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RHYMESTER「Open The Window」感想

惚れた弱み


RHYMESTERのNEWアルバム「Open The Window」を聴きました。仕事が忙しくて平日は聴く時間がなかく土曜日にようやく聴きまして、感想は以下に書きますが、ネットでは評判悪いですな。
そういう情報を目にしちゃうとつい引きずられちゃうので嫌だなーと思っていたのですが、25日(日)にインストアライブに行ってきまして、そこで新曲を生で聴いたら「やっぱいいな!」と思ってしまいました。私はチョロい男です。


そもそも、6年ぶりのアルバムで途中散発的に新曲を発表してきたものをまとめれば、そりゃとっ散らかったものになる。楽曲のテイストも音像も歌詞のテーマも。
※そう思うと、椎名林檎は毎回すごいなー。シングル単体でいい曲&違う曲を出しつつ、アルバムにまとめるとトータルカラーが統一されている。さらに楽曲タイトルも実はアルバムコンセプトに合致している(文字数までも!)。すごいなー。
それだったら、過去の楽曲はコラボが多いんだから思い切って「ベストバウト2的なもの」として別のアウトプットで出し、オリジナルアルバムはRHYMESTER単独(もしくは厳選コラボ)でやるべきだったのではないかなー、と思うのです。
まあ、「アルバム」とは「記録」のことなので、そのときの記録をまとめたものでも間違いはないのですが、それでいいものができていると本気で思ってる?ってことです。


これまで、RHYMESTERは「アルバム」としての意味を持った作品を出してきました。
「ウワサの真相」はメジャー1発目なのであまり独自の色はありませんが、「グレイゾーン」は「ウワサの伴奏」のカウンターとして「3人のみでやる!」という縛り、そして「俺たちのやっているHIPHOPアメリカの翻訳じゃない」というテーマがありました。
「HEAT ISLAND」はこれまた前作の反動で「ごった煮パーティー地獄!」な印象のアルバムでした。
活動再開後の「マニフェスト」は、活動再開にあたり「より強くなった俺たちを見ろ」「やっぱりHIPHOPはカッコいい」という宣言でもありました。
「POP LIFE」は「既にラップは日常生活の一つ」であり、大上段に構えた楽曲は控えめでした。
「ダーティーサイエンス」はきったない音像と荒々しいトラックで、まさにダーティーなサイエンスにより出来上がった作品でした。
「Bitter, Sweet & Beautiful」は、「美しく生きること、それが世界のおかしな流れに抗うことだ」というテーマで、アゲ曲は少なく説教臭いアルバムになりました。
前作「ダンサブル」はタイトル通り「踊る」「リズム」に焦点を当てたアルバムでした。


このように、RHYMESTERのアルバムは基本前作からの反動で逆ベクトルに振り切ったものになり、振り切った先で極端な表現をすることで、新しくエッジの効いた作品を生み出してきました。
それが、6年という年月とコロナ禍により「前作からの反動」が利かなくなっていました。その結果、ただまとめただけというアルバムカラーもコンセプトも何もない、ぼんやりとした「作品集」が世に放たれました。ちーがーうだろー。


まあ、既発曲を全部入れて新曲3曲だけ、って時点でフレッシュさもワクワク感もないのは目に見えていましたが、実際聴いてみるとやっぱりフレッシュさもワクワク感も感じにくいよねえ。
以下、全曲感想。


1.After6
この曲は好きですが、2018年の曲なのでフレッシュさはないよねー。
都会っぽいオシャレなシンセサウンドはよい。


2.My Runway
新曲3曲の中でいちばんよい!4つ打ちビートのリズムが気持ちいいし、Reiさんの声もギターもよい。サビの「スーパースター」のメロディ、Dさんじゃ書けなかったメロディだな。サビはRHYMESTERもっと引っ込んでReiさんにもっと歌ってほしかった。あと、アウトロもっと長くしてReiさんのギターソロをたくさん聴かせてほしかったなー。
でも、いい曲。ライブで盛り上がる。やっぱり4つ打ちは強い。


