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やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

BUDDHA BRAND「人間発電所」を聴いて日本語HIPHOPの進化を感じた話

RHYMESTER 音楽 雑感 HIPHOP

それと世間の壁について


先日までRHYMESTERのライブツアーがありまして、私は2回行ってきたのですが、当たり前だけど良かったです。詳しい感想は個別のエントリを読んでください。


で、今回のツアーはアンコールである曲のカバーをやったのですが、この選曲がびっくりカバーだったため、宇多丸さんから「ライブの感想はSNSに書いてもいい。特に『良かった』『ヤバかった』という感想は寝る前に書いてから寝ろ。ただし、この曲だけはSNSには書かないように」というお達しがありました。
ツアーも終わりようやく解禁になりましたので、発表いたします。
RHYMESTERがカバーしたのは、ブッダブランド「人間発電所です!

BUDDHA BRAND 人間発電所 - YouTube
この曲ではJINさんもラップに参加。年々上手くなってる!
RHYMESTERBUDDHA BRANDの当時の関係性は私は知らないのですが、ライバル関係にあったブッダの曲をライムスターがカバーするというのは、ZeebraDragonAshの曲をカバーするようなものなのかな?
私は無知なのでこの辺の歴史を知らないのですが、HIPHOPヘッズたちはビックリの大感動だっただろうな。


皆さんはこの曲ご存知でしたか?私はタイトルは日本語HIPHOPのクラシックとして有名なので知っていましたが、曲自体はきちんと聴いたことがありませんでした。ブッダブランド自体もきちんと聴いたことがありません。
でも、このトラックは聞き覚えある人も多いのではないでしょうか。加藤ミリヤが「夜空」という曲でサンプリングをしているのです。

加藤ミリヤ - 夜空 [Live] - YouTube
(この曲、マドンナみたいに踊りながら歌うの?違和感!)
発表当時加藤ミリヤ17歳。曲を作ったのはいくつのときだろう。いつこういう曲に出会うんだろう。そういえば彼女はECDの「ロンリーガール」もサンプリングしてたな。ミリヤすげーな。


この曲、どうですか?確かにカッコいいけど、現代の日本語HIPHOPと比べたらリリックも韻もフロウもイマイチだと思いませんか?
歌詞はこちら。↓
人間発電所 (Classic Mix) : 日本語ラップ 歌詞
韻のためのリリック、響きや音だけの歌詞、曲全体で何を伝えようとしているのかが分からないです。ただ当時は「何かすげーもん聴いた!」という衝撃はあったのだろうと推察します。
当時このレベルで日本語HIPHOPを作れる人たちなんて日本に数十人しかいなかったであろう時代。そう思えば日本語HIPHOPのクラシックであることは間違いないです。


しかし、当時を知らない私からすると、「何が言いたいのか分からないし、韻もフロウもめちゃすごいってわけでもないじゃん」と思ってしまうのです。
しかししかし。クラシックと呼ばれる名曲を聴いてもあまりピンと来ないというのは、現在の日本語HIPHOPのレベルがそれだけ上がっているということではないでしょうか。


私はRHYMESTERは大好きですが日本語HIPHOPのシーン全体はそんなに掘っていないので、詳しくありません。なのでシーン全体ではなくRHYMESTERを例として話を進めます。


RHYMESTERのアルバムを過去から聴いていくと、明らかにだんだん良くなってきています。良いというのはトラックもリリックもフロウも、HIPHOPのあらゆる面で進化しています。
Dさんは昔からラップマスターですが、最近はそれがさらに進化。韻を踏まなくてもラップとして成立するフロウの域です(「It's A New Day」とか)。宇多丸さんは昔から理論派ラッパーとして豊富な語彙と固い韻が武器ですが、最近はラップ自体も上手くなっていてグルーヴとしても気持ちいい(「人間交差点」とか)。


