2025年は映画館で35本の映画を見ました。以前は見た作品を1本ずつブログで感想を書いていましたが、今はそれもしなくなったので、年末くらいまとめて書こうかなと思い、久しぶりにブログを書きます。
とはいえ、35本すべて書くことはできないので、よかった作品に絞って見た順に書いていきます。ランキングにしようと思ったけど、順位付けが難しい作品もあるので、見た順で書きます。
●アノーラ
動きまくるカメラとぶつ切りの編集がドキュメンタリー感を出し、それが映画をドライブさせる。シンデレラストーリーのその後を描いた作品ではありますが、そもそもシンデレラストーリーではないですな。アホな御曹司の気の迷い。
途中のおっかけっことアホボンを探す道中は、完全にコメディ。捕まっているアノーラの方が強い。
ラストはいくらでも解釈ができそう。誰かと語り合いたい。自分の身体を使うことで世の中をサヴァイブしてきたアノーラだが、それが通用しない相手にはどうすることもできない。自分にはお金もないし理路整然とした説明や説得もできない。これ(自らの身体)がダメなら自分にはもう何もない。その無力さからの涙なのでは。イゴールに対する愛はないと思うけどな。
見ている間ずっと面白く、名作だと思いますが、アカデミー賞作品賞って作品ではないよーな。10年後に残っている作品かな?
●名もなき者
ミュージシャンの伝記映画の場合、幼少期からデビューまで、デビュー後のブレイク、その後の挫折や苦悩、それを乗り越えたクライマックス、という構成にするのがオーソドックスです。
しかしこの作品はディランが天才として現れ、天才のまま去っていくのです。ディランの周囲の人はこの天才に翻弄され揺れ動きますが、ディランは最初からディランのまま。
クライマックスでアコギからエレキに転向し「ユダ(裏切者)!」と罵声を浴びせられる有名なシーン(時系列の入れ替えはあるが)があるので盛り上がりますが、構成としては異端です。
それでもこの映画がずっと面白く見ていられるのは、1950年代のアメリカが完全に映し出されているから。アメ車、バイク、タバコ、ジーンズ。映像の質感、画面の構図、カット割りと編集、役者の演技、音楽。これらが一流なので、ずっと面白い。これぞ映画だなーと思いながら見ていました。
私はディランについてあまり詳しくありませんが、ディモシー・シャラメの歌声は完全にディランだった。ピート・シーガー役のエドワート・ノートンは急にオファーが来たらしいですが、それであんなにバンジョー弾けて歌えちゃうの!役者はすごい。
●悪い夏
前半ちょっともたついたけど、後半になるにつれてボルテージは上がり、クライマックスの嵐のシーンでは登場人物がみんな爆発していてよかったです。
役者の皆さんもよかった。
・北村拓海はいい人もやさぐれもできて素晴らしい。
・河合優実は自分で決められない人。それが物語を転がしていくが、ラストではそれがフリとなりカタルシスを生む。
・箭内夢菜は他人の力を自分のものだと勘違いする人。ぽっちゃりした体形がリアリティをもたらす。
・窪田正孝の身体能力とそこからくる怖さは彼の大きな武器。
・伊藤万理華の生真面目から狂気への一貫性は素晴らしい。マジでこういう人いそうだもん。
・木南晴夏のやつれたシンママは可哀想すぎて。他の作品では全然違う人なのに!
・竹原ピストルは根がいい人なので、こういう役は合わないのでは。
●片思い世界
今年坂元裕二の劇場作品はこれと「ファースト・キス」があり、世間的には「ファースト・キス」の方が評価高いようですが、私はこちらを推します。
SF設定についての様々な疑問点はありますが、登場人物とこの世界の美しさですべて押し切った!
セリフのやり取りから登場人物のキャラが浮かび上がってくるのが坂元裕二作品なわけですが、それをやるには映画という2時間のフォーマットは時間が足りないのでは。特にSFだと世界観やSF設定の説明なども必要なので、設定・登場人物・物語を2時間で語ろうとするとどうしても登場人物の掘り下げが足りなくなる。それは坂元裕二作品の魅力を大きく減じることとなります。1時間×10話のドラマ形式の方が坂元裕二のよさが発揮できるのでは。「花束みたいな恋をした」「ファースト・キス」は主要登場人物が2人しかおらず、しかもそのうち一人をメインで描いているから成立したのではないかしら。
●サンダーボルツ*
フェーズ4以降、どんどん興味と求心力を失っているMCU。私もディズニープラスのドラマはもう追っていません。劇場版は半ば義務のように見に行っています。
・「ブラック・ウィドウ」…ナターシャおつかれ!なので大筋と関係なし。
・「シャン・チー」…個人的には好きでしたよ。カンフー×ドラゴンボール。
・「エターナルズ」…ヒーロー多すぎ。監督と作品の相性がよくなかったのでは。
・「スパイダーマン:ノーウェイホーム」…トムホ版スパイダーマンはどれも傑作。そして本作は大傑作!!
