やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

あわや!仕事でボヤを出した話

先日の秋のお話。
その日私たちは、現場で作業をしていました。
現場というのはかつて保養施設だったところで、現在は市の管理の元で荷物置き場のようになっている建物です。
そこにいろいろなものが置いてあるのですが、冬を前に片付けようということになり、課長を始め4名で建物内の荷物を整理していました。


一通り予定の作業が終了したとき、課長が「これも動かそう」と言い出しました。それはホームタンクです。家庭にある、500リットルくらい入る灯油のタンクです。
そのタンクはかつて別の施設で使っていたのですが、撤去されてここに置かれていたのです。確かに、通路をふさぐように置いてあり、今日の作業にも邪魔でした。そしてこれから雪が降ることを考えると、ここに置いておくのは邪魔もそうですが、危険です。
そこで4人で動かそうとしましたが、なかなか重くて動かない。まだ中には液体が入っているからです。ここに移送されるタイミングで灯油の処理はされているはずなので、中は水なのかな?試しにひねってみると、水が出てきました。
しかし、かすかに灯油の臭いがします。灯油に中和剤入れてあるのかな?臭いはするといってもほんのわずか。灯油成分はだいぶ少ないはず。
私たちはそのまま水を出しっぱなしにしていましたが、なかなか空っぽにならない。まあ、3分の1残っていても200リットルくらいあるわけで、そりゃ簡単に空にはならないわけで。
見ていると、どんどんアスファルトの隙間に水は落ちていきます。いくら灯油成分少ないからといって、これだけ大量に地下に水がしみ込むのはあまり良くないかな、なんて考えていました。


すると、課長がチャッカマンを持って水に火を点けだしました。
その時は私たちは4人とも全く危険だと考えていませんでした。もしちょっとだけ灯油成分が残っていたら燃えて残った水が綺麗になるぜ、くらいの認識。フライパンでフランベするような気持ち。
しかし、点きません。やっぱり灯油成分ほとんどないからだな。
そこで今度はコケに点けたところ、点きました。それでもとても小さな炎で、まるでアルコールランプのようでした。


まだ私たちは余裕で笑いながらその炎を見ていました。
すると今度は枯れ草に点火。こちらも点きました。枯草の量が多いのでちょっと火の勢いがいいな。
おや、枯れ草から火が水の方へ移ってきたぞ。
あれ、ちょっと怖いかも。タンクの水を止めよう。
と思っていたら、タンクの下で炎が渦を巻きだしました!まるでアニメとかCGのような炎の動き。
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f:id:ese19731107:20131225201857j:plainこんなかわいいもんじゃなかった…。


ここからはほんの一瞬。炎が2~3mくらいまで舞い上がりました!
ヤバい!
近くに置いておいた看板などで炎をふさごうとしましたが文字通り焼け石に水。
私たち3人は建物の外側にいたのですが、上司ひとりだけタンクの向こうの建物側にいて、その上司は炎と煙で姿が見えなくなりました。
あれ、これ、マジでヤバいんじゃない?建物まで燃え移っちゃうんじゃない?


すぐにケータイを取り出し、119。火事ですか救急ですか。もちろん火事です!
電話を切った後も炎は勢いを弱めません。炎の向こうはまだ見えず、上司の姿も見えません。タンク内部の水が沸騰しボコボコと音を立てています。これ、建物に燃え移るより先にタンクが爆発するんじゃない?
そんな最悪の想像をしていたら、火の勢いが弱まってきました。灯油が全て燃え尽きたのです。


程なくして火は鎮火しました。建物への延焼は免れ、タンクの奥にいた上司も出てきました。怪我もやけどもなく、無事でした。良かった。
ちょうどその頃、消防車が到着しました。救急車もパトカーも、総勢6台くらい来てしまいました。火はもう消えていたのでホースの出番はありませんでしたが、そこから現場検証と事情聴取の雨あられ。警察・消防の人に何度も同じことを訊かれ、時系列で説明します。私は通報者だったので、その詳しい状況や時間なども何度も訊かれました。
そして、火を点けた「犯人」である課長はさらにいろいろ訊かれ、かわいそうでした。
時間も夕方になり、風が冷たくなってきたので課長はパトカーの中で事情聴取。まるで本当の犯人のよう…。


課長は職場へ戻ってからもお偉いさんの元へ説明と陳謝の旅に出かけ、しばらく帰ってくることはありませんでした。


翌日、私たち4人はべろべろになった波板などをはがす作業にいそしみました。
改めて見ると、結構広範囲まで溶けているし、すすはだいぶ高いところまで付いています。これ、実際危なかったな。もしこの日強風だったらアウトだったかも。


というわけでみんな、火の取り扱いには十分注意だよ!マジで。


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波板べろべろ。そして隣は木です。危ない。
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隣のブルーシートに燃え移らなくてよかった…。
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すすがこんな高さまで!