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サザンオールスターズ『海のOh, Yeah!!』 感想(その1)

サザンは偉い


サザンオールスターズの40周年記念ベストアルバム『海のOh, Yeah!!』が出ました。20周年のときに『海のYeah!!』が出ていて、ここでは便宜上(入力が面倒なだけですが)「家盤」「親盤」と表記します。
家盤の20年と親盤の20年は歴史の厚さが違います。家盤はオリジナルアルバム12枚の中からのベスト、親盤は『さくら』『キラーストリート』『葡萄』の3枚の中からのベストです(最近は曲数も多いし『キラーストリート』は2枚組なので実質5枚分の物量はありますが)。間には桑田さんのソロもありますしね。
でもやっぱりそこはサザン、名曲ぞろいです。では、簡単にそれぞれの曲の感想を書いていきます。


DISC1 “Daddy” side
1.TSUNAMI
言わずと知れた、サザン最大のシングルヒット曲。個人的には「サザンの手癖の極み、ベタの究極」だと思っていて、そこまで大好き!というほどではありません。いや、もちろん「めちゃ名曲!」という大前提の上での話。
この曲は東日本大震災以降ライブでは演奏されなくなりましたが、そもそも「災害としての津波」の曲ではないですからね。「恋愛における感情の起伏」のことですから。まあ、そんなことは誰でも分かっているけど、「ツナミ」というワードが自主規制の対象だったのでしょう。
で、今回このアルバムに収録されたということは、そろそろライブでも解禁なのではないでしょうか。来年から始まるツアーで聴けると期待しております。


2.LOVE AFFAIR 〜秘密のデート
不倫ソングですが、曲としてめちゃ名曲!歌詞も不倫を否定も肯定もしていないのがいい。渦中にいるダメな男の歌。
昨今世間では「不倫=大罪!」になっていますが、『昼顔』のヒットでも分かるように、実はみんな不倫が大好きなのです。大好きというか、興味津々なのです。羨ましいのです。そうなんだろ?
繰り返しますが、この曲は不倫と関係なく曲としてとても名曲なのでヒットしたのです!


3.BLUE HEAVEN
そうか、この曲、シングルだったのか。あまり印象がないな。切ないメロディの名曲ですが、シングルにするほどの強さはないというか。アルバム曲だったらとても強い。『慕情』『せつない胸に風が吹いてた』『逢いたくなったときに君はここにいない』みたいな立ち位置。
この曲も「手癖ソング」だと思っています。コード進行がベタなんだよな。


4.イエローマン 〜星の王子様〜
この頃のサザンはどうかしていた。『01MESSENGER 〜電子狂の詩〜』(攻める)→『BLUE HEAVEN』(置きにいく)→『LOVE AFFAIR 〜秘密のデート』(ポップス成功)→『PARADISE』(攻める)→と来て本作。また攻めた!
個人的に、90年代末はサザンから心が離れていて、このあたりの一連のシングルはあまりピンときていません。レコーディング現場にデジタルの波が押し寄せてきている時代で、桑田さんもそれに乗っかって新しいことをやろうとしていたのでしょうが、あまりうまくはまらなかった印象があります。
確かにライブでは盛り上がりますが、音源として聴いたときに「名曲!」「シングル!」「ポップス!」という印象はありません。今回久々に聴いてもやはりはまらない。
実際売れ行きもイマイチで、開き直って「これぞサザン!」として作ったのが次のシングル『TSUNAMI』です。ここで腹をくくった桑田佳祐は、以降「国民的バンド」の看板を背負って立つようになります(私の想像ですが)。


5.SEA SIDE WOMAN BLUES
ハワイアンな曲調に日本の古いメロディ。加山雄三とか服部良一とかのイメージ。いい曲だと思いますが、歌がなぜこんなに後ろノリなのか。多少のタメはあってもいいけど、もう少しリズムにジャストな歌い方でも聴いてみたい。


6.彩 〜Aja〜
春っぽいキラキラした印象と寂しさの両面のある曲。Aメロのコード進行がオシャレ。G→C→D→C→Gだけど、ずっとonGなので、ベタに弾くよりオシャレに聞こえる。
2番に入るとAメロの裏にラッパも入ってより気持ちがいい。歌メロ以外のカウンターメロディがいい。
歌詞は以前の桑田佳祐のような意味を重視しない表現が多いけど、重くならないのでこれでいいのだ。


7.HOTEL PACIFIC
おお、この曲はアルバム初収録なのか。これはライブで爆発する曲ですねー。Aメロの歌詞にあるとおりギラギラした感じがいい。振りがあるのもいい。
2番ではAメロ終わりでギターソロにいくという構成もいい。ここでのギターソロもいい。
サザンのロックと歌謡曲のいいとこ取りがうまくはまった名曲です。


