちゃんと大人になったリリックになっているのも「経て(略)」ですな。


1曲目の『全員集合』、ドラムとシンセの次に聞こえてくるエレピのフレーズがポップで「え、これキック?」と最初思いましたが、いや、これは『イツナロウバ』でもあったあの黄金の裏メロだ!
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(サビ裏のエレピのメロディです。この頃のKREVAは人殺しの顔をしているな)
キック(というかKREVA)のトラックは、「ピアノ弾けない人が指1本で弾きました」みたいなフレーズがよく出てくるのですが、それって「超センスいい」「才能あるぅ」ってことですよね。その通りです。


2曲目『千%』は、復活後のお披露目曲として完璧。切なさとアガりの両方を持つトラックと、過去のリリックを引用した歌詞。ちなみにこの引用はMCUのパートだけですが、1番に配置されているので過去と現在のリンクが印象的になりますね。この引用についてはKREVAは最初反対したそうですが、何でだよ、入れて大成功じゃん。


『今もSing-along』はサビでKREVAが歌う。これはソロがあったからこその曲ですな。
『SummerSpot』はこんな細かい掛け合い、大変すぎる!カラオケで歌えない!これライブで見たらアガるだろうなー。トラックのスカスカっぷりは『GOOD MISIC』時代を思い出す。
『なんでもないDays』はトラックは夜っぽい感じがするけどリリックはそういう内容ではないですね。トラックが良すぎてリリックが入ってこない。
『完全チェンジTHEワールド』のサビは『カンケリ』を思い出すのですが、関係ないみたいですね。この曲のKREVAのフロウは最近の彼のフロウですね。韻よりもフロウで聴かせるラップの仕方。
『また戻っておいで』。これもいいトラック!そしてKREVAの歌もいい。切ない曲調なのでひとりずつのパートが長くて掛け合いがないのは正解ですね。
『また波を見てる』。アルバム後半らしい曲調。えー、あまり感想がない。
『I Hope You Miss Me a Little』。これ、何となくキックにしては新機軸な感じがします。サビの感じ?弱さを見せられるようになったリリックも、大人になった証ですな。
『タコアゲ』。うわ、イントロからキックの曲だ!と分かるトラック。KREVAではなく、キックの曲。アルバムラストを締めくくる『タカオニ/カンケリ』に続く「川原の土手感」の曲。ポップだけどしっとりと、アルバムを締めます。


ざっくり全曲感想おしまい。
改めて、LITTLEは韻の人、MCUはリズムの人、KREVAはカリスマの人、という「キャラ立ち3本マイク」を再確認するアルバムでした。
LITTLEはちょっとラップのキレが落ちたような気がしますが、相変わらず常套句に逃げない日本語での韻踏みまくりリリックマシーン。
MCUはソロの頃「ラップ上手くなったけどこのフロウ好きじゃないなー」と思っていたのが、キックに戻ってきたらラップの上手さだけ残してキックに合うフロウに戻っていたのでとてもよい。どの曲も、いちばんリズムに引っかかるラップをしています。
KREVAは、キックで「責任3分の1」になったのがとてもいい方向に作用している感じがします。いい意味でいい加減なリリックが復活していていい。『新人KREVA』~『愛・自分博』の頃みたい。フロウも自分のパートが短いので変な歌いまわしのフロウにならなくていい。


今後キックは復活祭を経て全国ツアーも行いますが、その先はどうするんだろ。KREVAはソロも求めれらているのでキック専任というわけにはいかない。桑田佳祐奥田民生のように並行して活動していくのかな。


私は復活祭にもツアーにも行きませんが、氣志團万博で見てきます。さて、アルバム後のフェスでは新旧の曲をどんな配分でやるのかしら。楽しみです!


KICK! (初回限定盤)

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KICK! (通常盤)

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