やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『蜜蜂と遠雷』 感想

もっと知っていたら


映画『蜜蜂と遠雷』を見てきました。公式サイト↓
mitsubachi-enrai-movie.jp
原作は未読です。


よかったです!
群像劇だけど栄伝亜夜がやや主役寄りになっていて、ラストの結果発表でまたバランスを取ってくるこのさじ加減、上手いなー。原作ではもっと群像劇(明確な主役不在)でありつつ風間塵が主役寄りだったようですね。


クラシックのコンクールって上手さと解釈の競い合いなので、素人の私たちにはそんなハイレベルで些細な違いなど分かりません。それを、本作ではカデンツァ(自由演奏)という方式を採ることにより、演奏者それぞれの個性が見えるようになっています。上手い。
また、こういう作品ではしばし「外野の解説」により、今行われていることのすごさを説明するものですが(『魁!男塾』の富樫・虎丸方式)、本作ではこれはほぼなし。音楽の力と観客(見ている私たち)の力を信用してこその説明の少なさ。
ただ、これは私は良し悪しだなーと思いました。マサルは正確無比で完璧な演奏、塵は天衣無縫で自由な演奏、明石は生活者の演奏、そして亜夜は天才降臨、ということなのでしょうが、それが演奏だとどういう特徴を持っているのか、すぐにはつかめないのです。生活者の演奏って何?自由な演奏といってもジャズではないので完全な逸脱はできないわけで、どこまでがクラシックの枠の中の自由なのか、とかとか。
クラシックのコンテストだから演奏途中にしゃべる人なんていないのかな?ブルゾンちえみのような門外漢に「問う役」をやらせてもいいのでは、と思いました。
逆に、前半は説明セリフが多くてちょっとげんなり。登場人物の説明として必要なのは分かりますが、下手な人にやらせると「説明してるなー」感がすごくてげんなりするのです。


物語は、天才たちにしかたどり着けない場所、天才だから影響を与え合うこと、それがまた天才たちを成長させることなどが描かれています。
7年前のトラウマによりピアノから遠ざかっていた亜夜は塵から「ピアノを演奏する楽しさ」という根源的な動機を取り戻します。明石がサラリーマンを続けながらコンテストに挑むのは「生活に根ざした音楽」を表現したいから。しかし圧倒的な天才の前にはそんな自信の信念も届かない。マサルが目指してきた「完璧な演奏」は技術的なことだけではないということを彼らと交流することで気づいていきます。


そして最終決戦。各々が持てる力を十分に発揮し、亜夜は覚醒して素晴らしい演奏を披露して終わる。ぶつ切りのラストのようですが、その後に結果が表示されることで余韻と解釈が生まれてきます。
完璧な演奏をしたマサルが優勝、そして亜夜と塵が続く。コンテストってそういうもの。ロックやジャズとは違う。そして、明石が奨励賞と作曲家特別賞。ここでついに凡人の努力が認められます。この案配も上手い。


本作は超絶技巧のクラシック演奏ですから、もちろん吹き替えボディダブルとして演奏者がいるのですが、これが4人のキャラに合う人をそれぞれ見つけてきて、演奏の違いを出しているのです。すごい、本気だ。
また、劇中の『春と修羅カデンツァは、原作に描かれていることをすべて盛り込みながら、この作品のために新たに書き下ろしをしているのです。すごい、本気だ。


これだけクラシックに本気な作品なので、クラシックをもっと知っていたらもっと楽しめたのになーという悔しい思いがあります。クラシックは演奏技術はもちろん重要ですが、解釈も重要(それによってどう弾くかを決める)なので、知っていれば「この曲を選択したのはこうだから」「こういう弾き方をするのはこうだから」とか、いろいろ分かったり考えたりすることができたのになー。


