やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

IPPONグランプリ4

これこそ「笑いの総合格闘技」

IPPONグランプリ」が4回目にして初のゴールデン。
「すべらない話」と同様、客席に芸能人を招いての開催。しかし、「すべらない話」と違って下手にショーアップしたり人数水増しすることが無く、客席の芸能人以外は何も変わらない番組内容で安心しました。


この番組は1回目以外は見ましたが、非常に面白いです。
やはり、大喜利は面白い。
NHKの「ケータイ大喜利」は見ていませんが、「ダウンタウンの・・・」「ガキの使い」「内村プロデュース
と、大喜利のある番組は面白い。なぜなら、大喜利は「笑いに真面目」だからです。さらに上記の番組ならまだ天丼もかぶせも通じますが、この番組ではそれでは「一本」にならない。それゆえに真面目にお題に向き合わなくてはならない。


また、この番組では松本人志が「チェアマン」という立ち位置にいるのも、よい。
松本はいまだに現役芸人の最高峰ではありますが、こういう番組で全く同列に扱ってはいけない立場にあります。「すべらない話」ではすべっているときもありますしね。
こういう番組で負けてしまう場面を見せるのも良くないし、そのような場面になったら周りの芸人も気を遣ってしまう。なので、松本は別会場にいて、何に笑ったかを見せないようになっているのも、よい。


さらに、そのおかげで副音声のように松本の解説が聞ける。
私のようにお笑いファン(芸人ファンではなく)は、お題や回答の見方・分析を聞けるのは非常にありがたいことです。プロ野球選手を目指す少年がイチローの直接指導を受けられたら、嬉しいですよね。それと同じです。


もうひとつ。
採点方法が「芸人が採点」というところも特徴です。
キングオブコント」も芸人による採点という方法を取り入れていますが、これは松本の「芸人性善説」が大きく寄与していると思います。芸人たるもの、やっかみやしがらみがあっても、「面白いものは面白い」と認める誠実さがあると松本は信じているのでしょう。「キングオブコント」ではそれが「功労賞」寄りになってしまう面もありますが、この番組では今のところその傾向は無いようです。
また、上記にも書きましたが、天丼やかぶせでは会場の笑いは取れても、それが「満点=一本」にはならないのです。「純粋に秀でた回答」のみに一本が与えられるので、より一本の意義を増しているように思えます。


この番組を通じて非常に思うことは、「これこそ笑いの総合格闘技」であるということです。
現在の格闘技と言えば「K-1」に代表される立ち技の格闘技と、「PRIDE」「DREAM」に代表されるグラウンドもありの総合格闘技(MMA)です。
「すべらない話」は「サイコロの目が出てすべらない話をする」だけの、非常に制限されたトークバトルなので、これは「K-1」ルールのように思えます。
それに対し、大喜利の問題によって得意不得意があったり(写真で一言、歌詞をつけて、など)、答えの出し方にもいろんなパターンがあったり(ぼそっと言うのか、大声で勢いで言うのか、イラストをつけるのか、など)、こちらの方が「笑いの総合力」が問われます。
そういう意味で、この番組こそが笑いの総合格闘技だと私は思うのです。


では、以下は出場者の中でいろいろ感じたことを書きます。全員ではありません。

■千原ジュニア
大喜利のスペシャリストだったはず。
しかし、最近のテレビでの活躍により、大喜利での戦い方を忘れてしまったか。
逆に、文字や言葉にこだわる芸人なので、文字だけ(雑誌やネット)での戦いなら非常に強いと感じました。

■ビビる大木
うまいんだけど、弱い。それじゃ「KO=一本」にはならないよ。
頭の回転はいいんだけど、爆発力がない。
現在の自分の芸能界の立ち位置と一緒。

■世界のナベアツ
「作家」ですね。

バカリズム
強い。最強。
全盛期のヒョードルを見ているようでした。
どんな問題でも回答できるし、同じ問題でもいろんな角度から切り口を作れる。
言葉の面白さや勢いの面白さもできるし、さらに絵も描ける。
打撃でも寝技でも勝負できる、まさにオールラウンダー。
松本も絶賛しっぱなしで、多分「自分よりすごい」と認めているはず。

■設楽統
ドSなので、問題がはまったときの爆発力はすさまじい。
逆にバカリズムのようなオールラウンダーではないので、問題に左右される。

■有吉弘行
もともと大喜利は得意な芸人ですが(あだ名つけるのは大喜利ですからね)、それが世間的にも証明されたのが嬉しい。

椿鬼奴
芸人としての彼女はあまり好きではない(空気が読めない、笑いの基本法則(フリ・ボケ・ツッコミなど)が分かっていないように感じる)のですが、この番組では大健闘。見直しました。

■川島邦弘(野生爆弾
くーちゃんはやはりくーちゃん。
とにかく振り回す。空振りかホームラン。もしくは空振りか一撃KO。レイ・セフォーマーク・ハントのよう。
彼も普段テレビでは流れを無視してボケることが多いのであまり好きではないのですが、こういう「好きなだけボケていいですよ」だと強いですね。
たまにお題のテーマやルールから外れることもありますが。

■友近
彼女の「24/7ドヤ顔」は好きではないのですが、やるやんけ。
しっかりいろんな角度から回答していて見直しました。

■小木博明
彼が第4回大会の優勝者。
正直、全く期待していませんでした。だって「おぎやはぎの出来ない方」だったはずなのに。
バカリズムもそうですが、無表情から繰り出す答えは面白さを増しますね。
まさしく「緊張と緩和」。
特に最終問題の解答は感動しました。


番組としては大満足。
この先に「グランドチャンピオン大会」もあるそうなので、それも楽しみ。くれぐれも目先の華やかさのために番組の本質を見失うことのないように。
また、「すべらない話」のように変に高級感を出したり、「真剣勝負」を全面に出して権威付けすることのないように。あくまで面白いテレビ番組のソフトとして継続して欲しいです。

※この文章は2011年1月に書いたものです。