やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

生活保護制度、ここを変えてほしい

愚痴と妄想と理想を込めて


生活保護の仕事をしていると、もっとこうならいいのになーと思うことがいくつもあります。制度上「こういう理由だからダメ」と明確なものもありますが、それでももう少し何とかならんかなー、なったらいいのになーと思うことはあります。
今回はそういう私の愚痴も含めた改善要望を書きます。全国の生活保護関係者の皆さん、私のこの要望は無茶なものですかね。お知恵とご意見をください。


1.車の保有
生活保護制度では、車の保有は原則認められていません。一般市民の生活と均衡を図り、贅沢品は持てないという原則があるからです(通勤等の理由で認めることはあります)。
でも、今の時代車を持つなんてそこまで贅沢なことではないですよね。というか、私の住んでいる地方であれば贅沢品どころか生活必需品です。車がなければ買い物も通院も通勤もできません。生活保護の目的は「自立を助長する」ですので、仕事を見つけて収入を増やし、生活保護から脱却するという「自立に資する」ための車の保有を認めないのは本来の目的を達成するための障害になっています。
そこで、自分でお金のやりくりができるのであれば、車の保有も購入も認めてよいとならないでしょうか。自分のやりくりで購入・維持できるのであれば、冷蔵庫を買うのと何が違うのか。最近はリースという方法もあるし。


とはいえ、生活保護受給中は借金ができないのでローンは組めません。中古で安い車であっても総額30万円くらいは必要なので、そこまで貯められるかという問題もあります。さらに、ガソリン代、任意保険料、車検代を最低生活費から捻出するのは非常に厳しいので、持たせると生活が破綻する人続出しそうです。「車持てなきゃ仕事できないでしょ」と詰め寄る人もいますが、そういう人が車の維持費を捻出できる生活をしているかというと、9割そんなことない。貯金できず毎月カツカツで生活しています。じゃああなた、もし車を持てても維持できないじゃん。


そして、車の保有ができないという要件は、生活保護申請の大きな障壁になっています。この心理的な壁は、保護申請をためらわせるには大きな壁です。この要件が緩和されれば保護申請は大きく増えるはずですので、国がそれを認めるとは到底思えません。国は生活保護を減らしたいから。


2.扶養援助調査
扶養援助調査とは、生活保護利用者の近親者たちに「援助できませんか?」と文書を送り援助の可能性を探る調査です。
・金銭的援助(仕送りなど)
・精神的援助(アパート契約時や入院時などの保証人)
の2種類があります。
これ、意味ないと思うのです。仕送りなどを頼める間柄であれば保護申請前から付き合いはあるはずで、そういうつながりがないから孤立し困窮し保護申請に至っているはずです。「身内に生活保護ということがバレるのは嫌だ」と、これを理由に申請をためらう人もいます。


とはいえ、私たちもその人とつながりがあるのはありがたいし、いるのであれば名前や連絡先は知りたいです。生活保護で入院費を出すことはできても、入院時の保証人になることはできません。また、亡くなったときの葬儀やお骨の扱いも親族がいてくれるとありがたいです。
なので、扶養援助調査は精神的援助の可能性を探ることを主たる目的とし、金銭的援助は前面に出さない調査方法に変えてほしいです。もちろん金銭的援助を受けられるのであれば、ありがたくお受けします。
個人的には、この調査も先ほどの車の保有と同じく、保護申請を「阻むため」の大きな壁として存在しているので、国が運用を変えるとは思えません。国は生活保護を減らしたいから。


