ヒーローも正義の人も報われる人もいないお話
中島哲也監督、好きなんです。
新作「渇き。」が公開される前に原作を読んでおこうと思い、読了。いやー、ヘビーな作品でした。
ミステリとかハードボイルドかと思って読み始めたら、ノワールでした。悪い奴らがいっぱい出てくるのですが、主人公である元警官の父親が一番クズでゲスでした。警官を辞めた原因からして悪い奴なのですが、話が進むにつれてさらにタガが外れていく。
いや、こういう物語ですから娘を救うためには多少の常軌を逸した行動も許されるものですが、この主人公は単に激情のみで行動するので、全く許容する気になれません。こんなに感情移入できない主人公像も珍しい。
結末も救われないものでした。ネタバレは避けますので詳しくは書きませんが、まあどのような形であれ、娘と父親が心を通わせることは無理ですよね。事件は解決しても、問題は解決しない。それどころか、事件のせいで家庭は再建不能。もともと修復は不可能であった家庭ですが、家にヒビが入るようなレベルではなく、粉みじんになるレベルの木端微塵さ。誰も救われない。
で、娘なんですが、ちょっと人智を超越しすぎじゃないでしょうか。神のような存在になっていて、全能感がありすぎ。だからこそ、目的を達成する前にあんなことになるのはちょっと納得がいかない。全てが終わるまでは神として君臨して欲しかったです。そして、その後にどういう行動をとるのかを見てみたかった。
さて、映画化です。中島哲也監督は「下妻物語」は未見ですが、「嫌われ松子の一生」「パコと魔法の絵本」「告白」は見ています。全て面白かった。
特に「告白」は原作を超えていると思っています。ラストのセリフは原作とは違う意味に聞こえました。
中島監督は絵面が派手でポップなので、今回でもいろいろやってくれそう。映画に関する情報はなるたけ目に入れないようにしているのですが、それでもそんな話は伝わってきます。
このヘビーな話をどうやって映像化しているのか。グロい描写も出てきそうですが、最近園子温などで耐性ができつつあるので大丈夫そう。R15なのでそこまで直接的な表現はないのでは?
近いうちに見に行ってきます。楽しみ。
追伸。映画見ました。
映画「渇き。」 感想 - やりやすいことから少しずつ

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