やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』 感想

あなたはどこまで許せるか


キングスマン』の続編『キングスマン:ゴールデン・サークル』を見てきました。
公式サイト↓
www.foxmovies-jp.com
前作の私の感想↓
ese.hatenablog.com
↑この中で「続編は日本が舞台!」なんて書きましたが、全然日本ではありませんでしたね。残念。


この作品は前作を見た人ならご存じのとおり「ブラックジョークをジョークとして笑えるか」が評価のポイントです。それを許せる人はこの作品大好きだし、許せない人は「不謹慎ざます!」と眉をひそめるでしょう。
私は前作大好き人間なので、今回も「どんなひどい描写も笑って許すぞ」と思って臨みました。


今作は「秒でアガる」というダサいキャッチコピーがついていますが、その通りに物語が始まってすぐ、最初のアクションスタート!
ここでのBGMがプリンスの『Let's go crazy』なのです。プリンスはアメリカのミュージシャンだし歌詞の内容も物語とリンクしないのですが、これは「クレイジーでいくぞ!」というこの映画の宣言なのです。
www.youtube.com
ここのアクションシーン、すばらしい!CG使っている部分もあるでしょうが、カーチェイスはリアルですよね。いやー、すごい。
アクション映画ではオープニングでつかみのアクションシーンを入れるのはおなじみですが、この密度と長さはかつてのそれとは違い、『ラ・ラ・ランド』や『ベイビー・ドライバー』のような「飽きやすいお客をつかむための手法」という感じがしました。


続いて今回の敵キャラ:ポピー・アダムスの紹介。今回は古き良きアメリカの良妻賢母のイメージで、かわいらしい感じなのに酷いグロいことも平気でやっちゃうサイコパス要素も併せ持つキャラでした。演じたジュリアン・ムーア曰く「マーサ・スチュワートサッチャー首相をミックスさせた」とのこと。なるほど。
巨大ミンチ機の電源をONにし、「この人殺して」と命令するポピー。しかも出てきたミンチでハンバーガーを作り、食べさせるポピー。ひどい!
ここも「この映画はこういう作品ですよー。ついてこれない人はお帰り」というライン引きの宣言ですよね。でもなー、さすがにここは笑って見ることはできませんでしたよ。これは『サウスパーク』でも『ファーゴ』でもないのだ。
(関係ないけど、ここで殺される人、日本だったらマキタスポーツが演じそうなキャラだなーと思いながら見ていました)


さて、今作の最大の興味は前作で死んだはずのハリーが生きていること。果たしてどうやって復活させるのか。
正解は「特殊なジェルを被せて傷を治す」でした!テキトー!いいんです。この作品は前作から「荒唐無稽」を自ら宣言している作品なんですから。『魁!男塾』の王大人(ワン・ターレン)と同じでいいんです。民名書房でいいんです。一応の理屈があれば、そこにリアリティを求めてはいけないのです。


今作はアメリカの「ステイツマン」と共闘するというのがメインストーリーなので、アメリカに行く理由とイギリスの「キングスマン」ではダメな理由が必要になります。さーて、どうしようかな。
正解はミサイルで全滅でした!そんな気軽に登場人物をどんどん殺していいのか!いいんだけど、キャラの扱い軽すぎるだろ。ロキシーかわいかったのに。あ、これもあれか、また生きていましたってやつか。何でもありだもんな。


今作ではテキーラチャニング・テイタム)とジンジャー(ハル・ベリー)の活躍が少なかったのですが、これは続編で活躍するということですよね。今回で顔とキャラを出しておいて、ってやつ。
それにしても、「ステイツマン」のメンバーはコードネームをお酒の名前にするの、ダサくね?『太陽にほえろ』かよ、と思いながら見ていました。あと、すぐにネタ尽きるだろとも。


今作にエルトン・ジョンが出てくることは知っていましたが、まさかこんな使い方・使われ方をするとは!もはやカメオ出演というレベルではない。本人はこんな使われ方されるのは満足なのかな?スーパースター過ぎるから無茶をするのが楽しかったのかな?
エルトンはひふみんもデヴィ夫人も超えた!


