やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

レキシ『ムキシ』 感想

紅白決まりでしょ


レキシのNEWアルバム『ムキシ』を聴きました。
レキシといえば「日本史をテーマにした曲を書く」「いい曲なのに歌詞がオモシロ」「ライブでは他人の曲に脱線」というのが売りであり世間のイメージでした。
それが、もはや6枚目となるとそれは飛び道具にはならず、世間にも浸透してきているので今さらウケない。ではどうするか。「いい曲を書く」これです。


できていました。


正直、これまでのアルバムのような爆発力はありません。超絶キャッチーな曲もありません。でも、いい曲いいアルバムです。
今までは名曲の分かりやすいオマージュを入れ込んでくることが多かったレキシですが、今回のアルバムはそういうものは池ちゃんの血肉となって元ネタが全面に出ることが少なくなりました。
では、1曲ずつ感想を書きます。下記本文中の池ちゃんの発言はレキシオフィシャルサイトの解説ページより引用しています。
レキシ 6thアルバム 「ムキシ」発売!


1.なごん
清少納言の歌です。イントロのドラムと「Yes!清少納言!」というフレーズ、いいですねー。ライブのオープニングこれでやってほしい!。アルバム1曲目にふさわしい明るい曲です。
私はレキシには「Yes, 摂政」というラップの曲を作ってほしいなーと前々から思っていたのですが、違う角度からきた。でも、まだ諦めていないぞ。
サビの「枕草子を片手に」の部分は「まっくらの」と歌っているので、その次の「真っ暗な部屋から飛び出そう」と韻を踏んでいるのです。池ちゃん、偉い。
あと、「片手に」の部分はリズムを強調する働きを持っています。もしここが「愛して」だったら、譜割りは一緒だけどリズムの引っ掛かりが変わってくる(母音は響きが柔らかいから引っ掛からない)。こういう細かい部分も曲の良し悪しに関わってくるのですよ。
レキシの曲は、歌詞とメロディだけでなく、演奏もいい。各パートのフレーズも込みで名曲になっています。この曲だとホーンのフレーズが歌のメロディと同等に印象的。あと、エンディングのキメもいい。


2.GOEMON
三浦大知をフィーチャリング。レキシネームはビッグ門左衛門。大知だからビッグなのは分かるけど、大門左衛門って何?と思っていたら、池ちゃん本人解説によると元々は「大近松門左衛門」で、そこから「ビッグ近松門左衛門」になり、「ビッグ門左衛門」になったとのこと。だいち関係なくなっちゃった!
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三浦大知フィーチャリングなのに、大知君は出ず池ちゃんが踊るMV。「SHIKIBU」の「ただ京都の街中を追いかけっこ」よりもちゃんとしたドラマ仕立てになっています。
歌詞の内容は池ちゃん曰く「歌詞は語呂の良さを優先させているので、あまり深く問わないでください(笑)」だそうなので、問わない。キミのために月の明かりを盗みに行こうという歌詞ですが、まあどうでもいい。
この曲は「GOEMON」なので、サビでも「五右衛門」と言っているのですが、歌詞カードをよく見ると「Go Wayもっと」「Go ahead moon」という歌詞になっている部分もあり、さすが。でももはやこれは韻ではなくダジャレだ。ついでに「越えよう」という部分は韻を踏んでいますね。
この曲はダンサブルでとてもいいのですが、個人的には打ち込みのリズムで聴きたかったなー。レキシだからこれでいいんだけど。
あと、エンディングがフェードアウトなのでライブではどうするんだろうと思いましたが、そもそもレキシのライブは音源そのままでやる曲の方が少ないので無駄な心配でした。


3.GET A NOTE~下駄の音ver.~
この曲なんてタイトルからダジャレですな。アルバムの「下駄の音ver.」は、イントロに下駄の音が入っているというだけです。
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ゲゲゲの鬼太郎」のエンディングテーマというお題。日本史縛りのレキシはどうしたかというと、「下駄」と「お城」というワードで力づくのクリア。いいんです。かすっていればいいんです。
この曲と「SEGODON」が両A面でシングルになりましたが、正直そこまではまりませねした。でも、アルバムとして聴くといいな。


4.出島で待ってる
スイートソウルな1曲。出島というワードが入っていればいいんです。
イントロのエレピからいいよねー。レキシは面白曲もやるのにこういうしっとり曲も上手いから、憎いなー。
「曇り空は」「はかなくて」の16ビートを意識した譜割りがいい。アウトロのリフとクラリネットもいいよねー。


5.TAIROW~キミが目指してんのは~
手嶌葵さんをフィーチャリング。レキシネームはカモン葵。「カモン」と「家紋」がかかっていて、「葵のご紋」にもかかっている。池ちゃん上手いなー。
葵さんの声は「天から降り注ぐ」ようなイメージがあります。「GOEMON」は池ちゃんひとりでも歌えるけど、この曲はライブではどうするんだろ。池ちゃんが歌ってはこの荘厳感は出ない。
この曲もダジャレ満載ですが、もうわざわざ書き出さない。