8.唐人物語 (ラシャメンのうた)
原坊曲です。原坊の曲は評価が難しい。というか、そもそも評価の対象外にある。チャゲアスチャゲ曲というか真心ブラザーズの桜井曲というか。いや、それともまた違うな。アルバムの中の清涼剤というか箸休めというか。
もちろんどの曲もいいしこの曲もいいのですが、特に語ることはないなー。ごめんなさい。


9.SAUDADE〜真冬の蜃気楼〜
ボサノバっぽくもあり、オリエンタルなイメージもある多国籍というか無国籍な曲。暗いけど結果ポップスになるという着地、桑田さんは何でもできるなあ。
こういう「アゲアゲ曲」でも「泣きのバラード」でもないミディアムな曲で、アルバム内の曲としていい曲を書けるのは本当にすごい。


10.涙の海で抱かれたい~SEA OF LOVE~
君こそスターだ』ではなく、こちらが当選。どちらも「ザ・サザン!夏!」なイメージの曲ですが、桑田さんの中では明確な優劣があるんだろうなー。桑田ソロの『波乗りジョニー』も含めて、私はもうどれがどれだか分からないしどれでもみんないい曲だよ!と投げやりになってしまう。
サビの4つ打ちでメロディが徐々に上がっていくのは、ライブでやられたらそりゃ上がる。水撒いてほしい!


11.私の世紀末カルテ
こういうフォークな曲は桑田ソロ用かと思いましたが、よく考えれば『ニッポンのヒール』とか『汚れたキッチン』とか、政治や社会批評の曲は昔からありましたな。
私はフォーク出身なので、こういう曲大好き。歌詞もさすが桑田佳祐。「闘うことや傷つくことは拒むけど 野暮な慰めにゃホロホロリ」「いくつになっても未熟な自分を愛しく思ってる そんな大人が幼い我が子に道を説いている」なんて、まさに今の時代にジャストじゃないですか!でも、10年後も「まさに今の時代のことを歌っている!」と思うはず。つまりは普遍な名曲ってことです。


12.OH!! SUMMER QUEEN〜夏の女王様〜
これが入るかー。こんなのカップリング止まりだろー。歌詞もメロディも擦り尽くしたサザン節じゃないか。歌詞の単調で安直なエロとダジャレもあまり好きではない。
いや、ライブで歌われたら盛り上がりますよ。ビキニのダンサーたちが出てきてサビで炎が上がるんでしょ。分かってます。盛り上がります。でも、ベスト盤収録レベルの名曲かと言われたらうーん。


13.LONELY WOMAN
冬の曲なので、ずっとせつなく寂しい言葉が並ぶ。Aメロはベタなコード進行ですが、Bメロからセブンス・メジャーセブンのコードでせつなさを表現。上手いなー。
ラストのサビ「メリークリスマス」の部分、メロディとしてもアクセントになっているし、この歌詞で冬の曲というイメージを確定させる。上手いなー。


14.01MESSENGER 〜電子狂の詩〜
上に書いたように、この頃のサザンはあまり好きではなく、この曲・パラダイス・イエローマンは本当に困ってしまっていました。あなたが着る服はそれじゃない。
しかし、今回久しぶりに聴いたら、あれ、カッコいいな。『イエローマン』はやっぱりイマイチですが、こっちはいいぞ。シングルバージョンだから?自分がフラットにこの頃の曲も聴けるようになったから?


15.限りなき永遠の愛
バラードは、簡単なようで難しい。テンポはゆったりしか選べないしリズムも8ビートが基本。泣きのメロディがメインなので、トリッキーなコード進行も難しい。つまり、既に出尽くしたカードで新しい曲を作らなければならない無理ゲー。
なのに、この曲は新しい。『キラーストリート』のDISC1のラストという立ち位置なので、バラードという安定感とまだ冒険してもいい自由度が上手く作用しています。
コードを見たら、結構工夫が凝らされていますね。ベタでも手癖でもない。きちんと構築されたメロディとコード。サビの横並びのメロディが高揚感とせつなさを両立させています。ブリッジの部分で印象を変えるのも素晴らしい。
名曲です。


16.素敵な夢を叶えましょう
バラード2連発ですが、それでもどちらにも似ず、どちらも名曲を作る桑田さんはほんとすごい。
こっちの方が王道のバラードです。コード進行も王道。しかしところどころ工夫されたコードも入っていて、凡百のベタにはならないところが桑田佳祐たる所以ですよ。サビ前の3連になる譜割りもいいですねー。
アルバム『さくら』のラスト、そしてこのアルバムのラストを飾るにふさわしい荘厳なアレンジも素晴らしい。


さて、ここまでで4,000字近く書いてしまったので、残りは次回に持ち越しします。全曲感想は長くなる。では、つづく。


海のYeah!!

海のYeah!!