タイトルの意味は何ですか?原作を読めば分かる?私個人の解釈では、蜜蜂のような小さな羽音が、遠雷を轟かせる。バタフライエフェクトのような意味でもあり、コンテストという室内で演奏している音が世界を鳴らすことにつながっていく(劇中でホフマン先生が言っていたこと)ということでもある。
また、蜜蜂は花の授粉を媒介する昆虫であり、塵の両親は養蜂農家ということもあるので、本作の中では塵が蜜蜂となり天才たちに影響を与えていく、という意味もありそうです。
そして、ラストの亜夜の演奏後、客席に向かって立つ亜夜に向かって鳴り止まない万雷の拍手。これも「遠雷」なのでしょう。蜜蜂の力により、遠雷を轟かす演奏を行った亜夜。それは昔母が亜夜に言った「あなたが世界を鳴らすのよ」を実現させた瞬間でもあります。


演者について
松岡茉優
彼女が女子受け悪いのは分かる。ウザいもん。しかし、俳優としてのスキルは文句の付けようがない。かつての天才少女が自分を取り戻し覚醒する姿、しかと見届けました。
「天才」という役ですが、『ちはやふる』の若宮詩暢とはまた違う人物造形。上手い。すごい。素晴らしい。
松坂桃李
桃李君は上手いなー。予選落ちしたインタビューシーン、ものすごくよかったです。最初は平気な顔しているけど、いざしゃべり出したら悔しさが溢れてきちゃう。上手い。
ただ、メガネが度なしだったのが残念。本当に度入りだと顔が歪んじゃうから仕方ないけど「あー、伊達かー」と思ってしまいました。
森崎ウィン
『レディプレイヤー1』の「俺はカンダムで行く」の彼ですよ。彼だけ英語の発音が素晴らしすぎて、斉藤由貴がかわいそうになりました。
彼はイケメンだし英語もしゃべれるんだから、こんなところにいないでハリウッドに行きなさい。真剣佑とともにハリウッドで活躍しなさい。
鈴鹿央士
すずかおうじと読むのですね。初めて知った。新人だもの。加藤諒から気持ち悪さを抜いたような顔でとてもよい。
途中のインタビューシーン、完全に素のしゃべり方でした。これが演技としてできているならすごい。
斉藤由貴
このキャスティングだけ、私は不満です。斉藤由貴、ピアノ弾けそうにない。審査委員長をするほどの強さをもっていない。英語しゃべれない。タバコ吸わない。
あのしゃべり方や表情から、クラシック界のすごい人にはとても見えませんでした。黒木瞳とか天海祐希とか、もっと強そうで頭良さそうな人の方がよかったなー。斉藤由貴は「ただ見ただけなのに男が勝手に惚れちゃう」みたいな役が合っている。
平田満光石研鹿賀丈史
ベテラン・重鎮はさすがに上手かった。


本作の監督は石川慶。何と脚本も編集もご自身です。そんな多才な人なのに、エンドロールでは途中に名前が出ちゃったらしく、見つけられませんでした。監督なんだからラストにででーんと止め打ちしていいのに。
そして、この方、『愚行録』の監督じゃないか!全然知らなかった。才能あるのはもう分かったぞ。次回作が楽しみだ。
『愚行録』の感想はこちら。
ese.hatenablog.com


蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

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蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)

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蜜蜂と遠雷

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『蜜蜂と遠雷』ピアノ全集+1(完全盤)(8CD)

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『蜜蜂と遠雷』ピアノ全集[完全盤]

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蜜蜂と遠雷 (1)

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黒部ダムはいいぞ

破砕帯をしゃぶり尽くす


黒部ダムに初めて行ってきました。
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黒部ダムって、行くまでに何時間もかかる秘境だと思っていたのですが、長野側からだと簡単に行けるのね。


午前中まで仕事をして、そこから車を飛ばす!佐久市まで一生懸命走らせ、友達の娘さんの運動会に参加。
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しかし、着いたときはもう終わる直前でした。くそう、仕事め。
その後関係ない私も片付けを手伝って、松本市へ。
ese.hatenablog.com
RHYMESTERの松本優勝ライブを見る。