物語は荒唐無稽なので激しいアクションがどかーんとあればいいので私は大満足でした。
でも、いくつか気になった部分もあります。
マーリンの死に方、あんまりじゃね?あれだけハイテクマシーンを持っていて、しかも地雷探知機も持っていたのに地雷踏むかね?そしてあれだけハイテクマシーンを持っているのに地雷を何とかすることはできないの?どうにもならんとしても、ハリーとエグジーが戻ってくるまで踏ん張っていられないの?
この映画は人命が軽すぎる。モブキャラが死ぬのと主要キャラが死ぬのは全然別ものですよ。こんなあっけなくていいのか。次回作でハル・ベリーをたくさん出すためなのか。
あと、ハリーはウイスキーが裏切り者だとどうして分かったのでしょうか?そういう根拠となる場面ありました?勘じゃいやよ。


敵キャラはチャーリー(片腕ロボ)、犬マシーン(マシン犬)、そしてウイスキーですが、どれも前作のガゼルの魅力に勝てない。あの美しさと強さはとても魅力的。魅力的な敵キャラって重要。


ラストではスーツを着たテキーラが再建されたキングスマンに訪れる場面で終了。続編へのフラグですねー。さてどうなるか。楽しみ。
イギリス「キングスマン」、アメリカ「ステイツマン」なら、次は日本「ニンジャマン」「ハラキリマン」でもいいんじゃない?ヘンテコな日本描写見たい!


というわけで、下手なツッコミを無効にする荒唐無稽宣言による力業で、私は大好きでした(ミンチ以外)。でもやっぱり第1作の方が好きだなー。


テレビは「点いているテレビ」と「見るテレビ」に分かれる

あなたのアンテナ次第


昨日こういうエントリを書きまして、
ese.hatenablog.com
一応前向きなオチにしたのですが、書いた後に「さすがに楽天的すぎる未来予想図ではないか」と思ったので、追加で書きます。


「芸人はウケるためなら何でもやる人だから笑いの新しいコードに則った新しい笑いを作ってくれる」と書きましたが、テレビにおいてはまだその新しいコードは導入されていません。それは主な視聴者が年寄りだからです。価値観のアップデートなんて望めない人たち。
テレビはそのメインターゲットに向けて放送するのが商売なので、そこで起用される芸人は古い価値観での振る舞いを要求され、芸人はその要望に応じた振る舞いをします。だってウケるためなら何でもやるのが芸人だから。
そして、お茶の間向けの番組にもコアなファンが見る番組にもどちらにも対応できるのが優秀な芸人です。


「だからテレビは面白くない」「テレビはオワコン」とよく言われますが、それは合っていて間違っています。「面白くない番組もあるし面白い番組もある」が正解です。BSやCSまで入れても同じ。ネットTVでも同じ。どのチャネルでも面白いものもつならないものもある。
つまらない番組を見て「つまんねー」ってそりゃつまんねーよ。何でつまんない番組見るの?面白い番組見ればいいじゃない。
これは「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」ではなく、「面白い番組を見ていないお前がつまらん」って話です。
これだけ録画機能が充実しネットで公式の再放送が見れる現在、つまらない番組を見る必要なんてありません。面白い番組だけでも見る時間は足りません。


『バイキング』『ヒルナンデス』やワイドショーを真剣に見ている人はいないと思います。ご飯食べながら何となく見る。点いているから見る。さすがにこれらを録画してまで見る人はいないでしょう。で、何となくでもテレビが点いていれば視聴率は発生します。
それに対し、とても楽しみにしている番組は録画してまで見ることが多いでしょう。リアルタイムでは録画するまでもない裏番組を見るという人もいるでしょう。その結果、その番組は視聴率が振るわないことになります。
1回だけ復活した『ごっつええ感じ』の視聴率が9%だったのはこういう理由だと思うのです。


