やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『勝手にふるえてろ』 感想

これは私だ(世の8割の女性)


映画『勝手にふるえてろ』を見ました。公式サイト↓
furuetero-movie.com
恋愛映画なのでそんなに興味なかったのですが、Twitterでみんなが騒ぐので、見に行きました。Twitterでの皆さんの熱狂がいちばんの広告ですよ。


いる。こういう女、いる。オタクだったりこじらせだったり、ブサイクではないけど非モテだったり。いる。
もうね、松岡茉優無双。演技力が素晴らしいのはもちろんですが、その中でも「自分の好きな話をしゃべり始めると相手が聞いていようがいまいがお構いなくしゃべり続ける」というオタクそのもののしゃべりのトーンが絶品でした。さすがハロプロオタ。
実際の知り合いのオタク女子を思い出し、これ見て同族嫌悪で悶え苦しんで焼け死ぬがよい!と思いながら見ていました。


でも、そんなにオタクでもこじらせでもない感じがするのです。見た目小奇麗だし、オタクといってもその対象は絶滅生物だし。単に恋愛下手な女の子(つまりほとんどの女子だ!)を若干デフォルメしている程度なのでは。腐女子はこれを見て焼け死にますが、それ以外の女子は「これは私だ」と思いながら見るのでは。


小奇麗といっても、やはりモテ女ではないので靴にまで気が回らない。普段はくたくたのぺたんこ靴を履いているあたりが「甘い!」わけですが、いざ決戦のときにはヒールを履くわけです。うむ、女の戦闘服は靴から始まっている。とはいえ、実際私のような非モテからするとそこまで目がいかないので関係なかったりする。だから非モテなわけですが。


松岡茉優演じる主人公ヨシカは相手の名前を覚えない。これは相手に興味がないからです。テキトーなあだ名を付けて相手のことをきちんと見ようとしない、知ろうとしない。
中学時代からの片思いの相手イチだってきちんと見ようとせず「視野見(視野の端で見るワザ)」してきたのだって、相手と直接対峙するのを恐れていたからです。
なのに、そのイチに名前を憶えられていないことに大ショックを受けるのです。それ、今まであなたがしてきたことだよ!


職場の友人にも「ヨシカは休みの日何しているか分からない」と言われるということは、休みの日に一緒に遊んだりしないわけです。ましてや家に入れたりしたこともありません。
それがラスト、玄関前で話していたヨシカとニは、お互いの本音をぶつけ合ううちに玄関内に入っていきます。ここにきてようやくヨシカのバリアやこだわりやこじらせが解ける・溶けるのです。
そしてついにニのことを「霧島くん」と呼び、自分からキス!
これらのそれぞれの対比が上手い。


正直、個人的にはキスのその先を見たかったです。実際付き合ってみてイチのことは昇華されたのか、初エッチのときの期待と戸惑い、電話やデートなどで自分の時間を取られることを嬉しく感じられるのか。ひとりが長かった人あるあるを見たかった。


でも、いい作品でした。松岡茉優が優勝なのは間違いないですが、渡辺大知君もよかった(イケメンでないけどいい人)。その他のキャストもよかったです。
でもやっぱり松岡茉優ですよね。この作品、彼女じゃなかったら成立していたかな。この説得力を出せたかな。原作小説があるとは思えない、まるで彼女に当て書きしたかのようなジャストキャスティング。素晴らしい。
あと、これ舞台でもできそうなので、もし舞台化されたら見てみたい。でも、松岡茉優以外でヨシカをやるのはプレッシャーだろうなー。


勝手にふるえてろ (文春文庫)

勝手にふるえてろ (文春文庫)