ライブ後、安曇野穂高までまた車を走らせる。私はもうライブハウスのビールを飲んじゃっているので乗っているだけ。S君運転ありがとうー。
温泉宿なので今から夕食は出ません。そして山の上なので近くに飲食店などありません。チェックインして荷物だけ置いて再び山を下りる。S君運転ありがとうー。
20分くらい走り、ようやく街中へ。飛び込んだ居酒屋で乾杯!
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クセの強いお品書きで何を注文すればいいか分からない…。
ダラダラとビール・焼酎・日本酒などを飲み、再び山を登る。S君運転ありがとうー。
宿に着いたら既に23時過ぎ。お風呂は0時までなので急いで入る。温泉サイコー。こんな時間だから誰もいない。泳げるぜ(泳がないけど)。


翌朝、早起きして再び温泉へ。温泉サイコー。朝食もサイコー。写真はない。
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女将さん、ありがとうございました。結局女将さん一人しか見なかったけど、まさか一人で切り盛りしてるの?
宿を出て、いざ黒部ダムへ。


1時間近く走って、駐車場へ到着。
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むむむ、何も見えない。雨の扇沢駅
一応シャツにパーカーで来たのですが、思った以上に天気が悪くて寒い!思わず入り口の売店でウインドブレーカー買っちゃった。3,000円。家に帰ればもっといいやつあるのに、背に腹はかえられない。
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ここからは電動バスでダムまで行きます。アジアからの観光客が多くてびっくり。皆さん、どこでこの場所知るの?
改札前で待っていると、駅員さんが近づいてきて
「皆さん!バスの発車までまだお時間があるので、少しお話を聞いてください!」
静まるお客。
「…駅弁買ってください」
お客さん大爆笑。


さあ出発。駅弁は買っていません。
バスの乗車時間は約16分。途中はモニターでダムの歴史と見所を紹介してくれるのであっという間です。
黒部ダムといえば大水が出て大変だったというのが有名です。その破砕帯って、わずか80メートルの距離なんですね。実際掘っている最中は80メートルなのか800メートルなのか分からないわけですから、わずかなんて言えませんが。
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着いたぞー!とりあえず写真撮るよね。
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ちょっと下りた。写真撮るよね。
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もうちょっと下りた。写真撮るよね。
この頃になるとさすがに自分でも「同じ写真ばっかり撮ってるな」と気づくのですが、新たなスポットに行くと写真撮らざるを得ないのですよ。ダムはいかなるときもフォトジェニック。
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ほぼ平行なところまで来たぞ。
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コンクリの量!!
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アップにすると、放水口の手前に扉があるのですね。あそこから見てみたい!
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黒部ダムをクロヨンダムというのはこういうわけなのね。
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向こう側まで歩こう。逆側から見てもダムはフォトジェニック。
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この先に行くと富山側へ行けるのですが、ケーブルカー→ロープウェイ→トロリーバス→高原バス→ケーブルカーという果てしない乗り継ぎが必要なのです。移動だけで一日がかりですな。
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www.kurobe-dam.com
折り返して歩いていると、何だか明るくなってきたぞ。太陽だ!太陽様のお出ましだ!
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虹だ!虹だー!しかし私のスマホでは上手く撮れない!心の目で見てください。虹だよ!!
朝からずーっと霧雨で雲が重く垂れ込めていたので、一瞬とはいえ陽が差すだけでこんなに暖かくなるのか、こんなに晴れやかな気分になるのか、こんなに世界は輝くのか!今ならあの子に好きって言えそう!
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見て、青空。


黒部ダムは破砕帯に苦しめられたわけですが、今はその元を取ろうと必死。
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破砕帯の湧き水、ハサイダー推しがすごい。
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熱に負けて買ってしまった。味はもちろんサイダー。破砕帯の味など分からぬ。


楽しかった。これ、天気よかったらさらに最高なんでしょ?黒部ダム、とてもよいぞ。
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山を下りたらいい天気になってきた。内村ダムなんてのがあるのね。
街に戻り、友達の奥さん・娘さんとお茶。4歳の娘さんから手の甲にチュっとしてもらうなど天国キャバクラを味わい、帰宅しました。
今度はいい天気のときに行ってみたいけど、山の天気は分からんもんなー。