スポンサーとしては番組内容なんてどうでもよく、視聴率さえよければいいわけですが、見ている私たちは逆に視聴率は関係なく面白い番組を見たいわけです。でも、若者は老人に比べて絶対数が少なく、仕事で忙しくリアルタイムで番組を見ることも難しいので、若者向けの番組はなかなか増えず、老人向けの番組や家族そろって見ることのできる「番組終わった瞬間にすべて忘れるクイズ・情報番組」が多くなるのです。


テレビ番組の勝ち負けや評価の指標が視聴率だけなのは問題だ、ということは以前から言われていますが、実際スポンサーとしては録画でCMを飛ばされたら番組制作費を出す意味がないわけで、テレビ番組制作という商売を考えたら視聴率がいちばん大事であることは否定できません。
でも、実際リアルタイムで見ることは減っているので、現実に合った対応をしなければいけないのも事実です。それはDVD等のソフトを売ることやTVer他公式のネットチャンネルで見せてそこにもスポンサーについてもらうことやTwitterのつぶやきをスポンサーに見せてその番組ファンの熱を見てもらうことなど、いろいろ考えられるし、いろいろ進んでいると思います。


テレビ東京の『ゴッドタン』はその辺が上手い。視聴率なんて1%程度なのに、DVDは売れるし「マジ歌選手権」のコンサートを行えば武道館が満杯になる。テレビ東京なのでネット局が少なく、見ることのできない人が多いわけですが、番組プロデューサー自らTVerで見るようにツイートしてくれる。ありがたい。


というわけで、今後はこれまで以上に「点いているから何となく見る番組」と「能動的に見る番組」に分かれていくと思います。そして視聴率以外の指標もビジネスと結びつきながら多角的な評価がされていくと思っています。


また楽天的な未来予想図ですが、テレビの全体像としては右肩下がりになっていくのは避けられないと思っています。それでも面白い番組は今後も生まれていくでしょうし、私はそれを見ればいい(私に視聴率の高さは関係ない)ので、個人的にはあまり心配していません。


テレビの笑いは更新していく

笑えることは、いくらでもある。


年末の『笑ってはいけない』の中で浜ちゃんのエディー・マーフィーのものまねを「黒人差別だ」と言う人たちがいて、話題になっています。
私はあれは「エディー・マーフィーのものまね」であって「黒人差別」ではないと思っています。「傷ついた人がいた」という意見には「そう思った人もいるかもしれませんが、勘違いですよ」という意見です。「傷ついた」は何でも許される魔法の言葉ではない。文脈をきちんと理解して、発言してほしいです。


もちろん、黒人に限らず人種や属性の違いを差別することは許されません。ただし、やったことが差別に当たるかはきちんと見極めなければなりません。
数年前、バカリズムが出ていた航空会社のCMで白人の扮装で付け鼻をしていて問題になり、すぐお蔵入りになりました。あれは、白人の魔女鼻をイジる笑いだったのでアウトです。昔の欧米の映画で日本人を一重メガネ出っ歯に描いていたのも、日本人の身体特徴をイジる表現なのでアウトです。先日の保毛尾田保毛男はゲイをイジる笑いだったのでアウトなのです。
人種や属性の違いをイジる笑いは現代では認められないのです。
で、今回の浜ちゃんの扮装は上に書いたように「ものまね」なので、黒人差別には当たらないというのが私の考えです。


といろいろ書きましたが、今回の本題は差別問題ではなくテレビのお笑いについて。
shiba710.hateblo.jp
この記事にほぼ同意なのでもう私が書くことはあまりないのですが、書く。


上の記事についてはほぼ同意ですが、

いい大人がケツを叩かれたり蹴られたりしているのを見て「あれ? なんでこの絵を見て笑えてたんだろう?」と思ってしまった

については反論。あの番組で笑うところはケツを叩かれるところではなく、その前のネタの数々の部分です。ケツを叩かれるのは次のネタに行くための空気の作り直し。アンガールズの「ジャンガジャンガ」のような、ショートコントのブリッジの効果です。
笑えなくなったのは、単に慣れと飽きだと思いますが、いかが。