3.障害者の扱い
障害者といってもいろいろな人がいますが、ここでは精神障害障害年金2級以上を受給している人を対象にします。
障害年金2級だと、年金生活者支援給付金(年金が少ない人に追加で出るお金)と合わせて2か月で14万円、月に7万円くらいの年金がもらえます。しかしこれだけでは最低生活費に満たないので、これしか収入のない単身世帯であれば生活保護に該当します。
で、生活保護になるとお金を出すだけではなく生活全般の支援も求められます。定期的に自宅を訪問し生活状況を聞き取り、各種手続きの支援を行い、作業所や施設などへのつなぎなども行います。
こういう人は、生活保護だけでなく保健課や障害福祉などのほかの部署も関わっていることがほとんどです。であれば、こういう人の生活はそういう部署で見てくれないか。
生活保護ではお金の支給(年金だけでは足りない生活費、医療費、家賃、その他必要経費)だけにして、その人の生活の支援は専門の部署が見るという役割分担にしてほしいのです。


4.医療費の見直し
生活保護制度では、医療費は全額保護制度から出ます。診察・薬のどちらも全額出ます。入院や手術費も出ます。県民共済などで入院費給付が出た場合は全額徴収し、足りない分を保護制度から出します。その他、受診のための交通費も出ます。これは原則公共交通機関(電車やバス)のみですが、例外としてタクシー利用を認める場合もあります。
必要な医療を受けられるように、という理念に基づいた措置だと思いますが、全額制度から出す=本人は自己負担ゼロだと、お気軽に受診をする人がたまにいるのです。その受診、いる?自己負担だったら受診した?


そこで、制度の全額負担はやめ、国保割合のさらに1割を自己負担とするのはどうでしょう。75歳以上であれば1割負担のさらに1割、つまり1%。40歳なら3割負担のさらに1割、つまり3%。これくらいであれば最低生活費の中からでも自己負担で費用捻出できるはず。
もしくは、診察や手術・入院などは制度負担で、薬の受け取りだけ上記条件を適用するとかでもいいです。とにかく、生活保護に限らずどの分野においても「全額無料」はおかしな事態を招きがちですので、少しでも自己負担をしてもらうことにより不必要な利用は抑制されると思うのです。


こういうことを書くと「医療を受ける権利を制限するのか」という人も現れそうですが、一般市民だってお金の心配から医療受診をためらうことはあるし、保険適用外などの高額医療は誰もが受けられるものではありません。一般市民との生活との比較であれば、十分まっとうな話だと思っています。


5.年金控除
生活保護は、最低生活費に足りない分を支給するというのが原則です。例えば月の最低生活費7万円の場合、年金を5万円もらっている人は、生活保護から2万円の生活費を支給されます。年金をもらっていて、その上で生活保護費をもらっているわけではないのです。上乗せではなく、不足分のみ支給。
仕事をして収入のある人は、全額差し引きではなく「基礎控除」が適用され、稼いだ分の一部は本人の収入として残ります。これが仕事をするメリットでありインセンティブとなります。
しかし、年金の場合は差額分のみの支給となり、最低生活費のプラスにはなりません。これまで真面目に年金を納めてきた人と年金を納めずに生きてきた人が同じ生活費でいいのかしら。不公平じゃない?


そこで、「年金控除」のような仕組みを導入するのはどうでしょうか。例えば年金額の1割を基礎控除として収入認定から差し引く(保護費の上乗せになる)。月5万円の年金なら5千円の控除(上乗せ)。もしくは「年金加算」。控除と同様に、年金額に応じて最低生活費に加算する。


いやほんと、年金ゼロや月3万円なんていう人ゴロゴロいるんですよ。今までどういう仕事してきたんだよ。そんな人たちはもちろん貯金なんてしていない(できない)ので、生活保護にたどり着く。そりゃそうだよね、それしかないよね。なのに、文句を言う。いや、まず「ありがとうございます」だろ。


おっと話が逸れた。ついでに少し違う話を。年金はあともらいにすると金額が増えます。今65歳目前で、このまま年金が開始になるとギリギリ最低生活費を超えないので生活保護から脱却することができないが、1年受給を遅らせて受給額を増やせば生活保護から卒業できるというパターンはあります。しかし、保護制度では受給開始を遅らせることはできません。「他法優先」という考え方があり、ほかでもらえるお金があるなら必ずもらい、それでも足りない分を保護制度から支給する、というのが原則なのです。でも、1年待てば保護がいらなくなるのであれば、トータルで見れば保護費の抑制につながります。この辺、何か変えることはできないかしら。
生活保護制度が個人の資産形成の手助けをするのは制度の趣旨から外れていると思うので、難しいですよね。また、受給開始を遅らせている間に死亡する可能性もあります。だから難しいことは分かっていますが、いい落としどころはないものかしら。


