やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「愚行録」 感想

嫌な気持ちと嫌な映画は別物


映画『愚行録』を見てきました。公式サイト↓
gukoroku.jp
原作は読んでいません。


(以下、ネタバレあります)


本作は「イヤミス(読後感が嫌な気持ちになるミステリー小説)」の映像化と聞いていて、確かにその通りでしたが、湊かなえさんや真梨幸子さんの方がイヤミスだなーと思いました。やはり人間関係の悪い感情を描くのは女性の方が上手い。男性だと類型的で分かりやすい表現になってしまう。


面白かったです。映像的にはアクションもないし派手な惨殺場面もないし地味な絵面ですが、徐々に解きほぐされる被害者の素顔と妹の独白によりぐいぐいと見る側を引き込んでいきます。
エリートサラリーマンと美しい奥さんの評判も、別の人から話を聞くとまた違う印象になる。さらに別の人から聞くとまた違ったものに。人の印象や評価は主観的なもので、自分の見たいように見るし都合のいいように解釈する。妬みや僻みが相手の見え方を歪めてしまう。
そしてクライマックスの衝撃。おお、そうだったのか。おお、そんなことを。おお、そんなインモラルな秘密を。


本作を見た後に公式サイトを見たら「仕掛けられた3度の衝撃」とありました。
①一家殺人事件の犯人
②主人公田中が起こす殺人
③光子の子供の父親
ということですよね。


①一家殺人事件の犯人
犯人は田中(妻夫木聡)の妹光子(満島ひかり)でした。これは考えながら見ている人には分かったのでは。私は推理しながら見ないので、クライマックスでは素直に驚きました。
動機も、『怒り』の森山未來よりは納得できるものでした。ああ、もうあの子になるのは無理なんだ、という絶望。
この告白も、劇中では独り言として言っているのが上手い。精神的に不安定な表現であり世間にはまだ知られていない秘密の事実を映画を見ている私たちだけに伝える表現。上手い。


②主人公田中が起こす殺人
物語の後半、田中(妻夫木聡)は宮村(臼田あさ美)を殺します。ここびっくりした。突然どうした!
これは、妹を守るために一家殺人事件の犯人に近づいた宮村を殺したわけですが、私は映画を見ている最中はそのことに気が付きませんでした。
そう、そもそも田中がこの事件の調査をしたのは、事件の真相を知っている人はいないかを調べるためだったのです。これも気がつきませんでした。その後ネット徘徊で知りました。そうだったのかー。
つまり、田中は妹がこの事件の犯人ということを知っていたのですよね。その辺の描写はあったのかな?間接的に読み取れ、ということなのかな。原作を読んでいない人でも気づけるものなのかな?私がにぶいだけ?


③光子の子供の父親
田中ですね。
それにしても、父親から性的虐待を受けていた妹とそんな関係になるとは。いくら辛い子供時代で妹を守るために兄が父親に立ち向かったとはいえ、兄妹で一線を越えるのか…。ここが個人的には一番イヤミスでした。