私は2013年に
ese.hatenablog.com
というエントリを書きました。この頃からもう悪口での笑いは嫌だなーと思っています。
この中で『ロンハー』『アメトーーク』は違う、と書いてありますが、ここは今と考えが違いますね。
今は『ロンハー』は見ていないのでどんな内容なのか分かりませんが、『アメトーーク』の「マセキ三兄弟」は、好きではありません。人の「できない」を笑うのは笑えない。
でも、「運動神経悪い芸人」は笑うんだよなー。これも人の「できない」を笑う笑いですが、笑ってしまう。
何が違うんだろ。


もうひとつ、こういうエントリを書いたことがあります。
ese.hatenablog.com
これは今からちょうど一年前です。ここでは、「不謹慎な笑いはよくないが、それでも笑ってしまうことはある」ということを書いています。
そうか、だから「運動神経悪い芸人」は笑っちゃうんだな。で、「マセキ三兄弟」は九九のくだりとか何回も同じことをやらせるから笑えないんだな。


アンタッチャブルザキヤマはとても面白いですが、イジりがしつこすぎて笑えないことがよくあります。あんなことやられたら私もキレるわー。『おじゃマップ』とかだと違うのかな?最近『アメトーーク』に出ていないので最近のザキヤマのボケをよく知りませんが。


話を最初の柴さんの記事に戻す。

マイノリティーを見た目や行動で「いじる」という芸は、どんどん笑えなくなってきている。騒がれて問題になるからとか、最近は表現規制が厳しいからとか、そういうことではなくて。デブもハゲもそうで、とにかく「変わっている」ということを指摘して笑いにつなげるような作法の有効性が減ってきている。

同意です。もう「イジる」とか「違っている」ことを指摘する笑いは、笑いにくい。規制のせいではなく、私たちの感性が昔と違ってきているので、昔と同じ笑いでは笑いにくくなっているのです。
それでも上記のように笑ってしまうことはあるし、番組側もそれを使いたい。そういうときには非常に慎重な配慮が必要となります。
その辺を、今一番攻めている番組『水曜日のダウンタウン』は上手いなあと思うのです。
VTRのひどいナレーションを松本さんがツッコむという構図もそうだし、たまに「いい話」を入れてくるのも上手い、憎い。


この番組の藤井健太郎さんは『クイックジャパン』のインタビューで保毛尾田保毛男の件について

「ふざけんな」の声があっても「面白い」が同じくらいあれば、そんなに気にならなかったのかもしれない。面白さに対しての不快さが勝りすぎちゃったのかなっていうのはありますよね。

と語っています。そう、面白いは武器なのだ。『水曜日のダウンタウン』はひどいことをいろいろやっても、それを上回る面白さがあるからあまり大ごとになっていないのだと思います。
藤井さんエントリ↓
ese.hatenablog.com
水曜日のダウンタウン』エントリ↓
ese.hatenablog.com
前回の2時間スペシャルもめちゃめちゃやってくれてまさに「笑えないほど面白い」だったのですが、それでも「フューチャークロちゃん」はちょっと「面白さ」と「不快」のバランスが拮抗した感じがしました。


クロちゃんに対して酷いことをするのは確かによくないことですが、これまでのクロちゃんのウソつきの数々や何も反省しない「モンスター」っぷりと、これまでの番組の在り方に調教されてきた私たちファンとの共犯関係により、この企画は成立しています。
それでも、落とし穴があることが分かっているのに落ちにいくクロちゃんは哀しい。その後のさえちゃんのくだりでも取り戻しきれませんでしたよ。
そして、大オチの「吊り上げクロちゃん」ですが、ここに「理由」がないので少し笑いにくいのです。一応の理由は「10分ごとにウソツイートをしなければひどい目に遭う」ですが、こんなの絶対に続けられるわけないので、理由になっていません。
吊り上げ自体もスタジオをびっくりさせるだけが目的で、吊り上げる意味はない。いや、面白ければ意味なんてなくていいのですが、クロちゃんにひどいことをするのだから、それに対する「大義名分」は必要です。それが「ウソツイートしないと~」では弱い。クロちゃんはクズだから、も理由にならない。
それでも番組を見たときはびっくり&恐怖&大爆笑で、こんなことを思ったのは見終わってしばらくしてからです。まさに「面白さが不快を上回ったからセーフ」です。