黒部の太陽

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黒部の太陽 [特別版] [Blu-ray]

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映画『ジョーカー』 感想

ヤバすぎてヤバい。素晴らしくてよくない。傑作すぎてマズい。


映画『ジョーカー』を見てきました。公式サイト↓
wwws.warnerbros.co.jp
いやー、この作品はヤバい。大傑作だけど声高にそう叫ぶのも、他人にお勧めするのも憚られる強さと怖さ。これはフィクションだぞ、と自分に言い聞かせておかないと引っ張られてしまう危うさ。





あらすじはWikipediaに載っているしそもそも前宣伝の「彼がジョーカーになる物語」そのままで、どんでん返しも衝撃の真実もない。それでも震えるほどの衝撃を受けたし、ラストの「車の上でダンス」は「こんな最高な最悪のラストあるかよ!!」と賞賛と恐怖がない交ぜになった感情を抱きながら劇場のイスに座っていました。


それでも、この作品は「社会的弱者が社会的支援を外されたからこその結果」という「あり得る末路=誰でもジョーカーになり得る」とは描いていません。
アーサーは職場の同僚と飲みに行ったり友達付き合いしている様子はありません。小人症の人をバカにしないけど他の人からバカにされたときは守ることもしない。ソーシャルワーカーには自分のことばかり話して対話をしようとしない。
自分から社会的つながりを絶っている人なのです。そのくせ自分で「自分は孤独だ」「救いが欲しい」「(自分を受け入れてくれる)他人とのつながりが欲しい」と思っているのです。で、何もしない。思っているだけ。何もしないでモテたい童貞高校生と同じメンタルなのです。求めよ、さらば与えられん。
また、最初の殺人である地下鉄での3人との諍い。これも最初の発砲は正当防衛の範疇ですが、3人目は逃げようとしている相手を完全に自分の意思で殺している。「事故」や「仕方ない」「誰でも」ではないのです。


途中、アーサーが同じアパートの住人と仲良くなり、お笑いライブに呼んで楽しんでもらい、入院した母の見舞いにも付き合ってもらう場面。そんなことある?こんな人と付き合う?こんな人のお笑い、笑える?と違和感ありまくりだったのが、全部アーサーの妄想だったと分かるところで私たちはびっくりと納得をするわけです。
そして本当のラストシーン。病棟での描写を見て私たちは混乱するのです。
つーことは、どこまで本当?どこから妄想?すべてがあやふやになる。
考えられるのはどれか。
①全部本当で、逮捕後に精神病院に入れられた。その後カウンセラーを殺して逃亡しようとしている。
②ラストの「冗談を思いついた」の冗談がこの映画の本編。全部アーサーの妄想。
③ラストシーンは過去の場面。この後本編の時間軸になる。
どれなんだろ。他にもあるかな。監督は確証を持って撮っているけど、まだそれを明かす気はないそうです。いつの日か種明かしをお願いします!


あと、ブルース・ウェイン(のちのバットマン)との年齢差問題。アーサーは既に中年で、ブルースはまだ子供。
これは、アーサーは「ジョーカーという概念の誕生」であり、この後『バットマン』の映画でヴィランとして活躍するジョーカーとは同一人物ではないのでしょう。後にジョーカーとなるその人にとって、アーサーはキリストやアラー、もしくはヒトラーチェ・ゲバラのような存在だったのでは。
ただし、この作品自体が「DC原作」ではなく「DCのキャラクターに基づく」なので、あまり厳密な整合性は不要なのかもしれません。


ホアキン・フェニックスの演技についてはもう何も言わん。皆さんが絶賛しているとおり、本当に素晴らしい。可哀想な境遇なのは分かるけど、見ている私たちはずーっと「でも、気持ちわりーな」と薄っすら思ってしまう見た目と表情と笑い方。このバランスの素晴らしさよ。
見ている間、ずーっと「エガちゃんみたいだな」と思いながら見ていました。