役者の皆さんは素晴らしかったです。特に現在と大学時代(10年くらいの時代の変化がある)を演じた皆さんは素晴らしい。髪型等で変わるものですね。満島ひかりはこんなに変わらなくていいのかな?と思いましたが。
妻夫木聡(田中。週刊誌記者)
オープニングでお年寄りに席を譲れと強制された彼は足を引きずる演技をします。席を譲れと迫ったおっさんはバツが悪くなりますが、演技なのです。田中嫌な奴だな、という性格描写を一発で行う上手い表現。『ユージュアル・サスペクツ』のカイザー・ソゼかよ!
満島ひかり(光子。田中の妹)
無理して頑張っている大学時代は痛々しくて見るのが辛かったです。もちろん演技は文句なし。
途中出てくる無数の手は大学時代に弄ばれたトラウマの表現ですね。私は汁男優が多数出てくるAVを思い出してしましました。汚れた心。
小出恵介(田向。被害者)
明るく利己的な男。見ようによっては嫌な奴だけど、利用できるものは利用する素直で正直な奴ともいえる。この憎めないズルさは小出君っぽいな、と思いました。いや、これは小出君がそういう人ということではなく、小出君に明るく言われたらいろいろ納得してしまうなーと思ったのです。
松本若菜(友季恵。被害者田向の妻)
劇中、あーこの顔見たことあるけど名前出てこないーと思いながら見ていました。でもエンドロールで名前見てもピンときませんでした。ウィキ見てもどれもピンとこない。何となく見たことあるだけなのか。
天真爛漫で純粋・純真らしくてでもしたたかな女性。女子アナのような女性のヒエラルキーの頂点です。かわいいは正義
彼女は光子を複数の男に紹介して「公衆便所」のように扱わせていたのですが、そこまでする動機は分からないなー。
臼田あさ美(宮村。友季恵・光子の同級生)
大学時代は首にチョーカー付けているファッション。こいつはメンヘラくせえ。途中で彼氏に突撃したり彼を奪った女(友季恵)にビンタ食らわせたりと案の定メンヘラっぷりを発揮。しかし友季恵は泣き叫ぶわけでもなくビンタをお返し。こっちの方が怖い!
ラストで田中に殴り殺されるのですが、殴られる瞬間の演技は当たっている感じがあまりしなかったなー。
市川由衣(稲村。田向の元カノ)
女は怖いなー。
中村倫也(尾形。宮村の元カレ)
彼の大学時代と現在の変わりっぷりがいちばん上手かった。前髪とヒゲでこんなに変わるのね。そして、演技も自然で上手いなー。
私は普段テレビドラマを全く見ないので彼のことは何も知らないのですが、ウィキ見たらドラマだけでなく映画も舞台もたくさん出ているのね。そして画像検索するとどれも顔が違う。まだ30歳なのでこれからさらに人気者になりそう。
眞島秀和(渡辺。田向の職場の同期)
彼のことも知らなかったです。関西弁でしたが、山形出身なのですね。私は関西弁ではないので気になりません(というか上手いと思った)でしたが、関西の方が見たらこの関西弁はどうだったのでしょうか。
逆ハニートラップみたいなことする悪い奴。この女優さんの名前を知りたいのですが、どなたでしょう。演技であんな猫なで声を出しているのか、素なのか。ああいう声苦手。


この作品は『愚行録』なので、文字通り人の愚行が描かれています。それは光子の一家惨殺であり田中の殺人であり。しかしそれだけではなく彼ら兄妹の両親もひどい親だし、他人のことを好き勝手言う周りの人たちもちょっと悪いです。
特に田中が話を聞きに行った被害者周辺の人たちは「ちょっと悪い」のですが、これは普段の私たちでも十分ありえることで、この行動や考え方だけで「悪い」とは言えないと思います。この微量な悪意や妬みがバランスを崩すと悲劇を生んでしまうのでしょうか。


分からなかったことがあります。
エンディングで田中は妊婦に席を譲ります。オープニングとの対比ですが、これはどういう意味なのでしょうか。席を譲る/譲らないという対比なのか、相手が妊婦だからということなのか。そしてその意味も。
また、上にも書きましたが友季恵が光子に男を紹介する理由が分かりません。そこまでひどいことをする理由があるのでしょうか。
どなたか、教えてください。


あと、少しツッコミを。
これだけ大変だった子供時代を過ごしたのに、光子はよく大学に行けたな。奨学金なのかな?
また、ラストで宮村を殺した田中は他人(尾形)の吸い殻を現場に残して誤認逮捕をさせるのですが、そんなに上手くいくかな?アリバイもあるだろうし防犯カメラもある。こんな小細工警察には通用しないと思うのですが。


でも、面白かったです。見終わった後は気分爽快にはなりませんが、その気持ちと映画の評価は別のもの。嫌な気持ちになりながら、映画は高評価。
内容分かった状態でもう一度見たい。


愚行録 (創元推理文庫)

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映画 『愚行録』予告編【HD】2017年2月18日公開
この作品↑では兄妹なのに、この作品↓では殺人犯と被害者。