それでも、こんな綱渡りはとてもリスキーだし(でもこの番組はこの姿勢で作り続けてほしい!)、誰でもできることではありません。
明文化された規制ではなく、私たちの意識の変化による笑いのツボの変化は、もう不可逆なものです。芸人のネタも番組の作りも、それに沿ったものでないと受け入れられないようになります。
これは、笑いの選択肢が減ってきているのではなく、新しい選択肢を開拓する時代、ということです。
これについて私は何も心配していません。番組の制作は作っている人がおっさんだったり視聴者が年配だったりするので時間はかかるでしょうが、芸人については何も心配していません。
だって、芸人は「ウケることなら何でもする人」だからです。
テレビで政治ネタがないのは、ウケないからです。ウケるならみんながやっています。なので、これは芸人のせいでなく見ている私たちのせいです。
そして、「イジり」や「違うこと」を指摘する笑いがウケなくなれば、芸人は違うことをやります。笑いは正直なので、自然な浄化作用が働きます。
でも、原始的な笑いとして「人の失敗は面白い」があるので、その「見せ方」については番組側の工夫が必要になります。


何も心配はいらない。未来はいつも面白い。


<追記>
翌日、続きを書いた。
ese.hatenablog.com


文明の子 (新潮文庫)

文明の子 (新潮文庫)

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』、賛成派に転向します!

古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう


先日『スターウォーズ/最後のジェダイ』を見て、賛否両論のこの作品を私は「否」と判断したのですが、2回目を見に行ったら「賛」に寝返ったのでその報告を書きます。
前回の感想↓
ese.hatenablog.com
レジスタンスの無能ぶりやフィン何もしていない問題など、前作でのダメ出し部分は今回も変わらずマイナスポイントなのですが、「古い時代は終わりだ。俺たちが新しい時代を作る」と言ったカイロ・レンの言葉にぐっときました。これは新シリーズを新しく作るぞというライアン・ジョンソンの宣言なのですね。私が否定派だったのは私が「変化を嫌う旧世代」だったからだ。
ハン・ソロが死に、ルークは役割を終え、レイアは組織を消滅寸前に追いやってしまいました。銀河系の新しい時代を作るのは新しい世代なのだ。


ただ、これは『7』でやってほしかったなーと思います。新時代の宣言は新シリーズの最初にかましてほしかった。
『7:フォースの覚醒』は大好きなのですが、旧世代への目くばせが過ぎるなーとは当初から思っていました。ストーリーも極論すれば『4』を違う演者で見せているだけとも言えます。まるで古典落語のような世界。
なので、『8』を見てから『7』を思い返すと、『7』は新シリーズの「エピソード0」というか「登場人物紹介の予告編」とすら思えます。
とはいえ、『7』の伏線を全部無視したのはいかがなものか、とも思います。その辺はシリーズ全体で相談しておいてくれよと思っています。レイの両親問題とか。
『7』が好きだと『8』は認められなくて、『8』をアリにすると『7』を否定したくなるブレブレの私。にんげんだもの


スター・ウォーズ』はこれまでずっと「血筋の話」だったのが、今作でそれに縛られることなく「フォースは誰にでも発現する可能性はある」としたのは大きな変更です。「誰でもヒーローになれる」という宣言。
ここをアリと認めると、この「本当の新時代に舵を切った決断」に称賛を送るようになり、ナシと判断すると「それはスター・ウオーズではない」になります。どっちがいいという話ではなく、その人の感じ方です。


ラストで少年が箒を手にする場面、ここ、箒がフォースの力で動いているんですね!私、1回目のとき気づかなかった!!1回目のときは「ヒーローに憧れる少年」だと思っていたのですが、「ジェダイになれるかもしれない少年」なんですね!
エピソード9が今作の何年後の設定なのかは分かりませんが、「あのときの僕です」という形で登場する可能性もありますね!