・「ドクターストレンジ:マルチバース・オブ・マッドネス」…お前がマルチバースを始めたからMCUは何でもありのぐだぐだになっちまったんだぞ。
・「ソー:ラブ&サンダー」…監督のコメディセンスが私には合わない。ソーはこれで離脱でよかったのに、また戻ってきそうだな。
・「ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー」…主人公の死がなければ全然違う物語になっていたはずなのに、もったいない。
・「アントマン&ワスプ:クアントマニア」…いやー、ひどかった。量子世界に人がいるって何だよ。
・「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」…さよならガーディアンズ、さよならジェームズ・ガン!さみしいけど大傑作だったので笑顔で送りだそう。
・「マーベルズ」…キャプテン・マーベルはめちゃ強いのに、変な設定を入れたせいで強さも魅力も減じてしまった。あと私はドラマ版「ミズ・マーベル」時代から、カマラを好きになれない。
・「デッドプール&ウルヴァリン」…デッドプールもウルヴァリンもファンスタスティックフォーも見てないので、面白かったはずなのに楽しめなかった。
・「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」…期待していなかった分、面白かった。ハードルと期待値は低い方がいい。あと、ハリソン・フォードがハルクに変身するところは予告時点で見せなかった方がよかったのに。当時のMCUにそんな余裕はなかったのだろうけど。
・「ファンタスティック・フォー」…これまでのこのシリーズをまったく見ていないので比較はできませんが、まあ及第点じゃないですかね。あの4人だからこその戦い方や連係プレイがあればよかったのに。あの4人である必然性が見えなかった。
で、本作。まさかMCUで泣くとは。まさかメンタヘルスの話だとは。登場人物それぞれがトラウマを抱えていて、それを「みんなで一緒にいること」で癒していく。それが結果的に敵を倒すことにつながるとは。
ヒーロー全員特殊能力はないのでアクションも地味だけど、最近のMCUでよくあるCGてんこ盛りよりは肉弾戦の方が見ていて楽しかった。
来年「スパイダーマン」、そして「アベンジャーズ:ドゥームズデイ」。この流れは楽しみ!2026年はMCU復活の年にしようぜ!
●ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング
トムありがとう!実写アクション映画の最終回を見た!
という大感動はあれど、最近のトム映画を見ていると「イーサン・ハントがミッションを遂行する」ではなく「トム・クルーズが無茶なアクションを実際にやっている」の方が前面に出てしまい、この興奮やハラハラは映画世界のものではなくトムに対するものではないか、と毎回思ってしまいます。
当初この記事をランキング形式で書こうと思っていたのを見た順に変更したのは、この作品の位置づけが難しいから。映画としての良しあしとは別の評価基準で大興奮した映像作品でした。
とはいえ、ものすごいアクションを大画面で見る興奮は楽しいものです。改めて、トムありがとう!
●国宝
邦画実写作品興行収入日本一更新おめでとうございます。「踊る2」を超えてくれてうれしい。私も面白いと思いましたし素晴らしい作品だと思います。が、それでも私は大絶賛ではありません。
私は歌舞伎に懐疑的です。誰でもできる芸事を血筋で独占しているだけなのでは。本作の主役の二人の演技が賞賛されていますが、それは結局一般人が数か月練習すればできることという証左ではないのか。
また、この作品が絶賛されている理由のひとつに「俳優が一年以上の稽古を重ね俳優自身が歌舞伎の演目を演じている」があります。これって、映画というフィクションを見ている視点とは違う見方ですよね。上でも書いた「トム・クルーズが実際に無茶なアクションをやってる」と同じ見方。その興奮や感動は、映画本編のそれとは違うのでは。
血筋か才能か。いくら才能があってもその家の人間でなければ主役になれないのか。結局血筋であるという身もふたもない現実。ドサ回りの結果、田中泯から救い上げられる吉沢亮。それだけですぐに第一線に戻れるのかよと思いましたが、実力だけではなく権威やきっかけも人生には必要なんでしょうね。
ラスト、人間国宝になる場面で、やくざの家柄であることは障害にならなかったのかな。決める会議で紛糾し、三浦貴大が「血より才能、実力でしょ!」と演説をぶってほしかったなー。
と細かい文句はありますが、映画全体としてはとても素晴らしく、こういう素晴らしい作品が大ヒットする事実はとてもよいことだと思います。
●罪人たち
ライアン・クーグラー監督については、「ブラック・パンサー」好き、「クリード」好きじゃない、という評価です。
で、本作はとても面白かったです!