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「人間交差点フェス2017」 その交わりとつながり(その1)

予習用にどうぞ


今年も5月14日(日)に『人間交差点フェス2017』が開催されます。祝!
公式サイト↓
www.nkfes.com
毎年出演者とRHYMESTERのつながりを書いているので、今年も書きます。いつもは全出演者が決定してから書くのですが、それだとボリュームが大きくなりすぎるので、今年は分けて書くことにしました。
過去のエントリ↓
ese.hatenablog.com
ese.hatenablog.com


ANARCHY
うむむ、いきなりあまり知らないです。名前はもちろん知っていますが、音源は聴いたことありません。ハードコアアンダーグラウンドのラッパーというイメージだったのに映画『HiGH&LOW THE MOVIE』に出るのかー、と思いました。それくらいの知識です。
なので、もちろんRHYMESTERとのつながりも分かりません。コラボで曲を作ったこともないしな。
というわけで書くことがない。誰か詳しい方、補足お願いします。
今現在、世間でいちばん知られているのはこの曲じゃないでしょうか。
www.youtube.com
フリースタイルダンジョン』を見ていると流れるCMです。これはカッコいい。リミックスでのカットの仕方もカッコいいし、リリックビデオとして歌詞が出るのもカッコいい。
フェス当日はRHYMESTERと何か絡みあるのかな?


Base Ball Bear
ベボベです。フロントマンの小出さんは以前からライムスファンを公言しておりまして、2013年にはコラボ曲を出しています。
www.youtube.com
これ、好き。ヒップホップの人とのコラボでよくある「平歌ラップ、サビメロディ」ではなく、双方が絡み合った構成。
MVのワンカット撮影もカッコいい。
彼らはギターロックバンドとして若者に人気があるので、ここから若いファンを獲得しよう。


クレイジーケンバンド
タイガー&ドラゴン』の「俺の話を聞け!」が世間的にはいちばん有名だと思いますが、彼らとRHYMESTERのつながりは古いです。2002年に『肉体関係 part 2 逆featuring クレイジーケンバンド』でコラボ。その後も何度かライブにゲスト出演してくれました。「R20」というイベントのときなんて開会宣言だけのために来てくれたこともありました。
www.youtube.com
また、メンバーの小野瀬さんは2011年のミニアルバム『フラッシュバック、夏』に収録されている『サマーアンセム』という虚構でギターを弾いてくれています。
www.youtube.com
そして、追加!この曲があったのを忘れていた!くまたろうさん、ありがとうございました。
www.youtube.com
上の2曲はRHYMESTERのステージで、こっちはCKBでやるのかなー。


KIRINJI
こういうバンドともつながりがあるのがRHYMESTERの強み。まさに全方位外交。
おしゃれシティポップのイメージのある彼らがまさかヒップホップグループとコラボするとは。
www.youtube.com
私、兄弟が分かれた(別れたとは書きたくない)後のキリンジを知らないのです。音源もチェックしていません。なので、こちらもあまり語れません。どなたか補足を!


以上、第一弾のメンツでした。
2年前、初めてこのフェスの開催を聞いたときは「人間交差点って名前ダサくね?」と思ったのですが、もう馴染みました。それどころかこういうフェス・こういうメンツこそが人間交差点だよなーと思うようになりました。
ヒップホップというある種固有のジャンルなのに、あらゆるジャンルとつながりを持つRHYMESTERは、日本語HIPHOPのパイオニアでありつつ現代のカルチャーを大きくつなげる存在です。
Zeebraが日本語HIPHOPを『フリースタイルダンジョン』『B-BOY PARK』というやり方で広めようとしているのに対し、RHYMESTERは他ジャンルの音楽・他分野のカルチャーとつながって広めようとしています。どちらが正しいとか正解はありません。いろいろな方法で外へ、世間へ広がってほしいです。


