やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『響-HIBIKI-』 感想

脳を焼かれているので


映画『響-HIBIKI-』を見てきました。公式サイト↓
www.hibiki-the-movie.jp
原作は少し読んだことがある程度。普段アイドル映画は見に行かないし原作の大ファンというわけでもないのでいつもだったらスルーするところですが、何だか評判いいのと、何といっても平手友梨奈さんなので見に行ってきました。


私はアイドルにはまったことないしハロプロにもAKBにも坂道にもはまっていないのですが、平手さんは別格だ。とはいえCDを買うわけでもないしライブに行くわけでもないし雑誌を買うわけでもなく、『サイレントマジョリティー』以外の曲すら知らないのですが、平手さんは別格だ。
彼女はアイドルではない。カリスマだ。
上記の通り私は彼女のことを何も知らないのですが、それでも近くを通ったら深いお辞儀でお見送りしそう。何なら土下座だってするかもしれない。だってカリスマだから。


このように私は彼女に脳を焼かれているので正当な評価は下せませんが、面白かったです。脳を焼かれているのでホルモン分泌がおかしく最初から最後までほぼずーっと目に涙を浮かべながら見ていたので正当な評価は下せませんが、面白かったです。


この作品は平手さんの当て書きのようだとよく言われていますし私もその通りだと思っていて、演技はとてもよかったのですが、これはこの作品のみの特別なマジックがかかっているので、女優としての才能はまだ判断できません。次回作以降で判断しましょう。とはいえ彼女が満面の笑顔で「好き!」なんて言う姿は想像できませんが、もし出来たらこれまでのフリが効きすぎているので私は死んでしまうかもしれません。


あと、「天才」という表現について。
主人公響の書いた作品は大傑作で彼女は天才だと言われます。しかし、作中でその作品が大傑作である根拠は一切出ません。その文章の一部だけでも紹介してくれればその天才性や大傑作であるという作中の描写に説得力が増すのに、それが一切ないため説得力ねーよ、という批判があります。
これは確かにその通りなのですが、この作品は「響の書いた作品は傑作なのか」とか「響は本当に天才なのか」ではなく、「天才=凡人と違う人」である響が出会う人や社会に対して与える影響や巻き起こすムーブメントの話なので、その批判は当たらないと思います。だって音楽マンガだって音楽聞こえないし。


小栗旬演じるなかなか芽の出ない作家(山本春平)とのやりとりが映画としてのラストになるのですが、ここで終わっていいのか?ここまでの描き方でこの物語・この世界では何か結論出たか?何か決着したか?そこがちょっと不満でした。
普通の物語では主人公が挫折したり努力したりしてその結果未来が変わっていく、というのが映画です。それが、この作品では響はもう天才として完成されているので成長もしないし変化もしない。直接出会った人は変わっていくけど、物語の世界は変わらない。
小栗旬の演技はとてもよかったし天才響と凡人山本という対比もいいので、もう少し二人の関係がいろいろあればなーと思いました。ラストで山本の名前を訊いて、あなたの作品面白かったよ、と伝えるだけでも山本にはものすごく響いたでしょうし、まだ死ねない、まだ頑張れるという原動力になったでしょう。それがないから響からすれば名も知れない作家の誰かでしかない。そこがもったいないなー。
ついでに、響は電車に轢かれそうになっても微動だにせず怖がるそぶりも見せません。さすがにそれはないでしょ。感情壊れている人じゃん。轢かれる寸前で一歩前に出るとか実は心臓バクバクでしたとか、何かしらないともう人間でありません。


あと、芥川賞直木賞の授賞式は結局暴行で終わってしまいました。あそこでマイクを手に取りカメラの前で素晴らしいセリフを叫んでくれればクライマックスとして盛り上がるのになーと思いました。原作ではそういう描写もあるようですね。


小栗旬だけでなく、出ている人は皆さん素晴らしかったです。
アヤカ・ウィルソン(リカ)
彼女、『パコと魔法の絵本』のパコだったのか!美人に育ってよかった。響に対してあこがれと嫉妬と友達といろいろな感情を持っている役柄ですが、よかったよ!
高嶋政伸(編集長)
高嶋政伸はそんなにたくさん出演作を見ているわけではありませんが、どれもめちゃくちゃ上手い。どれも全然違う見た目・しゃべり方で完全にそのキャラになっている。もっと評価されてもいいのにな。
柳楽優弥
生意気な新人賞同期受賞者。上手い。響の作品を読んだ後彼女の才能を認める描写は第三者に対して描かれていましたが、本人に対して言ってもいいのに。「アンタはすげえ。でも俺も負けねえ」みたいな一方的なライバル宣言。時間の制限があるから何でも入れるのは難しいけど。
あと、彼が授賞式で殴られるのはもっと大義名分があった方がいい。「どうせ話題づくりだろ」「殺すぞ」だけでは弱い。それだったら響はその場で手を出している。止められても会場に行くまでの間に手を出している。だから、スピーチで「こんな客寄せパンダと一緒にするな」くらいの発言があれば、あそこで手を出す理由になる。
ここは脚本の話で柳楽さんのせいではありません。柳楽さんはとてもよかったです。
北村有起哉
芥川賞受賞歴のある「かつての天才」。意地悪い感じが上手いなー。
野間口徹
週刊誌記者。野間口さんといえばいつも「いいひと」なのに、今回はゴシップ記者ですよ。役者は何でもできるのね。
小松和重
山本の担当編集者。編集者顔!
北川景子
私はドラマをまったく見ないので、女優としての北川景子をよく知らない。よかったです。ワクワクしながら響の原稿を読む表情とか真面目で響を何とかしようと思う保護者という側面も。
でも、入社3年目の編集者だったらもう少しダメでもいいけどなー。最初は惚れ込むばかり、途中は戸惑うばかり、でもラストに腹をくくって大化けする、とか。
リカと並んで響と接する時間がいちばん長いのだから、編集者というかマネージャーというか保護者として、成長が見たかった。
あと、関係ない話を。北川景子さんはめちゃ美人です。DAIGO許すまじ。でも、根がいい人なので、最近それが顔に出てきている。バラエティ番組にもどんどん出るし。それが今後の女優としての幅を広げていくことにつながると思いますが、美人度が下がるのは残念。その点深キョンは俗世間と交わらないので美人度をキープしている。どっちがいいという話ではありませんが、女優としてのオーラは俗世間との距離も重要かも。
吉田栄作
村上春樹的なポジションの役ですが、説得力ねーなー。こんなイケメンおじさんでなく、おじさんでいいのに。あと、吉田栄作にインテリの匂いしないし。
板垣瑞生
響の幼馴染役。お前の役は誰でもいい。
せっかくの幼馴染なんだから、子供時代の響の話とかしてくれればいいのに。これも脚本の責任ですが。


エンドロールでは平手さんソロでの主題歌が流れます。字余りフォーク的な曲で、そのチョイスは正しいと思いますが、何も刺さらなかった。初めて聴いたので歌詞が分からないというのもありますが、平手さんの歌に何の魅力もない。声も歌唱力も大したことない。うーむ、カリスマなのに、歌だけではその魅力は発揮できないのか。山口百恵さんは歌だけでも上手かったのに。


監督について私が語れることはありません。カット割りや構図について良いも悪いも感じられませんでした。他の作品も見たことないので比較もできません。
音楽はよかったな。オープニングの劇伴からよかった。


以上です。エモくて面白かったですが、上記の通り私は脳を焼かれているので正常な判断ができません。皆さんの目で判断してください。


小説 響 HIBIKI (小学館文庫)

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