3.Open The Window
ナルバリッチは毎回同じ曲、同じメロディだな。
いい曲なんだけど、何だかピンとこないんだよなー。「Hands」のような説教臭さがあるからかな?「911エブリディ」や「いのちのねだん」などでRHYMESTERは何度も戦争の曲を歌ってきたのにな。
リリックは、JQの部分がいちばんいいですね。「頬をかすめてったPain」「それでも世界は進めのサイン」。こういう抽象的だからこそ広く意味を持つ言葉は、やはりメロディがあると強いですね。倍音のように意味とイメージが広がっていく。
この曲でいちばん好きでないフレーズは「Stop the war」「No more war」の部分。
「戦争反対」なんて、誰でも言う手垢のつきまくった言葉。そんなのプーチンだって言うよ。「戦争を止めるべきだ。だからウクライナは早く降伏しろ」って。なので、「戦争反対」なんて言葉は今や何の意味も効力もない。「どうやったら戦争に至らないか」を考えるのが政治であり外交です。50を過ぎたおっさんが中学生みたいなスローガンを叫んでいて、めっちゃ冷めました。


4.初恋の悪魔 -Dance With The Devil-
この曲はカッコいい。ジャズはカッコいい。
ソイルのメンバーが大麻で捕まっちゃいましたが、2月の武道館には出てくれますよね?少量の大麻で初犯なら、不起訴もしくは執行猶予ですよね?


5.世界、西原商会の世界! Part 2
こんなノベルティソング、西原商会の社員にCD-R配って終わりにしとけ。
どう考えても駄曲。アルバムに入れない勇気を持て。クオリティを保つ矜持を持て。
ライブでも全然聞きたくないのですが、西原商会がツアーのスポンサーになっているので毎回やるんだろうな。武道館でもやるんだろうな。記念すべき武道館ライブをこんな曲で時間を使うな。鹿児島だけにしとけ。
アートがカネに負けた証として記憶しておく。
(とはいえ、スタープレイヤーズの貴重なサポート主ですから、無下にするわけにもいかないですよね。大人の事情)


6.2000なんちゃら宇宙の旅
こんなの入れて、アルバムのカラー保てると思っているの?入れない勇気を持て。
個人的にはこれもライブでやらなくていいと思っているのですが、このアニメをきっかけにRHYMESTERファンになったり初めてライブに来たりする子がいるなら、やった方がいいか。
大人の優しさを見せよう。


7.予定は未定で。
私はレゲエが苦手なので「大好き!」とは言えませんが、いい曲ですよね。
ライブだと「ちょうどいい」「グラキャビ」のようないい緩衝材になると思われます。宇多丸さんのフローも好きよ。


8.マクガフィン
この曲はラップのスキル出しまくりのDさんヴァースが大好きなので、好き。でも、岡村ちゃん要素がもっとあってもいいのになーとも思っています。ReiやJQの曲と同じく、サビは歌手にもっと歌わせてほしいです。
キックの「住所」も岡村ちゃん不足。ラップと歌もののコラボだと、久保田利伸KREVAの「M☆A☆G☆I☆C」がちょうどいい塩梅だと思っています。


9.なめんなよ1989
hy4_4yhのイメージとタイトルから激しい曲を予想していたのですが、オシャレなピアノからスタート。トラックもファンキーでちょいジャジーでカッコいい。
この曲はRHYMESTER側は1989年の世界・社会情勢、グループ結成の頃を歌い、hy4_4yhは1989年生まれなので自分の半生を歌うという構成。これだと、「なめんなよ」というタイトルはあまり正しい気がしないのですが…。
この曲は「負けても負けねえ 死んでも死なねえ」がいちばんのパンチラインですね。次点は「土曜の夜のウイスキー瓶から誕生」「愛と気付かず愛され育った」。ライムスよりハイパヨちゃんの方がリリック強い!