まとめると、「8、よかったよ。でもこれは7でやっておくべきだった」です。


古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう

古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう

映画『ゲット・アウト』 感想

2回目の方が面白い


映画『ゲット・アウト』を見てきました。公式サイト↓
getout.jp
この作品は公開直後から絶賛の嵐だったので見たかったのですが、私の地方では上映せずくそうと思っていたところ、私の地方でも上映を始めたので見に行ってきました。口コミとか評判って大事ですね!


(以下、ネタバレあります)


見る前は「人種差別を題材にした社会派サスペンス」だと思っていたのですが、実際は「イカれた家族のサイコホラー」でした。
ホラーというほど幽霊やグロい描写はないのですが、サスペンスというにはあいつらイカれすぎている。
ホラー映画らしいびっくりさせる効果音とかカット割りは好きではないですが、これもネタバレに対するミスリードだったのかもと思えば「やられた」としか言えないぜ。


見ている最中は「何か変だな」「何か気持ち悪いな」「何がおかしいのかな」と違和感を持ちながら見ていたのが、後半の伏線回収で「そういうことか!」「そうだったのか!」と「気持ち悪い爽快感」とともにクライマックスを迎えます。
気持ち悪いとは、その謎や違和感の正体が気持ち悪いからです。うわー、そんなー、いやだー。


見終わった直後は「面白かった」という感想ですが、その後この作品を振り返ると「うわ、あれ伏線だったのか」「あれも伏線じゃん」「うわー、全部設計されている!」ということが分かり、もっと「面白かった!」になります。
私は1回しか見ていませんが、たぶん2回目の方が面白い。うわ、ここもあそこも全部意味あるじゃん。登場人物のセリフや行動、カットまで全部行き届いています。


黒人差別?差別でないリベラル?いや、その針が振り切れた「歪んだ憧れ」です。
タイトルの「ゲット・アウト」は、劇中の「白人っぽい黒人」のセリフですが、これは人種差別に基づいた「黒人のお前出ていけ!」ではなく、「お前、ここは危険だから早く逃げろ」という意味だったのです。
その他伏線の秘密についてはこちらが詳しいです。
www.club-typhoon.com


ラストは、もともとはクリスが警察に捕まるバッドエンドを予定していたそうですが、採用されたのは友人に助けてもらうエンディングでした。これはいい決断だったと思います。捕まるエンディングだと、普通すぎるしあまりに救いがない。見ている私は「うわ、こんなひどい目に遭って逮捕かよ、かわいそうすぎる」と思っていたので、それを裏切ることでもうひとひねりが起きるわけで、それが救いのあるエンディングだと、見ている側も救われる。
公式サイトの中の町山さん解説では

トランプ大統領になったことでラストシーンを変えた。それは現実に差別主義者が大統領になったのに、映画の中でも黒人が差別されるだけではあまりにも救いがないから、映画だけでも救いを与えたかった

と監督が語っていたそうです。そうだよなー。


もちろんおかしな部分もあります。
そもそもあんな催眠術であんなに深くかかるのか、については「かかるんです」としか言えない。
手術する前に検体はとなりに置いておくだろ、については「その通りですね」としか言えない。ここは開頭手術のグロシーンを見せるためと物語の展開を作るために必要な部分で、リアリティとしては確かにおかしい。
催眠術にかかったふりで手術室まで運ばれ、手術開始していざクリスの頭にメスを当てた時に反撃!ではダメでしょうか。


これは黒人差別を扱った作品なので、アメリカ社会の実際についてもっと知っていればもっと面白く見ることができたんだろうな。音楽、服装、しぐさ、スラング等々。
だからアメリカではヒット&高い満足度だったんだろうな。


名作です。思い出してより楽しめる、2回目の方がより楽しめる「上手い作品」でした。