元々アメリカでは大ヒットしていましたが、日本ではヒットが見込めず劇場公開されない流れだったのが、アメリカでの大ヒットと今後賞レースにも絡んでくるのではという予想から、日本でも急遽公開が決定しました(という見立ては私の予想です)。
黒人映画が途中からホラー映画に変わるという変な構成。でも、最初からラストまでずーっと面白かったです。
特に中盤の黒人音楽の歴史が(疑似)ワンカットで映し出されるあのシーン。あれを劇場で見られただけで大満足。あそこは誰もが大興奮したと思います。
ラストの終わりそうで終わらない展開は、もう少しコンパクトにならなかったかな。
エンタテインメントとして誰が見ても面白く、さらにアメリカでの黒人の歴史についても言及されている多層な語り口。こんな素晴らしい作品が劇場公開されなかったかもしれない日本映画界における洋画の現状。悲しいけどもう覆らない。知らない外国人が知らない言語で知らない物語を演じているのよりも、原作で面白いことが確定しているアニメを見る方が間違いないもんな。
●でっちあげ
ノーマークだったけど面白かった!
映画だからもちろんデフォルメはされているのでしょうが、これが事実という恐ろしさ。裁判で勝ったとしても失われた時間や仕事は戻ってこない。頭のおかしい人に絡まれたら人生終了なんて怖すぎる。
綾野剛はこういう出来事があったと認識していることが、柴咲コウは全然違う出来事として認識していて、それが訴えの証言として採用されたら「そうじゃない」を証明することはほぼ不可能なわけで、こんなの無理ゲーすぎる。家庭訪問でのやり取りとか、下校途中の生徒とのやり取りとか、記録しているわけじゃないから水掛け論になるしかない。どうすりゃいいんだ。
綾野剛はいい人も悪い人もどんな人でも演じられて素晴らしい。本作でも「いい先生」「柴咲コウ目線での悪い先生」「訴えられた後の弱っている姿」で全然別の人物像を演じてくれました。素晴らしい。
●F1/エフワン
公開前から「トップガン/マーヴェリック」の監督・スタッフが集結!といううたい文句を押しており、見てみたら確かにその通りの内容でした。ロートルが若手を鼓舞し、勝つ話。
お話はこれまで百万回こすられてきた王道そのもの。外部からやってきた男がその組織をかき乱し、変革し、勝利してまたどこかへ行く物語。
引っかかったのは、F1という世界最高峰のレースで、毎年レギュレーションも機械も更新され続けているのにいきなり運転できるわけないじゃんというところ。最初くらいは「当時と全然違うんだな」で上手く運転できないのが、すぐにアジャストしていく、くらいのワンクッション入れておけばいいのに。
途中女性スタッフとのロマンスがあり、2025年なのにまだこんなことやってるの!と思わないでもないですが、この作品の立ち位置を考えれば笑って見過ごせるエピソードでしょう。「黄昏流星群」みたいなもんですよ。また、ブラピとHしちゃったあとの女優がいきなり女になっていた描写もかわいらしかったので目くじら立てることでもないと思います。確かに本編には何も関係ないけど!