10.Forever Young(ザキヤマ Remix)
この曲は好きなのですが、ザキヤマRemixになっているので、アルバムの中の正規の1曲として聴くのはちょっとツラい。1回2回はいいけど、5年後もずっとこれ聴いているのはツラい。スチャダラパー版を聴けばいいのか。シングルのカップリングでよかったのに。
発表時は2020年でしたが、今回のアルバム収録に合わせて、Boseの最初のリリックが「2023」に変わっているのがよい。芸が細かい。その分、韻踏まなくなっちゃったけど。


11.待ってろ今から本気出す
この曲も2019年1月ですから、だいぶ古い。2019年のツアーでも何度も聴きました。
それでも、やっぱりこの曲はライブで強い。オープニングでもラストでもどっちでも使える。


個人的には、「西原商会」と「2000なんちゃら」はカットしてほしかったなー。んで、「After6」「初恋の悪魔」「マクガフィン」という「大人のアーバンなHIPHOP」というアルバムカラーでほかの楽曲も作ればよかったのに。なんて素人の無い物ねだり。
本人たちもいろいろ考え、大人の事情も折り込み、収録になったんですよね。


今回のアルバムは、RHYMESTERパンチラインがないんですよね。ラップは言葉の音楽。これまで何度も「うまいこと言う」「その通りだな、自分も頑張ろう」「核心を突く」「RHYMESTERだから説得力がある」と感動してきたのに、本作ではまだそういうリリックに出会っていません。そこがちょっと残念。


もうひとつ。コロナの扱いについて。
コロナ禍は先の見えない状況だったのでなかなか言葉を紡ぎにくく、それを作品に落とし込むことは難しかったと思います。そのとき思ったことと作品を出すときに思っていることは違っていたかもしれないから。だから間が空いたんだ、と思っていました。
なのに、結局コロナのことは触れないままなのか。何のための6年だったのか。


なぜ6年も空いたのか。なぜRHYMESTERのアルバムとMummy-Dのソロアルバムが同じ年に出るのか。私の勝手な思い込みですが、宇多丸さんが忙しすぎるからではないかと思うのです。そのため作業が遅れ、DさんのソロとRHYMESTERのツアーがかぶってしまうようなことになったのでは。
毎日3時間の生放送を週に5日。もちろん放送のための打ち合わせや仕込みや取材もあるわけで、それだけで本業に相当影響ありますよね。
仕事、減らせませんかね。せめて金曜日はお休みするとか、できませんかね。
こういうことを言うと宇多丸さん本人は「全然大丈夫。自分が好きでやっているから」とか言ってくれると思うのですが、影響がないわけない。本業はラッパーですよ。本籍はRHYMESTERですよ。


そろそろまとめに入ろう。
今回のアルバムが残念な感じになったのは
・既発曲ばかりで新鮮さがない
・新曲のパワー不足
・ダメな楽曲を切れない弱さ
が主な要因だと思っています。なので、「西原商会」と「2000なんちゃら」を切ってRHYMESTERのみの強い楽曲が2曲でもあったら、だいぶ印象は違ったと思います。既発曲とのバランスも半々になるし。


とはいえ。
実はこの原稿は6/24(土)に書いてあって、校正やアップする時間がなかったため本日まで寝かせていました。そして6/25(日)にインストアライブに行って生で新曲を聴いたらやっぱり良くて、だいぶ書き直しをしてこの原稿になっています。
気持ちが少し離れかけていたのに、セックスしたらやっぱり好きで離れられない女子のよう。知らんけど。


つーわけで、ライブが楽しみになりました!川崎、新潟、大阪、武道館に行く予定です。初日の川崎はまさかの落選で「RHYMESTERのくせに落選とは」と愕然としていたのですが、運良くリセールをゲットできました。
7月から来年2月まで長いけど、その分楽しみも長くなる。数年ぶりに声出しもできるライブ、楽しみです!