6.KATOKU
1年以上前のシングルで、前回のツアーでも披露してくれました。ちゃんとアルバム収録で回収。
この曲は出だしの「世襲制」でもう優勝。リズムとメロディのハマり具合、曲の歌詞には合っているけど普通のポップスではありえない歌詞。
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このMVでも分かるように、80年代アメリカンロックのテイストをわざと使った作品です。このMV、4:3の画面比率とかあえての低解像度の画像とか、ほんと上手い。
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MVの元ネタはこちらです。ジャーニーの皆さんは「ダサくて笑えるMV作るぞ!」と思って作ったわけはないのに、レキシを見てこちらを見ると笑っちゃう。そして元ネタを知ってレキシに戻るとまた笑っちゃう。
この曲はサビがキラキラしていていいよねー。それはこのシンセの音色のせいもある。


7.SEGODON
イントロの明るく開けた感じがとてもよい。と思っていると、続くシンセはヴァン・ヘイレン「JUMP」みたいじゃないか。
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間奏がギターソロなのもこの影響?
この曲はサビで「せごどーん」を連呼するのですが、上がるのか下がるのか不安定でライブで叫びづらいな。オクターブだからどっちでもいいのかもしれんけど。



8.奈良に大きな大仏
こういう、マイナーキーの歌謡曲っぽい曲、好きなんです。この曲も歌メロ以外の楽器のメロディが大活躍していますね。ただ、「この曲いちばんの盛り上がり!」という明確なサビがないのが残念。
あと、間奏でパーカッションソロになる部分、パーカッションの楽器数が足りない。何だかスカスカしている。ライブだとパーカッションいないからドラムで代用できる範囲のソロにしたのかな?
もうひとつ。エンディングがメジャーセブンのポロリンという終わり方なのが納得いかない。なぜこういう着地にしたのか。せっかくホーンもある大所帯サウンドなんだから、豪勢にじゃーんで終わってほしかったです。
ああ、文句ばかりになっちゃった。好きなのに。


9.SAKOKU
オシャレキシこと上原ひろみさんと黒船ビッグバンド(from GENTLE FOREST JAZZ BAND)がせーのの一発録り。しかも「事前リハーサルもなし。テンポのガイドになるクリックもなし。ラストのアドリブの掛け合いまで含めてダビングもなし。すべて無修正」だそうです!すげー!
一発録りはまだ分かる。各楽器をダビングで重ねるのではなく、全員で一斉に演奏して録音する。分かる。
そしてクリックもないのか。この大所帯で全員のテンポ感のみで演奏するのか。これは大変だ。
そしてそして事前リハもなし。そんな「楽譜にらめっこしてよーいドン」でこれだけの演奏ができるの!すげー。
さすがにラスト付近では池ちゃんの声かすれてるけど、それも含めて一発録り&ダビング修正なしだもんなー。
オシャレキシはさすがのグラミー賞受賞者ジャズピアニスト。イントロからエンディングまで「お見事!」の一言です。あー、オシャレキシとの対バン、見に行けばよかったなー。
それにしても、これはライブではできませんね。遣唐使にこの役をやらせるのは無理だ。オシャレキシ、横浜アリーナだけには来るのかな?あー、見たいなー。



10.マイ会津
名曲。イントロのエレピからもういい曲。そしてオルガンのフレーズに入りますが、ここ、こんな簡単な繰り返しなのに何と胸を打つフレーズなのだ!ここ、ライブでは池ちゃんがオルガンのフレーズを弾くのかな?
歌のメロディも、Aメロからもう名曲。この曲もテンポはゆったりだけど、16ビートに引っかかる譜割りで聴いていて気持ちいい。
「マイ会津」と「my eyes」はもちろん、「キミの合図で」「キミの合図DAYS」までかけている。まあ、こんなのは歌詞の必然ではなく単なるダジャレだけど。
サビ終わりで「会津若松」と聞こえるのでここは何をもじっているのかな?と思い歌詞カードを見たら、そのまんま「会津若松」でした
そのままかーい。
この曲ではレギュラーメンバー足軽先生(いとうせいこう)がラップで参加。しかもレゲエ。歌詞の内容は白虎隊の若き心を暗喩した内容。せいこうさん、あんた本当にすげえな。老害にならず、アドバイスだけの長老にもならず、現役ミュージシャンとしてきちんと結果を出す。あんた本当にすげえな。


このアルバム、最初聴いたときはあまり引っかからなかったのですが、聴けば聴くほどよくなってくる。それはリズムや各楽器のフレーズまで、細部まできちんと構築された素晴らしい作品だからです。いやほんと、池ちゃん、あんたはすげえよ。
ひとつ文句をつけるなら、最近、タイトル安易すぎない?「GOEMON」「TAIROW」「KATOKU」「SEGODON」「SAKOKU」。ただローマ字にしただけじゃねーか。昔はタイトルから既に面白かったのに。


レキシは「SEGODON」でNHKと付き合いがあり、今後「SONGS」の出演もあるので、今年は紅白出るでしょ。もう私の中では内定出しています。そこでお茶の間の大人・老人が「レキシって何?ふざけた名前だな。顔もこんなだし。けしからん。あれ、しかし曲はいいじゃないか。かあさん、CD買ってきて!」となる未来まで見えています。


さて、ツアーが始まります。私は11月の桐生市群馬県)公演に行く予定です。あー、楽しみ!


ムキシ(CD+DVD)

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