6.CW配置数の見直し
生活保護利用者の対応をするのがケースワーカー(CW)です。担当する世帯数が多くなれば当然仕事量は増えていきます。国からはCW一人あたり80世帯まで担当してOKというルールになっています。
いや、無理だって。お前やってみたことあんのか。楽勝でできたのか。毎日定時で帰れたのか。無理だろ。無理だよ。
小さな福祉事務所だと、相談、新規申請、実地調査、各種調査票の送付、保護の決定のための資料作りまですべて一人で行います。日常業務である定期訪問、交通費や介護サービスなどの支払処理、収入申告の確認、毎月の保護費の計算、障害者手帳などの更新手続きなども一人で行います。さらに生活状況が変わりアパートでの生活が難しくなったらほかの施設入所を探して調整して入所のための手続きをして、などもあります。いや、無理だって。


毎日訪問から帰ってくると机の上にメモがたくさん。各所に電話したり緊急案件の対応をしていると定時のチャイム。そこから訪問記録を作ったり支払処理をしたり。どうやっても定時で帰れない。80世帯なんて無理なんだって。
大きな福祉事務所だと仕事内容によってはそれぞれの担当がいて各作業をしてくれるところもありますが、そういうところはその分担当数が多く、100を超える世帯を担当しているCWも多くいると聞きます。
私は小さい福祉事務所のため70程度の世帯数でしたが、細かな作業も含めすべて自分でやらなければならなかったので、やはりどうやっても定時帰宅は無理でした。


担当の上限、減らしましょう。
理想は30世帯、ギリ可能な上限で50世帯までにしてほしいです。そこまで減らしてようやくきめ細かいケースワークができるようになると思います。その人に寄り添った対応ができるようになります。
とはいえ、大きな福祉事務所(=大きな市役所)では既にCWが数十人いるので、一人当たりの担当世帯数を減らしたら、さらに数十人のCWを増やさなければならない。市役所全体でそこだけ人員を増やすのは難しいのも分かります。しかし、CWの負担は大きすぎるのです…。


あとね、市役所としても職員全体の働き方を把握してください。いくら国が「80世帯までOK」と言っていてそれ以下の水準だとしても、年間を通じてほかの部署に比べて残業が多いのであれば、改善すべきです。財政課や税務課など、ある時期だけとても忙しいのは仕方ないけど、福祉事務所は年中忙しい。年中定時で帰れない。これは明らかに人員配置の不均衡でしょう。ほかの部署が全員定時で帰っているのに福祉事務所だけ全員残っているのは、個人の能力の問題ではないでしょう。不公平感がハンパないです。


7.生活保護は国で行う
このように、CWは足りていません。なので増やしてください。しかしこれ以上増やすと、市役所の人員配置にも影響が出ます。そこで、生活保護はもともと国の仕事なので、その原点に立ち返り国が直接生活保護業務をしてもらえないでしょうか。


昨年度まで建設課にいた人が急に福祉の仕事をしろと言われても、とても難しいです。その人の素養もありますし。であれば、専門知識を持ったプロの人にお任せする方がいいのでは。
現在も、町村の生活保護業務は県が行っています。それを全国に拡大するのです。年金事務所だって税務署だって全国を網羅しているのだから、生活保護だって全国でやってもらいたいのです。実現するにはハードルがとても多いですが、ぜひ検討してもらいたいです。


とりあえず思いついたことは以上です。これをきっかけに議論が巻き起こり、ひとつでも・少しでも制度やCWの労働環境が改善できればいいな。しかし怖いのは、この記事が下手に広まり、上司の目に留まることです。見られたくない…。