やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

『ラヂオの時間』『笑の大学』で学ぶ「やり遂げる」の意味

The Show Must Go On!


最近、やらなきゃいけないことがいろいろな横やりが入ってなかなか思い通りに進まず、鬱々としていました。主な原因は新型コロナですが、それに伴う諸々も含めて、なかなか上手くいかない。いろいろ言ってくる人たちがウザい。現実的な理屈もなく反対したりキャンセルしたりする人たちが面倒くさい。


そんなときはこれだ!と思い、『ラヂオの時間』と『笑の大学』をレンタルしてきました。
面白かった。相変わらず面白かったですが、今見るとまた少し意味合いが違って感じることもできました。
笑の大学』は8年前に見て、そのときの感想はブログに書いています。
ese.hatenablog.com
ese.hatenablog.com
ラヂオの時間』はもっと前に見ているので、ブログでは書いていません。


笑の大学』については上の過去記事で言いたいことは書いてありますが、追加の感想としては
●映画にするために無駄な部分を入れているなあ
●やはり吾郎ちゃんは力不足なのでは
といったところ。
そして、今回改めて強く感じ取ったのは、

●無理難題をふっかけられたとき、それを受け入れつつ成立させるためには
●トラブルやアクシデントに見舞われても、それをさらなるプラスに変えるには

というところです。まあ、それを見たくてレンタルしてきたのですが。
無理難題をふっかけられたときに、無視するのは簡単。投げ出したり諦めることも簡単。しかし、実際は「それでも何とかやらなきゃいけない」「何とか成立させなきゃいけない」ってことの方が多いと思います。
そこで、ふっかけられた注文を言い訳にしてクオリティを下げるのは簡単。言い訳があるからね。無理難題を言い訳にせず、その制約の中で、もしくはその制約があるからこそできることを形にすること。それが本当のプロフェッショナル。


私にその才能はありませんが、ふてくされて愚痴を吐いても何も解決しないんだから、「じゃあどうするか」で考え、行動するしかない。それができるかどうか。結果的にクオリティが上がらなかったとしても、その意識と姿勢で物事に向かっていたか。そこが大事。


次に、『ラヂオの時間』。
オープニングの5分近い長回し。カメラも演者も狭いスタジオの中を動きながらの撮影。大変!
そして、この先はすべてのセリフと行動に意味があります。何気ない差し入れは音効の道具になり、ストライキで切ってしまった配線はラストでハラハラを生みます。演者の性格が引き起こすトラブルもあるし、そのために助かることもある。性格や言動が前フリとなり、あとで笑いとカタルシスを生む。登場人物全員に見せ場があり、みんなが活躍します。素晴らしい!


ネットを見ると「登場人物にイライラする」「女優はワガママ、プロデューサーは無能」という声をいくつか見つけました。いや、この映画はそういうんじゃないから。女優がワガママだから物語が始まるのです。そこは前提として見てくれよ。


話の大筋としては「演者のワガママに振り回されるプロデューサー。その結果、つじつま合わせのために物語はどんどんおかしな方向へ」というもので、そこが「見ていてイライラする」と思う人もいるのでしょうが、おっさんになった私が今見ると、「みんなが機嫌よく仕事ができるように調整するのがプロデューサーの役目。そして、その上で作品を成立させるのがプロの仕事」ということが十分分かるので、「無茶ぶりを受けて、それでもより良くしようと奮闘する大人達の物語」に見えるのです。


女優のワガママをはねつけることができればいちばん簡単ですが、現実はそうはいかない。次の仕事に差し障るし、局の立場・事務所の立場もあります。仕事は、それ単独ではないし、対個人だけではないのです。
そして、無理難題をふっかけられて嘆いていても途方に暮れていても、生放送の時間は迫ってくる。ぼやいている暇はない。どうするか考え、決定し、説得し、納得してもらう。これが大人の仕事。投げ出すことも逃げ出すことも許されない。与えられた状況の中、最善を尽くすのがプロです。


よく「内容がよければ売れなくてもいいのか。売れるためなら内容はどうでもいいのか」という「究極の選択」がありますが、こんなの机上の空論であり、どちらかを選択しなければならないものではありません。正解は「どっちも取る」です。正確にいうと「どっちも取れるよう頑張る」です。
素晴らしい内容で、万人に届くものを作る。間口は広く、評価は深く。ものを作る人は、みなここを目指して仕事をしているのです。


ラヂオの時間』のラストで、西村雅彦演じるプロデューサーが「俺、何のためにこんなことやっているのかな」と弱音を吐きますが、その後渡辺謙演じるトラックの運転手に番組を褒めてもらったことで「続編やるんだったら…」と前向きになるシーンがあります。誰かに届くなら、誰かが面白いと思ってくれるなら、自分の仕事はやる価値があった。
たとえ今回上手くいかなくても、自分がやった証として名前は残すし、それは作った側の責任だ。そしてまた次回、面白いものを作るために頑張る。それが仕事だ。
そうなんです。仕事も日常も人生も、理想論ではなく「現実」です。その現実の中で、どうやってよりよいものを作るか。手持ちのカードで工夫していくしかない。大人になると、このコメディの「現実」がより分かり、だからこそより面白く、より感動するのです。


さあ、私も与えられた環境の中でやりくりするしかない。お金も時間も無限にあるわけではない。この状況で最善の手を尽くそう。諦めず、もがき、リミットまで手を動かす。最大限やれることをやったと自分で思えたら、その先の結果はどういう形になろうと、晴れやかな顔で受け入れることができそうです。
最後はカッコいいこと書きましたが、そうやって自分を鼓舞することが今は必要だと思うので、書いておきます。人事を尽くし、天命を待つ。


笑の大学 スペシャル・エディション [DVD]

笑の大学 スペシャル・エディション [DVD]

  • 発売日: 2005/05/27
  • メディア: DVD