映画でも漫画でも「感情移入」ってありますけど、あれは「主人公の気持ち、分かるわー。自分と同じ!」ということだけではなく、「このキャラの行動には賛同しないが、このキャラがこういう言動をするのは理解できる」ということも含んでいると思っています。その世界の中でそのキャラが生きていれば、その言動が(そのキャラにとって)自然であれば、感情移入します。
そういう意味で、本作のアーサーの行動は「私はそこでそんなことしないけどアーサーがそうなっちゃうのは理解できる」のです。


もうひとつ。感情移入するにしても、どのキャラクターに軸足を置いて見るか、という問題もあります。
現在の日本(そして世界)の状況は少しは知っているつもりですので、アーサーの境遇をある程度のリアリティを持って共感することはできます。しかし、実際の私は普通に仕事をしている一般庶民で、アーサーのような苦しい環境ではありません(「独り者」は一緒だけど)。ですので、ウェイン側の視点も持っているのです。会社の従業員が殺されたら悲しいし、その犯人は許せない。その犯人を擁護する人たちも認めるわけにはいかない。そりゃそうだ。
どの視点・軸足で見るかによって正義の軸はぶれていく。


最後に、冒頭に書いた全体感想に戻る。
この作品はフィクションであり、世界をゴッサムシティにするためのプロパガンダではない。万が一この作品に影響を受けて何か悪いことをする人が出ても、それはこの作品のせいではない。フィクションというリテラシーを持っていないその個人の問題です。
しかし、そんな当たり前のことすら危惧してしまうほどこの作品は「強い」。途中に書いたようにアーサーの行動は共感・同情できるものではありません。それでも、この作品の「強さ」によってディテールが見えなくなり、「簡単で素直で間違った影響」を受ける人が出るのではないかと心配してしまいます。
だってこの作品、どのショットも美しくてどの場面もポスターにできちゃうレベル。ホアキンの演技だけでなく美術も照明も素晴らしくて、「(悲しいのに)美しい」に見えちゃうのです。素晴らしくて、よくないぞ。


この作品が大ヒットしているのはいいことなのか。「ブレイクとはバカに見つかること」(©有吉弘行)なので、変な人が変なことをしてこの作品に泥を塗ることのないように願います。


あと、皆さんが書いている通り『タクシードライバー』と『キングオブコメディ』は見ておいた方がいい。トラヴィスゴッサムシティで『キングオブコメディ』の世界にいたらジョーカーになっちゃうという話だから。そしてデ・ニーロの起用もその意図が分かる。


映画ポスター ジョーカー 2019 Joker DC US版 hi2

映画ポスター ジョーカー 2019 Joker DC US版 hi2

RHYMESTER47都道府県ツアー@松本 に行ってきました! 感想

優勝!!


RHYMESTER47都道府県ツアーの29本目、松本公演に行ってきました。
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私、このツアーは初日の千葉と新潟に行っていて今回で3本目。年始の飲みーティングと5月の人間交差点フェスにも行っているのでなかなかのライムス三昧。しかし上には上がいてもう二桁公演行っている人もいるんだろうなー。
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結構埋まってきたぞ。
過去の公演レポはこちら。
ese.hatenablog.com
ese.hatenablog.com


今回のツアーは「巡行セット(過去→現在)」と「逆行セット(現在→過去)」の2パターンがあり、今回は新潟で見た巡行セットでした。しかし、MCはもちろん違うし曲目だって入れ替えてくる。いつどこで見ても新鮮に楽しめるのがRHYMESTERのライブです。


会場は松本ALECX。
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ここは上手の後ろ側に柱があって、後ろの人は確実に半分見えない。かわいそう。宇多丸さんが何度もそちらに向かって声かけたりアクションしたりでとても優しかったです。気遣いの男。