さて、第二弾以降のメンツ予想。
スキマスイッチ
彼らのセルフカバーアルバムでコラボしており、彼らのツアーにも参加しているのだから、お返しの出演もあるでしょう。本命。
Creepy Nuts
昨年はオープニングアクトだった彼らですが、この1年で世間の認知度も含めて成長しました。『タマフル』に『水曜The NIGHT』に出演した彼らが出ないわけがない。彼らのツアーがあるので、情報解禁しないだけだとにらんでいます。これも本命。
●SKY-HI
彼も出るはず。若手ラッパーのフックアップも先輩の大事な仕事。対抗。
サイプレス上野とロベルト吉野
去年も出たし今『水曜The NIGHT』で宇多丸さんと一緒に出演しているので、今年も出る予想。対抗。
●DANCE EARTH PARTY
EXILEのUSAなどがいる音楽ダンスユニット。ここにMummy-Dが参加した曲があるので、これ、来そうじゃない?大穴。
●PUNPEE
RHYMESTERはPUNPEEが大好きなので、今年も呼んでくれそう。穴。
藤井隆
最近音楽活動に力を入れている藤井さん。『タマフル』でも歌手として特集されたりゲストで呼んでもらったりしているので、十分可能性はあるぞ。大穴。
●ドラマ『カルテット』のメンバー4人、もしくは椎名林檎
これはさすがにないと思っていますが、書くのは自由だ。主役を食ってしまうから無理かなー。超大穴。


他いないか!昨年はオープニングアクト含めて12組出ていたので、もっと出るはず。
去年のリップ・ゴスペラーズ、一昨年のキングギドラスチャダラパークラスの人たちは出ないかな。まあ、KREVAのことなんですが。


また新たなメンツが発表されたら書きます。
行こうか迷っているあなた、行きましょう。迷っているということは少しは興味があるんでしょ?じゃあ行きましょう。
会場はリストバンドをしていれば出入り自由。ビーナスフォートなどにも行けますので、疲れたら冷房の効いた室内で休むことも可能です。
しかも、小学生以下は親同伴で無料ですよ、無料。小学生以下ということは、小学6年生も無料なんですよ。会場内には子供が遊べるスペースもあるので(保育士さん的な人がいるか不明)、そこに預けて親はライブに熱狂、ということもできます。
こんなに自由でホスピタリティも充実したフェス、なかなかないですよ。
そして、ヒップホップのフェスだから怖い輩が多いのではと心配しているあなた、ご安心ください。主催がRHYMESTERなので、そんな輩はいません。普通の音楽フェスと変わらない客層です。


どうですか。行かない理由は何もないでしょ。行って楽しみましょう!


<追記>
その2、その3書きました。私の予想ひとつも当たっていませんでしたな。
ese.hatenablog.com
ese.hatenablog.com


人間交差点 / Still Chainging

人間交差点 / Still Chainging

映画「クリーピー 偽りの隣人」 感想

ワールドに引き込め


映画『クリーピー 偽りの隣人』を見ました。公式サイト↓
creepy.asmik-ace.co.jp
(以下、ネタバレあります)


ネットで評判を見ると、賛否両論ですね。「ありえない・辻褄が合わない」「警察無能すぎ」など。確かにその通りです。でも、私は面白いと感じました。


私は黒沢清監督作品をほとんど見ていないのですが、それでもこの監督の記名性は分かります。光と影、明るさと暗さ、そよぐ風、じっとりと舐め回す長回しのカメラ。黒沢清だなー。
なので、そういう「黒沢清ワールド」の中で楽しんだので、リアリティの部分は気にならなかったです。いや、もちろん気にはなりましたが、この作品においてリアリティの追及は重要視しなくていいと思うのです。


私は、映画は「キャラクターが大事」「動機・行動原理が大事」だと思っています。その登場人物は生きているか、その人は本当にそんなセリフを言うのか、そんな行動をするのか。
で、本作の香川照之。生きている!いてほしくないけど、いる!わざとオーバーアクト気味に演じているのでしょうが、「何だかよくわからない気持ち悪さ」「絶妙な会話のできなさ」が画面の向こうから滲み出していました。
なので、ありえない展開もあまり気にならなかったのです。この人、この作品の中にいるから。