RHYMESTERの曲だって「キングオブステージ」「耳ヲ貸スベキ」「リスペクト」「And You Don't Stop」などベストアルバムに入っている曲ですらやはり古いし現在に比べてレベルがまだ低い(もちろんこれらの曲好きですよ!)。


当たり前ですが、あらゆるものは日々進歩している。クラシックを名曲としてリスペクトすることはもちろん大事ですが、「今どきの若いもんは」「昔はよかった」というような懐古オヤジにはなりたくないな。時計の針は常に進んでいる。

世間の壁

というわけで、現在の日本語HIPHOPはすごいんだぞというお話なのですが、後半は「世間にはびこるマイナスイメージ」(「Deejay Deejay」より)について。
今回のRHYMESTERのアルバムの中に「ガラパゴス」という曲があって、これは「いまだに日本人がラップするのに違和感があるという人がいるけど、まだそんなこと言ってるの?そんなことないよ。こんな議論はもうこれでおしまい!」という内容です。
www.youtube.com
これはとても理解するし納得もするのですが、でもちょっと違和感を感じるのです。


確かに、「日本人がラップするとはいけすかねえ」(「ウワサの真相」より)という人はまだいます。でも、もうほとんどの人は日本語でHIPHOPをすることに違和感を持つ人はいないと思っています。いるとすれば、日本語ラップそのものよりも、それに付随するファッションやカルチャーやラッパーの立ち振る舞いなどに対する拒否反応だと思っています。
DragonAshの「Grateful Days」は1999年。当時10歳の子が26歳です。14歳ならもう30歳です。現在のミュージシャンもHIPHOPの影響を取り込んだ上でそれぞれの音楽を作っています。
もう日本語HIPHOPは市民権を得ているのです。


なのになぜ日本語HIPHOPは広まらないのか。それは単純に「曲の力が弱いから」だと思うのです。
世間のみんなが歌いたくなるようなフック(サビ)、思わず体を動かしてしまうようなフロウ、ダジャレではなくパンチラインとして認められる韻。これらがまだ日本語HIPHOPには弱いのではないでしょうか。
ぶっちゃけ、「韻を踏む」というのはダジャレです。これをダジャレでなくパンチラインとするには相当な力が必要です。楽曲・言葉のパワーが弱ければ「マジ歌」のダイノジ大地になってしまいます。


また、お茶の間のスターが存在しないことも理由の一つ。世間が知っているラッパーなんてKREVARIP SLYMEくらいでしょ。それですらお茶の間には届いていない。誰かテレビタレントとして活躍できるレベルで登場してくれないかなあ。FNS歌謡祭とかにも毎回呼ばれるくらいの実力と知名度を持った人。紅白の常連になってくれる人。俳優でもバラエティでもいいので、テレビ業界で活躍してくれる人。星野源とか福山雅治くらいの人。もしくはTM西川さんとかDAIGOとか綾小路翔くらいの人。


最後にRHYMESTERの話に戻る。
彼らは売れるつもりはあるのでしょうか。売れるというのは上に書いたようなお茶の間に知られるレベルでもいいし、武道館埋められるクラスの知名度・集客力でもいいし、50万枚売れるレベルの「売れる」でもいいし、とにかく「HIPHOPを知らない世間にも届く存在」となる意思と覚悟はあるのか、ということです。
今回のアルバムでもプロモーションはネット媒体のみ。テレビはもちろん、雑誌にすら登場しないのは、彼らなりの戦略なのでしょうか。売れ具合をコントロールしているのでしょうか。
もしそうなら、そりゃいつまでたっても「日本人がラップするとはいけすかねえ」という人はいなくなりません。自分たちで世間に出て行って成敗するか分からせないと、いなくなりません。
分かっている同士で「いつまで日本語HIPHOPは…」と愚痴を言い合っても、外には届きません。届かないところに自分たちが乗り込んでいかない限り、気づきも理解も生まれません。
自分たちでガラパゴスなこの状況を受け入れているのではないでしょうか。


進化している日本語HIPHOP、広まってほしい。