オープニング、JINさん登場。ターンテーブルにヴァイナルをセットし、音を出す。既にポージング・フェイシングが出来上がっている!
『20世紀~開け心~』で「RHYMESTERがライブしにやってきた。どこに来た?」「松本~!」と熱いコール&レスポンスを交わし、『耳ヲ貸スベキ』『B-BOYイズム』『R.E.S.P.E.C.T』日本語ラップクラシックで当たり前のように盛り上がり、最初のMC。
この公演は早々にソールドアウト。今日はこのツアー初のカメラ入り。松本でのライブは2002年以来17年ぶり。当時も大入りだったけど実はイベンターがキャパ以上にチケット売ってしまったらしい。あと何言っていたかなー。もう覚えてない。
あ!来年のことをちょっと言っていた。でもまだ情報解禁前なので書かない。
あと、私この日のライブを聴きながら気づいてしまったのですが、『耳ヲ貸スベキ』って、文字通り「耳を貸すべき」と、「耳犯すべき」が掛かっているのですか?どなたか教えてください!


『ウワサの真相』に続いて『肉体関係 part2』。Dさんのファーストヴァースは「松本城の最上階の天守閣だった」になっていました!JINさんヴァースでは始まる前からポージング・フェイシングともに完璧。JINさん、どんどん出来上がってきている。
曲終わりの「放置プレイ」の20秒ほどの無音+照明オフ(ぼんやりとしたピンスポのみ)の後、MC。
宇多丸クレイジーケンバンドのお客さんは年齢も服装もバラバラで、ジャンルが分かんないの。ただみんな品がよくてセンスがいい。ああいうのに憧れてたんだけど、今のRHYMESTERのお客さん、そうなってるよね」
イエー!
Mummy-D「あ、そうだ。俺さ、今『肉体関係』を歌いながら思い出したことがあるんだけど、いい?」
2002年の前回の松本ライブのその前は1999年のリスペクトツアーのワンマン。さらにその前は伊那市のホテルの営業で、これがRHYMESTER初の地方営業だったそうです。そこで地元の金持ちのおじさん(が呼んだのかな?)に杜仲茶を宣伝しろと言われて「ライブの途中に、途中だけに杜仲茶」なんてやったそうです。地獄!


としばらくくだらなく面白い話の後、『ザ・グレート・アマチュアリズム』で再び爆発!『WE LOVE HIPHOPでは今日もスティーヴン・タイラーが降臨してくれました!
『オイ!』は今日も最初のフックのみ。全部聴きたいけど、アゲ曲続きすぎるから仕方ないのか。贅沢な悩み!
『ONCE AGAIN』なんてライブで何十回も聴いているのに、今回のツアーでは毎回沁みる。この曲・このツアーがRHYMESTERの歴史を語っているからだ。


ここまで熱いライブで盛り上がり、熱い解説で暑苦しかったので、ここらで一休み。JINさんコーナー「カフェやまもと」です。
今回は新潟公演でもやった「長野は中部地方か否か問題」。長野県民の答えは
「俺らマジで中部地方:薄っすーい返答(Dさん曰く「4人だな」)」
「俺たち信州、信のみだぜ:熱い返答」
信のみって何だよ。甲信越とかじゃないのか。
トーク終わりにちゃんとした締めもなく「ありがとう!!」という大声とフェイシングで締めるJINさん。大きな声を出せばいいと思っている節があるな。


ライブへ戻る。『POP LIFE』でチルしながら盛り上げ、『The Choice Is Yours』で再び火を点ける。
MCで『Walk This Way』のMVを霧ヶ峰で撮影したことを思い出すDさん(Dさん、あれだけ熱いラップしながら、よく記憶の扉開ける余裕があるな)。
宇「あそこ最高だったね。あれで確信したよ、夏に海に行くヤツはバカ」
D「高原に輩はいません」
宇「輩は暑くて酒飲んで酩酊してあわよくば交尾を狙ってるからね」
宇多丸さん、相変わらず極端な結論。
そしてスキーの話。学生時代(ギャラクシーのスキー合宿なのかな?)にほぼスキー初心者だった宇多丸さんは初心者向けと騙されてリフトに乗せられ、山頂まで。何度も転びながらもすぐに立ち上がって滑る宇多丸さん(当時は士郎さんか?)の姿に感動するDさん。滑りながら転びながらずーっとしゃべり続け文句言い続けた宇多丸さんでした。