香川照之は「どうせ演技すごいんでしょ」と思っていたらやはり十分すごくて、彼に隠れてしまうのですが、実は竹内結子がとてもよかったです。
夫(西島秀俊)に隠れて電話をしていたことを問い詰められたときのキレた言い方、徐々にダウナーになっていく様、愛犬を殺されそうになっても抵抗できない様(顔を伏せて耳をふさぐだけ。直接的に香川照之の行動を止めることはしない)、そしてラストの号泣・慟哭。素晴らしかったです。


その分、西島秀俊は物足りなかったなー。日常から非日常へと変わっていく様子があまり表現できていなかったように思いました。刑事であり教授であるくせに結局お前がいちばん分かっていない、という役回りなのでこれでいいのかな。


あと、この夫婦は「実は最初から破たんしていた」ということなのですが、その辺をもっとほのめかしてほしかったです。ちょっとした祖語とかすれ違いとか。
ついでに言うと、セリフがぎこちない。セリフっぽいセリフだなーと思うところがいくつかありました。先日『紙の月』を見たのですが、これは原作が女性作家なので、気づく細かさやそれを表現するセリフの言葉遣いなどが「上手いなー。さすが作家、さすが女性」と思ったので、余計気になりました。


警察無能すぎ問題は、もう少し何とかしてもらいたかったです。取り調べ中に簡単に逃がしすぎ。容疑者の家に単身乗り込みすぎ。
この辺をもう少しリアリティのある展開にしてくれれば、世間の評価も違ったと思うので、残念。


この作品は原作があって、私は未読なのですが、もともとは北九州で起きた監禁事件が元ネタのようです。
北九州監禁殺人事件 - Wikipedia
matome.naver.jp
概要を読むだけで震える。というか、怖すぎて最後まで読めない。人間はこんな非道いことができるのか。そして人間の心はこんなに簡単に壊れるのか。あー、怖い。


であれば、「打たれるとダウナーになり香川照之に従うようになる薬」なんかに頼らず、マインドコントロールで周りの人間を破壊・篭絡してほしかったです。そうであってこそ「香川照之怖い」になるので。
また、同じように娘に母親を銃で殺す場面も、香川照之本人に撃たせるのではなく、娘に説得だけで撃たせるべき。自分では何もしてないけど凶悪なことをやっている、という怪物なのだから。


フィクションは「ウソ」なので、それを「ホント」だと納得させる説得力が必要です。そのための設定であったりディテールであったりセリフであったり演技であったりするわけですが、それがこの作品では「黒沢清ワールド」という異世界に招くことで実現していました。
お話はほころびがいくつもありますが、役者の皆さんの好演・怪演により説得力を持たせ、ほころびや辻褄を感じさせない出来でした。
そして何より、黒沢清ワールドに引きずり込めば何が起きてもアリに思えてしまう黒沢力というかブランド力のすごさを再確認。賛否両論があるように特大ヒットする作品ではありませんが、ファンは満足の一本でした。


クリーピー 偽りの隣人[Blu-ray]

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消された一家―北九州・連続監禁殺人事件

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消された一家―北九州・連続監禁殺人事件―

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クリーピー (光文社文庫)

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クリーピー (光文社文庫)

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映画「マグニフィセント・セブン」 感想

真の主役は谷間


映画『マグニフィセント・セブン』を見てきました。公式サイト↓
www.magnificent7.jp
公開してまだそんな経っていないのに私の近所の(といっても車で1時間半かかる)映画館では朝イチと深夜の2回しか上映していなかったので、早起きして見に行きました。ちょうど『相棒』公開初日だったので映画館は混んでいましたが、本作は私を含めて8人しかお客はいませんでした。そりゃこんな上映時間・回数にされちゃうわ。


本作は、言うまでもなく『七人の侍』『荒野の七人』のリメイクです。一応本作を見る前にどちらも予習してきました。
で、本作を見終わっての感想は
七人の侍>荒野の七人>マグニフィセント・セブン
です。


