やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

2019年、私の映画ベスト10

順位は「だいたいこの辺」です


今年劇場で見た映画は33本、DVDは45本でした。去年は劇場34本、DVD32本なので、そんなに変わらないな。見たい作品を見に行っているだけで義務的に行っているわけではないしスケジュール調整して見に行っているわけではないのに、ほぼ同じ本数に着地するのね。
今年は秋に見たい作品とライブ参加が集中して忙しかった。近所に映画館があるわけではないので仕事帰りに行くことはできない。となると基本土日にしか行けない。そんな状況だったので、『ジョン・ウィック3』は見に行くことができませんでした。ムビチケ買っていたのに!


基本、見た作品はこのブログに書いていますが、いくつか書いていない作品があります。『ファースト・マン』『アド・アストラ』は哲学SF作品で語り口が見つからず断念、『ギルティ』は初の劇場寝落ち!のためもちろん書けない、『IT』は前編と同じ感想だったのでこれ以上語ることがなく、『アイリッシュマン』は長すぎてどう書いたらよいか分からず断念。この5本が書いていない作品です。


では、発表します。順位は「だいたいこの辺」くらいで考えてください。
2018年のランキングはこちら。
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第10位 真実
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前作『万引き家族』が興行収入45億円の大ヒットだったのに、本作は2億円程度(5億円という数字も見た。どっちが本当?)という急降下っぷり。何でだ。これ、日本人俳優で作っていたらもっとヒットしたんだろうなー。
しかし、作品はとてもよかったですよ。
是枝監督なので、分かりやすくセリフや効果音やこれ見よがしの演出でテーマを語ったりしない。それでも見ている私たちには伝わる。これが「表現」です。
お話は地味ですが、じんわりと良さが染みこむ良品でした。



第9位 蜜蜂と遠雷
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上下巻の超大作を2時間でどう収めるか。大胆な「選択と集中」による削ぎ落としと、「素晴らしい音楽は素晴らしい音楽を聴かせることで表現する」というガチンコ勝負。そしてそれが大成功。
私のようなクラシック門外漢が見てもこれだけ素晴らしい!と思ったのですから、知っている人が見たらもっと素晴らしかったんだろうなー。やはり知識は人を豊かにする。
映画を見た後に原作を読みまして、こちらも素晴らしかった!削ぎ落とされた部分はすべてここに書いてある。原作を読めば映画のキャラクターの再現っぷりもよく分かる。映画も原作も素晴らしい、全員優勝な作品でした。
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原作の感想はこちら。



第8位 凪待ち
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「人は変われる」「何度だってやり直せる」なんて言い方、分かるけど実際は難しいですよね。人はなかなか変われない。分かっているのに、変われない。それが人間です。
この作品も何度も「変わるきっかけ」をもらっていたのに、それでも変われない痛さと辛さを描いていました。
香取慎吾が演じていた郁男を見てイライラするか自分の身を思って胃が痛くなるか、それによってこの作品の評価は変わるでしょう。私は完全に後者なので、痛い痛い!やめてくれ!と思いながら見ていました。



第7位 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
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この作品を見る前にタランティーノ作品を見ておいてよかった。彼の作風を知っていないとこの作品の良さは分かりにくい。タランティーノによる「映画(ハリウッド)はこうあってほしい!」という「見たい未来・見たい歴史」を描いた作品でした。映画に対する愛。映画なら作れる別の歴史。
欲をいえば、倒す相手は狂信者の手下ではなくチャールズ・マンソンであってほしかった。それでこそ「見たい歴史」なのに。ここに踏み込むのは危ないからやめた、という判断があったのかな?



第6位 アイネクライネナハトムジーク
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今年の「期待してなかったのにめっちゃよかった大賞」です。伊坂幸太郎原作だから見てみようくらいの期待値で見たら、めっちゃよかった!
空気なのか世界観なのか、何か分からないものに包まれ、劇中の半分くらいは涙をにじませ、号泣ポイントでは涙の噴水を噴射していました。
その後原作を読んだら、号泣ポイントはすべて映画独自の改変部分でした。今泉監督、あなたはすごい!
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原作の感想はこちら。



第5位 ひとよ
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登場人物が全員生きているので、物語上の変な部分が気にならない。脚本の都合でキャラクターが動くのではなく、キャラクターが物語を引っ張る。正直、ラストでどう決着したのかあまり覚えていないのですが、そんなことはどうでもいい。登場人物が生きているのでそれだけで成功です。
上の感想で細かいツッコミしていますが、もうひとつ追加で。佐々木蔵之介ウイスキーラッパ飲み、あんな「ラッパ飲みでーす」な飲み方はダメだ!



