やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『クリード 炎の宿敵』 感想

優勝、パパドラゴ!敗者は監督!


クリードⅡ』を見てきました。公式サイト↓
wwws.warnerbros.co.jp
前作の感想はこちら↓
ese.hatenablog.com
この感想の通り、前作は「面白かったけど、世間ほど燃えなかった」です。
で、本作。感想は「前作よりもさらに燃えなかった」です。でも、ネットを見ると絶賛が多いなあ。うーむ、そうかー。


燃えなかったのは、クリードが魅力的でないから。
ヴィクター(イワン・ドラゴの息子)との対戦前の記者会見でキレちゃうのは前作からまったく成長してない。で、ぼんやりした動機で戦って負けちゃうわけですが、そこからの復活に至る心の動きがあまり見えなかったのです。私がくみ取れなかっただけかもしれません。でも、「そうだ、復活しろ、頑張れ!」にならなかったんだよなー。
ヴィクターに負けた後、ロッキーが慰めに来てくれたのに「あんたがいてくれなかったから!うえーん(意訳)」とべそをかくし、奥さんの妊娠が分かった後も自分のことしか考えてないし。Twitter民や発言小町の人が見たらダメ出しされそう。
アドニス、あんた子供だよ。甘ちゃんお坊ちゃんだよ。


対して、ヴィクターはハングリー精神の塊。父は国の威信をかけた戦いに負け、ヒーローの座から降ろされ、奥さんも離れ、息子しかいない。戦って勝つしか生きる道はない。そこでアポロの息子がボクシングの世界チャンピオンになったのだから、そりゃ乗り込むしかない。
江戸の敵を長崎で討つ。


とはいえ、劇中でも語られているように、アドニス側は受けるメリットは何もないのです。こちとら世界チャンピオン、向こうは失うものは何もない無名の挑戦者。
なので、ヴィクターがウィーラーやコンランを倒して逃げ道を塞げばよかったのに。


一度負けて復活を期し、勝つ。この王道の筋書きにはまったく文句ないのですが、そこにロジックがない。
ロッキーがクリードを連れていった「虎の穴」って何?突然どうした。ここにいる人たち、誰なの?アドニスの練習相手になっている人はめちゃ強いけど、何でこんなとこにいるの?ヘビー級世界チャンピオンがこんな人にやられてたらヴィクターに勝てるわけねーだろ。ヘッドギアもなくスパーリングするとかバンテージだけでタイヤ殴るとか、身体に悪いぞ。
そして、ここでインファイトの特訓をするのですが、ヴィクターがアウトボクサーとかインファイトに弱いとか、何かインファイトを特訓する理由あった?そして、いざ本番で効果をそんなに発揮してなかったしなー。
『ロッキー』シリーズは勝敗にロジックはまったくありませんが、あれは80年代だから許せた。友情パワーや「クリリンのことかー!」で勝てばよかった。しかし、2018年の映画でそれはもう許されない。相手の武器や弱点があって、自分の武器を磨き弱点を強化する。それをいざ試合で発揮。こうあってほしいなあ。単なる私の好みですが(だから『ちはやふる』好きなのです)。
それが、結局「気持ちで勝った」だと、カタルシスがないんだよなー。その「気持ち」ですら根拠薄弱だし。『あしたのジョー』の「金竜飛のハングリー精神に勝てないと思ったが、力石は自らの意思で減量苦と戦った。だから自分は負けるわけにはいかない」みたいな、何でもいいので根拠がほしいのです。


ラストの父ドラゴがタオルを投げ入れる決着はよかった!『ロッキー4』のアポロ戦がここで活きてきた!冷酷無比な鬼コーチだった父ドラゴは、やっぱり父親だった。
そのあと、アドニスが何か感動的な勝利スピーチすればよかったのになー。でも、ロッキーの「お前の時代だ」はいいセリフでした。登場人物を殺すことで有名な『ロッキー』シリーズ、もしかしたら次回作でロッキーが亡くなっちゃうんじゃない?
※このシリーズでほぼ毎回誰かが亡くなるのは、ロッキーがチャンピオンになった後は動機や反骨精神がもうないので、それをもう一度出すために殺しているのではないか説。


この作品、監督が力不足なんじゃないかなあ(もしくは私と合わない)。前作は目つきの悪い子供が名前を尋ねられて「クリード」と名乗るところでタイトル『クリード』どん!でいきなり「おおっ!」とアガったのに、今作はドラゴ親子の現状→タイトルになるので、「いや、お前たちクリードじゃねえだろ」と思ってしまいました。
その後アドニスのタイトルマッチ戦前の控え室でロッキーがアドニスに語る場面、背中を向けている男性がいてその人がロッキーなのかな?と思いながら見ていたのに、別人でした。ではなぜこんな構図にする。
そして、ここでロッキーはアドニスに「リングに上がる階段は3段しかないが~」という話をして、ラストの戦いの前にも同じことを言うのです。なのに、階段を映さずアドニスはさっさと階段を上がっちゃう。おーい、階段、大事じゃないの?オープニングからの振りじゃないの?
ボクシングシーンも、前作は1ラウンドノーカットとか新しい見せ方をしていたのに、今作は旧ロッキーシリーズのような大味な殴り合いと分かりやすいパンチの効果音。進化がない。
その他、カットの終わりで次の場面の音だけが先に鳴るという編集が何カ所もありましたが、あれは何かいい効果を生んでいたのでしょうか?私には分かりませんでした。単に今のシーンの邪魔になっているだけに感じました。


さらに重箱の隅をつつくと、ドラゴは試合用のトランクスをもらっていましたが、ロシア(ウクライナ)でも英語表記でいいの?ロシアで試合しているのに、リングアナは英語でいいの?会場の表記(「ドラゴvsクリード」とか)も全部英語だったけどいいの?


あらー、文句ばっかりになっちゃったなあ。そこまでダメダメ作品ではないのですが、世間が褒めているから「えー、そうかなー」と思ってしまい、こんな文章になってしまいました。たぶん、前作を好きなら今作も好き、そうでないなら今作もそうでない。そんな気がします。