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映画『リスペクト』感想

歌の力


映画『リスペクト』を見ました。
gaga.ne.jp
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アレサ・フランクリンは名前は知っていますが、積極的に聴いたことはありません。それなのに本編で流れる音楽はどれも知っている曲ばかりで、クイーン・オブ・ソウルの名前通り「知らないのに知っている」名曲揃いでした。
私はアレサのプライベートを全く知らないので、映画化においてどのような取捨選択や脚色がなされたのかは知りません。そんな状態で見ました。


アレサは、あの当時のアメリカで黒人なのに、とても裕福な家庭に育ったのですね。家にたくさんレコードがあり、頻繁にパーティーが開かれ、そこには当時の著名な音楽家たちが集まっていた。父は公民権運動に熱心な牧師で、マーチン・ルーサー・キング牧師とも親交があった。すごい家庭だな!


映画そのものの出来は、多分あまり上出来ではない。アレサの性的虐待とそのPTSD、父親との関係、スターダムに昇る過程などはきちんと描かれていません。
性被害がその後のアレサの性格や人生の選択において何か影響があったのか、物語上ではあまり明確に描かれません。
父親との関係も、過保護で束縛的なのか、単に心配している親なのか、ヒット曲を出したいステージパパなのか、関係性がはっきり分かりません。
ヒット曲に恵まれず、レコード会社を移籍して新曲を制作→街のラジオで自身の曲がかかる→マジソン・スクエア・ガーデンでライブ。いきなりすぎるだろ。新曲を出すにつれてライブの動員数が増えていき、ついにはMSG、という段階を踏んでほしい。


酒に溺れて、亡き母に救済してもらい、ゴスペルアルバムをレコーディング。王道の流れですが、『ボヘミアン・ラプソディ』のライブエイドのような分かりやすいクライマックスではないので、カタルシスが足りない。
このゴスペルアルバムはレコーディング風景をドキュメンタリー作品として撮影していたので、その本編に近づけるためにこういう演出やカメラワークになったのかもしれませんが(私はそのドキュメンタリーを見ていないのでこの見立てが合っているか分からないのですが)、ちょっと地味だなーと思いました。もっと「このレコーディングは歴史的なものになる」というドキドキ感があって「あの声!あの歌!」となってほしかったなー。


と、物語にはいくつかケチをつけたくなるところはありますが、ジェニファー・ハドソンの歌声ですべて持っていかれました。歌の力。ベタな表現ですが、素晴らしい歌声には力がある。歌声を聴けば感動するし、涙も出ちゃう。原始よりの力。もちろん私は歌詞の意味なんて分かりませんが、そんなことは関係なく、歌力(うたぢから)のみで人を感動させる。ジェニファー・ハドソンの歌力は、強い。
彼女の歌をCDで聴いていると「黒人のふくよかな女性が歌っているなー」というちょいクドい感じがするのですが、こうやってソウルの歌として聴くと、本当に素晴らしい。
あと、アレサの子役の子も素晴らしかったですな!歌が大人以上に上手いだけでなく、ピアノも弾けるというスーパー子供。父親役のフォレスト・ウィテカーも、演説が既にソウルになっていて、黒人たちの歌やグルーヴに関する基礎体力のすごさに感動しました。


と、歌力に感動して本編を見終えると、アレサ本人映像の登場。晩年のアレサですが歌声はジェニファー・ハドソンと遜色なし!本物はすげえ!!そしてあの歳・あの体でもノースリーブを着て二の腕を上げ、ふりそで肉を震わせて歌う姿にも感動しました。あの歳・あの体でも二の腕出していいんだ。


結論。映画ではなく歌に感動しました。「歌が上手い(=音程がいい、ではない)」というのは、ものすごい才能です。映画の良し悪しを超えてくる。


リスペクト

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