弱い者たちが夕暮れ さらに弱い者を叩く
映画『グッバイ・クルエル・ワールド』を見ました。
happinet-phantom.com
前情報何もなしで見ました。
面白かったのですが、何だか感想の言葉が出てこないな。何でだろ。
この作品は「搾取される側」「やり直したい側」がヤクザの金を奪って起死回生を狙うも、結局は搾取される側の中で叩き合いを行うという、下克上ややり直しなんて無理、組織や偉い人はずっとそのままという世の現実、不条理を描いた作品なのでしょうが、それが見ているうちに感じられなかったんですよね。私の感性の鈍さが原因かもしれないけど。
オープニングの夜の街を走るアメ車。あー、映画見ているなーという安心感と贅沢感のあるショットでした。で、仲良しではないことや一枚岩のチームではないことを会話だけで描きつつ、強奪作戦開始。ここの会話だけでキャラ紹介や関係性を描く手法は上手かった。揃いのつなぎや目出し帽は、あんなコスプレセット買ったら足が付いちゃうよと思いつつ、タランティーノ映画をやるなら会話劇と併せて必須アイテムですもんね!と思いながら見ていました。
その後いろいろあって宮沢氷魚と玉城ティナがボニー&クライド、もしくは『パルプフィクション』のパンプキンとハニーバニーになって復讐を行う。いきなり散弾銃渡されてあんなにしっかり撃てるもんかな。
ここで、「お前たちは使い捨てにされたんだよ。復讐したくないか?」などと乗せられて行動するか、もしくはヤクザに脅されて仕方なくやるか、どっちかにしてほしかったです。あまり明確な動機がなく、何となく復讐に至った感じ。
この動機の部分で「結局は下の下の中での諍い」がきちんと描けると思うのですが。
ラスト、「もう疲れたよ」という二人に対して銃声が一発だけ鳴り響きます。これは西島秀俊を撃ったのでしょう。大森南朋も行き場がないため、今後どうするんだろ。
R15+作品のため、どれほどのバイオレンス・エロス描写があるかと期待していましたが、銃は撃って血は出るけどグロい表現はなかったですね。内蔵や骨は出なかった。あと、おっぱいはまったく出ないのね。残念。
クライマックスのガソリンスタンドの爆発シーン、あれって実際の炎?あそこはすごかった!!よくぞ燃やした!
あと、本作は躊躇なくガラスを割るシーンが何度も出てきてよかった。ちゃんとやることはやります!という気合いを感じた。
ただ、最初に書いたようにカタルシスはあまりなく、終わった後に、「で、何の話だったっけ?」と思う作品でした。
私、この監督だと毎回こういう感想になるんですよ。たぶん相性がよくない。
ese.hatenablog.com
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タイトルの『グッバイ・クルエル・ワールド』は直訳で「さよなら残酷な世界」ですが、「狂える」にもかかっているのでしょう。そして「グッバイ」は、やり直そうとしても上手くいかなかった本作の登場人物たちの自分の人生に「グッバイ」なのでしょう。
では、俳優の感想。
●西島秀俊
いい人すぎる。元ヤクザ感ゼロ。もう少し「たまに見える怖さ」が必要。
あと、途中で大森南朋との取り調べシーンがあるのですが、数年前のシーンなのに二人とも現在とまったく同じ。せめて髪型や髭くらい変化つけてよー。
●斎藤工
斎藤工はイケメンすぎるからこういう汚れ役をやりたがるけど、いつ見ても斎藤工なんだよなー。イケメンすぎるからなのか、イケボイスすぎるからなのか。ある意味、俳優として損ですよね。
●宮沢氷魚
相変わらず韓国イケメンみたいな宮沢氷魚。あんまり印象ない。途中大森南朋を刺すところ、ラスト玉城ティナが死ぬところの心の動きが私には読み取れなかった。
●玉城ティナ
記号みたいな役と演技。タバコも咥えているだけ。肺まで吸わんかい。
あんな重傷負ったのにすぐ回復しすぎ。その後撃たれたのに平気すぎ。
そもそも、ラブホ襲撃に彼女いる?宝石店襲撃に彼女いる?宝石店で大けが負わせて残していく?リスクしかないだろ。途中で心を失って復讐マシーンになるのもよく分からなかった。その先、どうするつもりだったの?
●宮川大輔
宮川大輔っぽい役だった!なぜ玉城ティナの彼氏なのか、そこは不明。
●大森南朋
大森南朋っぽい役だった!刑事としてのシーンゼロだけどいいのかな。ラスト『SAW』みたいに生きていたけど、あんなに深く背中刺されて(包丁が刺さったまま背中の肉に残るほど)病院行かずに「イテテ…」で済むの?この世界の人、痛みに強すぎ。
●三浦友和
さすがの三浦友和。ここ数年、普通の人を演じてないんじゃない?ラストは理不尽に殺されてかわいそう。
●奥野瑛太
チンピラ演技No.1!Wikipediaを見たら私の見た映画にたくさん出ていたので、それらでも素晴らしいチンピラ演技を見せてくれたのでしょう。素晴らしかった。そのものだった。