お話は古典中の古典。悪い奴がいて、苦しめられる人がいて、それを助ける人がいる。勧善懲悪でありチームものであり活劇である。
その王道を分かりやすく見せるために、オープニングでの悪徳実業家ボーグの悪行三昧。何と分かりやすい「こいつが悪者!」表現。清々しい。


そしてお次はこの悪者を倒してくれる勇者探し。ここが私の残念ポイント。
まず、村の総意で勇者を探すことになったというくだりがない。中盤で村に7人が来たときの対応も「勇者様待っていました歓迎です感」がない。
また、集まる勇者たちの動機が不明瞭。特にリーダーであるチザムは過去2作にあった「義を見てせざるは勇無きなり」の部分が見えなかったです。まあ、見えなかったというか実際の動機は違うものでしたから仕方ないのか。その他のメンバーも、義でもお金でもいいのですが、もう少し動機が明確だとよかったなー。


仲間になる7人は、人種が様々ということもあり、過去2作に比べてキャラ立ちしていましたね。
①チザム(デンゼル・ワシントン):リーダー
②ファラデー(クリス・プラット):明るい、モテ男、手品上手い
③グッドナイト・ロビショー(イーサン・ホーク):南北戦争PTSD負っています
④ジャック・ホーン(ヴィンセント・ドノフリオ):熊のような大男
⑤ビリー・ロックス(イ・ビョンホン):ナイフの達人
⑥ヴァスケス(マヌエル・ルルシア=ルルフォ):メキシコ人
⑦レッド・ハーベスト(マーティン・センズメアー):ネイティブ・アメリカン


村に着いて村人と仲良くなったり防御法を練ったりするのも何だかあっさりしていましたね。まあ、『七人の侍』がこの辺をしっかり描けたのは207分という反則な上映時間があったからですが。


そしていよいよ戦闘開始!
村は、爆薬も弾薬もいっぱい持っているのか。結構豊かな村なのね。本作は困窮の村ではなく金の採掘所のある村ですからね。
と、序盤は物量作戦で戦いを優位に進めた村人勢ですが、途中でガトリング砲炸裂!おお、これは見た目にも分かりやすい強力な武器。これでロビショーもビリーも命を落とします。最期はかっこつけさせてやりたかったなあ。
ジャックは、矢が何本刺さってもなかなか死なない大男っぷりを見せてくれました。まるで『北斗の拳』の山のフドウです。
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そしてファラデーは銃撃を何発も撃たれてもなかなか死なない準主役っぷりを見せてくれました。『太陽にほえろ』のジーパンです。
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どちらも素晴らしい死にざまでしたが、メインキャラは何回かやられないと死なないというのはずるいな。こういうお話なのでいいけど。


そしていよいよラスボスボーグに対するのはもちろんリーダーチザム。何とここでチザムはボーグに対する私怨があったことを告白。えー、義ではなく、個人的な復讐なのかよー!この物語の根本がぐらつく動機でした。
いや、私怨も十分な動機なのでいいのですが、それなら最初に言ってよ。もしくは義を全面に出さず、私怨を少し匂わすとかさ。
ボーグ一味を倒したら即撤収。あっさりしているな!
ラストの『荒野の七人』のテーマソングは熱くなったけど、それは本作の手柄じゃない。


というわけで、動機の部分が弱くてそこがイマイチでした。もっと村が困らないと、もっと村の窮乏に発奮しないと、もっと村は勇者を待ち焦がれていないと、せっかく悪役を分かりやすく仕立てたのにそれに対抗するベクトルが弱くなっちゃう。
とはいえ、そんなけなすような出来でもないです。まあまあ面白くて少しケチつけたいところもあって、という感想なのでなかなか書きにくい。


銃撃戦も素晴らしかったですが、本作のMVPはヘイリー・ベネットです!
オープニングから怯えながらもおっぱいはしっかり主張。その後も常に谷間とふくらみの存在感は健在で、「戦うならスカートではなくズボンを履きな」とは言われても「谷間を隠せ」とは言われない。だってみんなが望んでいるから。
ついでに、本作はどの町でも娼婦がいて、セクシーな女性が多くいたのですが、ここは今回の監督アントワーン・フークアのこだわりなのかな?