F1自体がアホみたいにお金のかかっている貴族のお遊びなので、それをしっかりお金をかけて映像化している本作は見ていてもリッチな画面に満足度は高いです。ドライバー目線での臨場感あふれる音と映像は映画向きだし。
ベタで王道の物語をスター俳優が演じてお金をかけて映像化すれば面白い作品になるわけではないですが、本作はそれが上手くできていた作品でした。「スター映画」という立ち位置も含めて、ハリウッド映画最後の灯かもしれない。
●沈黙の艦隊 北極海大海戦
前作も含め、私はこの作品とても面白いと思っているのですが、世間はあまり盛り上がらなかったな。Xでの反応やPodcastでの感想などもあまり見つけられませんでした。
私は原作を読んでいるのでその贔屓目もあるとはいえ、面白かったですよ。潜水艦という密室と、深海という暗闇の空間。どちらも「動きを見せる」という映画の本質からは難しい題材を、上手く見せることに成功していました。
上記の制約は、レーダーの表示で潜水艦たちの位置関係を分かりやすく示し、カメラの傾きで上昇・下降を表現していました。そして実際の潜水艦に取り付けられたカメラの臨場感あふれる映像により、迫力ある動きを表現することに成功していました。
ドラマパートは正直物足りない部分はあります。何も知らない海江田をいきなり信じて条約締結に突き進む首相はありえないし、何かやっているようで何もやっていない江口洋介は雰囲気政治家だし、世論の動きは極力見せないし。
本作のラストで潜水艦やまとはニューヨークまで来てしまいました。こうなるとあとは海江田が国連総会に出席して演説してアレが起こるしかないのですが、それだと潜水艦アクションが全然なく、映画として退屈になりそうですが大丈夫なのかしら。アマプラでのドラマ版の話はないので、完結編の映画が作られておしまいだと思うのですが、大丈夫かしら。楽しみだけど心配。
最後に。上戸彩は不要。
●ワン・バトル・アフター・アナザー
アクション映画と聞いていたのでカンフー的な肉体同時のアクションかと思っていたのですが、いざ見たらアクションとは「人間の動きとそれを追うカメラの動き」のことでした。同じく、カーアクションがすごいと聞いていたのでカーチェイスや車同士のぶつかり合いかと思っていたのですが、いざ見たら「走行する車の動きを上手に撮る」のがすごかったです、
この作品は映画的快楽に満ちている。映画とはショットとショットの連続で、映画監督はそれをどう撮るか、どう編集するか、という技量とセンスが重要な職業なわけですが、それができている。とても上手くできている。だから見ている間はずっと「面白い」と思いながら見ていられる。お話としての面白さ(娘はどうなっちゃうの?とか)はもちろんありますが、画面がずーっと緊張と快楽を与えてくれるので、それだけでこっちはよだれ出しながら画面にくぎ付けになっちゃう。
ディカプリオのダメオヤジっぷり、娘の聡明な顔、母親の肉体的強さ、デルトロの飄々とした佇まい、などどれも素晴らしかったですが、結局ショーン・ペンのキモい顔と肉体が全部持っていったな!
●愚か者の身分
本作は今年いちばん期待値を上回って面白かった作品でした。つーか、邦画ではNo.1の作品でした。興行成績がイマイチでとても残念です。
同じ出来事を三者の視点で重ねて描くことにより、出来事を版画のように少しずつ詳細に写していく効果をもたらしていて、そこが上手でした。
あのシャツを選んだ意味、魚を選んだ意味、戸籍を売ることの危険さなどが後半回収されていく展開も見事。レンタルルームの鍵をタクヤに渡すのは、佐藤にガサ入れの危険があるからなどの理由付けがほしかったなー。
タクヤのあの場面、ソファに座っているのは難しいのでは。横になっている、寝ているのかなと思わせておいて実は…でいいのではないか。その後、目を奪われてもあんな普通に動けるもんかな。
ラスト、マモルがリュックをおろして川を見つめる場面はどういう意味なんだろ。どなたか解説お願いします。
役者は皆お見事。特にジョージのデカさ怖さ強さがとてもよかった。マモルの箸の持ち方がでたらめなのもよかった。
また、セリフのやり取りがリアルでとてもよかったです。ほのかにBLっぽさを感じたのは女性監督だからなのか。
本編とは少しずれる話ですが、お風呂のシーンで感じたこと。
「綾野剛の色気が強すぎる問題」はあるとしても、タクヤと梶谷の間にBLな空気を感じてしまった(もちろん劇中の二人がそういう関係でないことは分かっているが)のは、女性監督だからなのかなー。風呂のシーンで梶谷がタクヤの頭を洗う場面も、半グレの男性があんな優しく(そしていやらしく)頭を洗うかなーと少し違和感を覚えました。
また、この風呂のシーンで綾野剛のお尻が映っていますが、出す意味あるのかな。監督の発言によるとカットしたけどお股に手を突っ込んでガシガシ洗うシーンもあったそうで、それを撮る必要あるのかな。もしこの二人が女性だったらこんな撮り方しないと思うのですが。女性監督と女性ファンが二人の裸を見たいだけじゃないのかな。男性監督が女優を脱がすのとどう違うのかな。
興行成績がイマイチだったのでこういう細かい議論も起きませんでしたが、少し気になりました。
以上、今年私が見て面白いと思った映画たちです。これ以外では「爆弾」「バレリーナ」なども面白かったです。逆にイマイチだったのは「ミッキー17」「アマチュア」「28年後…」「ショウタイムセブン」など。
2026年は今年以上にアニメが伸長し洋画が退潮するのかな。そうなると私の見る作品が減ってしまうな。洋画が退潮すると地方では中小規模の洋画上映がさらに厳しくなっちゃうな。せっかく映画館で見るのだから、テレビドラマでは不可能な映像を見たいよう。
来年もいい作品がたくさん公開されますよーに。