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やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「インサイド・ヘッド」 感想

映画

私は、アニメをほとんど見ません。ガンダムエヴァも見ません。ジブリ作品は「ハウル」くらいまで。ディズニー作品はほぼゼロに近い。
しかし、先日「ズートピア」を見て「100点じゃないか!」と感動しながら驚きまして、もっと見てみようと思いレンタルしてきました。


これまた素晴らしい作品でした。
感情を擬人化するというアイデアと、それをストーリーに落とし込む技術。同時期に邦画で「脳内ポイズンベリー」がありましたが、そちらは見ていないのでどれくらい同じなのかは知りません。
ヨロコビ・カナシミ・イカリ・ムカムカ・ビビリという感情とその役割、そして現実世界のライリーという11歳の女の子とその家族の説明を7分少々で済ませ、本編スタート。上手い。


引っ越し先での生活。学校で友達と上手くやれるかな、以前の友達はどうしているかな、引っ越す原因となった父の新しい仕事は上手くいっていないらしい。11歳の世界では家と学校が全て。不安でいっぱいです。
脳内ではヨロコビがこの不安を解消しようといろいろ手を加えますが、カナシミが勝手に手を出すため上手くいったりいかなかったり。何でカナシミは勝手に動くんだ。最初見ているときはこのカナシミのウジウジにイライラするのです。ヨロコビがこんなに頑張っているのに!


しかし、見終わってからは全く違うことを思います。11歳の女の子だもん、そりゃ不安でいっぱいさ。いくらヨロコビが楽しいことばかりにしようとしても、不安定な心はマイナスの感情を発動させます。だからカナシミが勝手に動くのです。それは子供の頃のように目の前におもちゃを出されたらすぐ笑ってしまうような単純な心ではなくなってきているのです。それこそが成長であり思春期。


この物語は、「カナシミの必要性」がテーマです。もしくは「どの感情も必要なのだ」ということ。
物語の前半、眠って夢を見ているライリーに対しヨロコビは「明日も私が素晴らしい一日にするわ」と言います。他の感情と一緒に「私たち」ではなく「私」。そして翌日はカナシミに「あなたは何もしないで」とクギを刺しますが、それでもカナシミは勝手に行動してしまいます。
見ている私たちは「もう、何勝手に動いているんだ。お前がいるからマイナスの感情・行動になるじゃないか」と思うのです。
そしてヨロコビとカナシミが記憶の貯蔵庫に飛ばされて心の指令室に戻るというストーリーが始まります。


ここでも、見ている私たちはマイナス感情だらけのカナシミにイライラしながらストーリーに付き合います。ヨロコビはこんなにポジティブに頑張ろうとしているのに。
しかし。クライマックスで「喜びは、悲しいことがあったから喜びになるのだ」ということを気づかせます。ここが上手い。
ここで誰かが「喜びとは~」と語ってしまうとそれはテーマの「説明」になってしまいます。それを「ホッケーの試合で胴上げされている楽しい記憶」の前には「自分がシュートを外してしまい、そのせいで試合に負けてしまった悲しい記憶」があり、それを家族の慰めやチームメイトの胴上げにより楽しい記憶になっていたのです。このエピソードの紹介により、このテーマを語っているのです。「説明」でなく「表現」で。
同じように、悲しがっているビンボン(ライリーの幼い頃の空想のキャラクター)に対して、ヨロコビはあの手この手で楽しませようとしても上手くいきません。しかしカナシミがその気持ちに寄り添うことでビンボンは立ち直ります。カナシミは、悪いことばかりではないのです。


上手い。子供も大人も満足の出来です。
伏線→回収、フリ→オチも上手い。上記の喜びの記憶は前半に示しておいて→実はその前に悲しい出来事があったのだという事実の開示、古い記憶は徐々に消えていくというエピソードを出して→その後にビンボンの手が消えかけ→だから自分を犠牲にしてヨロコビを助けるという流れ。上手い。
ラストは「寂しかった」という悲しみの感情が結果的に家族をまとめます。カナシミがあってこそのヨロコビ。


本作ではライリー以外の頭の中も描かれます。ママはライリーと違って感情がはじけたりせず、井戸端会議のような感じで各感情が会議をしています。パパは家族と食事中でもサッカーのことを考えているので、急にママから振られてもちゃんと対応できず、とんちんかんな受け答えをします。男はいつまでも子供!思春期の男の子は女子に話しかけられただけで「女子だ!」とパニックになってしまいます。この辺は全世界共通なんですね。


何度も書きますが、上手い。この「全世代対応・全世界対応しながら面白い作品」って、どうやったら作れるのでしょう。誰が見ても面白いと感じるなんてことあるの?「ズートピア」でも思いましたが、ディズニー・ピクサーは天才だ。
シン・ゴジラ」もめちゃめちゃ面白かったですが、あれは五角形チャートでいえばいびつな形をしています。ある部分は点数は低いけどある部分は5億点。しかし、この作品はどこを切り取っても満点のきれいな五角形です。子供向けでも大人も面白い。大人の鑑賞に堪えうる内容なのに子供でも楽しめる。どうなっとる。


本作の原題は「インサイド・アウト」で「裏返し」という意味です。この方がこの作品のテーマをズバリ突いています。なのでこの「インサイド・ヘッド」という邦題に対して「改悪だ」という意見も見ましたが、私はそこまでは思いません。もし「インサイド・アウト」だった場合、日本ではそのままでは意味が伝わらないので、いちいち「これは『裏返し』という意味です」と伝えなければならない。子供も見るのにそんな効率悪いことしていられない。それに、その意味を伝えてしまうと見る前からテーマに気付いてしまいます。なので、私はこの邦題で良いと思っています。


また、劇場では本編開始前にドリカムの歌が流れて不快だという意見も見ましたが、DVDはそれはなかったのでよく分かりません。まあ、不快に思う人もいるのは理解できます。そのやり方がどうプラスになっているのかは分かりません。


最後に声優について。ヨロコビが竹内結子なのは分かりましたが、カナシミが大竹しのぶだったのは、本編を見ている最中は全く分かりませんでした!エンドロールで思い出した。そういえば公開時に二人でいろいろ宣伝してたな!大竹しのぶさん、声優でもすげえ!


いや、ディズニー・ピクサーはすげえや。もっと過去作見なきゃですね。



映画『インサイド・ヘッド』最新予告編