絶賛でも酷評でもなく、リメイクの意義もよく分からず、書きにくいなーと思っていたけど2,000字超えたのでこの辺でおしまいにします。



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三船敏郎の菊千代役の存在が欲しかったな。愛されキャラで勇者も村人も結び付ける存在。

今の世の中を窮屈に感じるのは私たちが「前の世代」だからなのか

消え去るのみ


最近、世の中が窮屈になっていると感じませんか?不倫は重大な悪事だし19歳がお酒飲んだり17歳とお付き合いをすると大ニュースだし線路で写真を撮ると書類送検と涙の会見まで必要だし。
でもこれは、みんながそう望むから叩かれるし話題になるわけですよね。


世の中は、よくなっているのか。
私は楽観主義者なので昨日より今日の方がいい世界になっていると思っています。世界中の人が「より便利に」「より快適に」と思って様々な製品やサービスを開発していきました。今、スマホのない生活なんて考えられない。動画を見ることができるとか電話もメールもできるとかもそうですが、電車の乗り換えとか分からないことをすぐ調べることができるようになったとか、本当になくてはならないツールです。
もちろんスマホに限らず、ITの発展は世の中を飛躍的に便利にしてくれました。問題やデメリットもありますが、メリットの方が何倍も大きい。IT革命は、本当に私たちの社会や生活を変革しました。


殺人事件も交通事故の死者も減っています。みんなが大好き『三丁目の夕日』の頃がいちばん治安悪かった時代です。
www.jicobengo.com
http://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h28kou_haku/pdf/zenbun/h27-1-1-1-2.pdf
www.pepsinogen.blog
togetter.com
worldgoodnews.net
そして、マナーやモラルもよくなっています。タバコの吸い殻も道路のゴミも、昔と比べれば激減しています。おっさんがそこらじゅうで痰を吐いたり立小便をしたりする姿もめったに見なくなりました。セクハラ・パワハラなどの職場環境も改善されています。


もちろんブラック企業クレーマーなど、問題もたくさんあります。それでも、トータルではよい社会になってきていると私は思うのです。
世の中はよくなっています。ただ、昔と同じ価値観のおっさんが今の価値観に対応できていないので「今は窮屈だ」とごねるのです。


翻って、自分はどうだろう。世の中はよくなっていると思いながら、窮屈だとも思っています。
外で立小便をするおっさんや卑猥な言葉を女性に投げかけるおっさんは不要だし、まだそんなことをしている人がいたら眉をひそめます。今はそういう人がほとんどいなくなってよかったと思っています。
しかし、冒頭に書いたような最近の世の中の流れには窮屈だと感じています。
これは、自分にとって都合のいいことは「いい社会になった」と思い、自分の価値観にそぐわないことは「窮屈な社会になった」と思っているからではないでしょうか。


冒頭に書いたようなことは、あくまで私の観測範囲ですが、若い世代が支持している感じがします。
なので、今後こういう流れはもっと進んでいき、社会はより潔癖で完璧を求めるようになるのではないでしょうか。
それは、過ごしやすい環境なのでしょうか。息苦しい環境なのでしょうか。私は後者だと思うのですが、これからの若い世代は前者と感じ、その方向に進むのかもしれません。


これからの社会にとって、私は外で立小便をするおっさんという立ち位置になるのかもしれません。「前の世代」の人間は新しい世代についていけないため、今の世の中が窮屈に感じるのでしょう。自分は今、ルールを作る立場にいないのだ。


老兵は死なず、ただ消え去るのみ。
マッカーサーの言葉を書いても若い子には通じないんだろうなー。


老兵は死なず ダグラス・マッカーサーの生涯。

老兵は死なず ダグラス・マッカーサーの生涯。

  • 作者: ジェフリー・ペレット,林義勝,寺澤由紀子,金澤宏明,武井望,藤田怜史
  • 出版社/メーカー: 鳥影社
  • 発売日: 2016/02/03
  • メディア: 単行本
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