第4位 スパイダーマン: スパイダーバース
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スパイダーマン』といえば現在のマーベル・MCUの中心ヒーロー。これをなぜアニメにしなければならないのか。マーベルの実写で存分に作ればいいじゃないか。と思っていましたが、実際見たら「アニメの意味がある」「アニメならではの表現方法」という素晴らしい作品でした。
この作品のテーマ「誰でもヒーローになれる」は、私はあまり賛成していません。あなたはあなたであるだけで素晴らしい、はいいけど、ヒーローはやはり特別な存在だからこそヒーローでしょ。また、誰でもいいマイルスがヒーローになるのだったら、マイルスの個性を活かした活躍を見せてほしかったなーという思いもあります。



第3位 グリーンブック
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誰が見ても面白いし、誰が見ても分かる人種差別問題を扱った作品。
上の感想でも書いていますが、「ヌルい・甘い」という批判には私は賛同しません。これは間口を広く、ハードルを低くして作った作品なのです。難解で苛烈な描写ばかりの作品だったら多くの人は見ないでしょう。そうなると、結局「分かっている人」が褒め合うだけで、外へ広がっていかない。それでは意味がないのです。
いい作品です。皆さん見てください。



第2位 スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
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上の感想にも書きましたが、ヒーロー映画として完璧(挫折とそこからの這い上がり、そして勝利)、青春映画として完璧(物語の開始時とラストで登場人物たちが成長している。もちろんラブコメ要素も忘れずに)、MCU作品としても完璧(世界観や時系列の一致)。素晴らしい。しかもそれが映画単体・MCUシリーズの両方でできているんだから、信じられない調整力と脚本。



第1位 ジョーカー
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物語(脚本)も演出も美術も音楽も俳優の演技も、どれも素晴らしい。見た人はみんな衝撃を受けたでしょうし、揺さぶられたと思います。
アーサーがジョーカーになる過程は、物語上ではリアリティをもって描かれます。こんな状況ならおかしくなっても仕方ないよな。しかし、見終わった後に冷静に考えると、アーサーは自ら社会を拒絶していることも分かります。抗えない悲惨な不可抗力ではなく、自らが招いた自己責任じゃね?
そして、ジョーカーが誕生した劇中の社会(ゴッサムシティ)に対しても同様の賛否の意見があるでしょう。しかも、「自分はこう思う」という人によっての賛否両論ではなく、見たひとりひとりの中にアーサーを認める自分と否定する自分がいると思います。
その上、このモヤモヤをさらに掻き乱すラストにより、見た人の心の中はもうぐっちゃぐちゃです。この思いは?自分の意見は?どこまでが劇中の事実?どこからが妄想の世界?
ここまで引き込んでおいて、ラストで「さて、何が本当で何が正義なんでしょうか」と放り出される私たち。語っても語っても語りきれない。そもそも真実に近づいているのかさえも分からない。その結果、いまだにこの作品について考えることがあります。


さて、10位から1位まで書いてきましたが、あいつがいませんね。サノスが。


特別枠 エンドゲーム
ese.hatenablog.com
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いやもう、素晴らしすぎてもちろん1位なのですが、これはこの作品単体ではなくこれまでの10年27作の積み重ねによる達成感と満足感なので、映画単体で順位はつけられない。というわけで特別枠。
これだけの歴史を踏まえた集大成ってだけでもすごいのに、ただまとめるだけでなく(『スカイウォーカーの夜明け』めー!)、各キャラクターの魅力を活かして見せ場を作って、過去作への目配せをしつつそれは本作できちんと意味のあるエピソードで、すべてに決着をつけながら着地させる。すごすぎる。
さらにここまで膨らんだヒーローたちに対峙できる敵役っているの?という問題に対しサノスという魅力ある敵をつくってくれたことにも感謝。サノスの言い分も分かるけど、それを正面から論破するアベンジャーズ。サノスという巨大な悪役がいてくれたからこその大団円です。サノスありがとう。
この作品は、見た直後も感動と感心しきりでしたが、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の夜明けを見て余計その思いを強くしました。よくぞまとめた!これだけのまったく違う作品たちの膨張する世界観をまとめ上げた!「まとめた」といっても、私たちの想像をはるかに超えたところに着地してまとめてくれたので、「きちんと畳んだ」ではなく、「ここまで到達してくれてありがとう!」のまとめです。ケビン・ファイギ、あなたはすごい!あなたは偉い!


というわけで、10本+1を選びました。ここに漏れた作品でも、『キャプテン・マーベル』『天気の子』『ロケットマン』『楽園』などは素晴らしい作品でした。
逆に世間でヒットしたり評判はいいのに私個人がはまらなかったのは『アス』『クリードⅡ』などです。


洋画の大作はディズニーばかりで、邦画の佳作はなかなかヒットしない。そしてNetflixなどでも著名監督が大作を作っている。映画業界は過渡期です。といいつつ、レンタルビデオ、フルCGアニメ、3D映画と新しい波は常に訪れていて、その中で毎年これだけの面白い作品が生まれているわけですから、私は期待しかしていません。いつだって面白いエンタメ作品は生まれています。社会情勢が変われば、それに応じた面白い作品が登場します。
未来はいつだって面白い。(©太田光