ライブはもう終盤。あー、終わって欲しくないぜ。『マイクロフォン』とそのアンサーソングにもなっている『スタイル・ウォーズ』
RHYMESTER30周年の歩みはついに現在まで来てしまったので、ラストはレジェンドの現在進行形をお見せしよう!
『Back & Forth』の「見れば分かる」の掛け合いのすごさ、そしてファンキーなトラックと途中のバックトラックがオフになる瞬間、どこを取っても盛り上がる機能しかない。この曲、『B-BOYイズム』『ザ・グレート・アマチュアリズム』に並ぶライブのピークを作るキラーチューンですよ。
さらに『Future Is Born』『待ってろ今から本気出す!』と来たら感動と高揚と滂沱と失禁と勃起と射精が同時に訪れるわけですよ。
『Future Is Born』の名曲っぷりは言わずもがなですが、『待ってろ今から本気出す!』の機能性ってすごくない?曲自体のアゲアゲさと、リリックのオラオラさと、お客の参加度の多さと濃さ。これもライブピーク曲ですよ。


ここで本編終了。アンコール待ちは「帰りたっくない」「フワフワ」コール。私はフワフワを担当。何やら最近はサカマ・ササキ・ヤマモトパターンもあるらしいですね。それも体験してみたい!
戻ってきた3人はグッズの紹介。宇多丸さんがしゃべっている間にDさんはJINさんブースからアナログレコードのジャケットで会場を仰いでくれました。優しい!
宇「松本、すげーな。どうした?」
D「キョードー北陸のイベンターの人も『おかしいですね、何でですかね』って言ってたよ。失礼だな!」


アンコールは『梯子酒』。長野の人は何飲むの?ってことで「大雪渓(長野の地酒です)」「そば湯」「杜仲茶」「りんごジュース」を入れ込んだ長野特別バージョン。上手くはまったし盛り上がった!
本当のラストは『ラストヴァース』。この曲エモ過ぎて演歌みたいだなと思っているのですが、これだけ盛り上がったライブのラストにはハマりすぎる。


終わってしまいました。いつものようにハイタッチしたところでDさんが「今日はやってもいいんじゃない?この出来は」ということで急遽一丁締めをみんなでご唱和。いやー、それくらい盛り上がりましたよ。Dさんから「優勝!」の言葉もいただきましたよ。
基本的な流れは新潟と同じですが、ラストの『マイクロフォン』以降の固め打ちにやられた!(新潟は途中『梯子酒』が入ったのでちょっと熱が途切れた)
あと、新潟より暑さがツラくなかったのもよかったです。MCの最中、後ろの扉を開けてくれていたようで、暑さもほどほど(それでもTシャツびっちょびちょになったけど!)で酸素も供給され、酸欠にならずに最後まではしゃぎ叫び続けることができました。


いやー、よかった。同じツアーに3回も行っているのに毎回よくて、3回目がいちばんいいなんてどういうことなんだ。ライブは生もの。演者とお客の相乗効果。キングオブステージとキングオブ客席によって素晴らしいライブは作られる。
優勝!!


1.20世紀~開け心(フックだけ)
2.耳ヲ貸スベキ
3.B-BOYイズム
4.R.E.S.P.E.C.T
5.ウワサの真相
6.肉体関係 part2
7.ザ・グレート・アマチュアリズム
8.WE LOVE HIPHOP
9.オイ!(最初のフックのみ)
10.ONCE AGAIN
11.POP LIFE
12.The Choice Is Yours
13.マイクロフォン
14.スタイル・ウォーズ
15.Back & Forth
16.Future Is Born
17.待ってろ今から本気出す!
~アンコール~
19.梯子酒
20.ラストヴァース


2019年9月ツイートまとめ(その2)