やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「TOKYO TRIBE」 感想

架空の世界のHIPHOP


映画「TOKYO TRIBE」を見てきました。原作は未読です。
公式HP→
私は、園子温は好きで、HIPHOPも好きです。でも、HIPHOPが世間から思われている「不良がYOYOチェケラッチョ」というイメージは大嫌いです。
原作はそんなイメージなので不安だったのですが、見てみたら、私の苦手なHIPHOPが全て詰まっていました。


まずは「ラップミュージカル」というフォーマット。これ自体は全く問題ありません。しかし、そのラップが上手く機能していないんだからそれは問題です。「レ・ミゼラブル」や「マンマ・ミーア」の歌が下手だったら映画の価値は下がりますよね?そういうことです。ラップが下手なのです。
「ラップ」はHIPHOPという音楽ジャンルの歌唱法のことです。ラップが下手というのは、歌が下手なのと一緒。ラップは韻を踏むことではなく、韻を踏んで歌うことです。HIPHOPが「音楽」として使われていないので、台詞をしゃべっているだけになるのです。
この辺は書き出すと切りがないのでこのエントリでは深追いしません。ラップやHIPHOPが私とは認識が違うんだな、と思ったのです。


オープニングの「ずっと1カメで世界観を映し出す演出」はいいと思いました。ただ、そこに入る染谷将太君のラップでちょっと冷めてしまうのですが。
この物語は「シヴヤ」「ブクロ」「ジンヂュク」などが舞台になるのですが、これは「渋谷」「池袋」「新宿」ではなく、架空の都市「TOKYO」の地名です。「スワロウテイル」みたいなもんです。もしくは「ブレードランナー」みたいなもんです。
なので、その辺のリアリティは気にしません。でも、お話が「ストーリーなんてないよ」なので、入っていけないのです。


いや、一応ストーリーはあります。

近い未来の “トーキョー”には様々なトライブ(族)が存在し、そこに住む若者たちは、
街を暴力で支配しながらお互いの縄張りを守っていた。
トライブ間の暴動・乱闘は日々繰り広げられるも、互いの力関係は拮抗し絶妙なバランスで保たれていた。
しかし、ある事件をきっかけに、その均衡はもろくも崩れ去る。
「ブクロWU-RONZ」のヘッドに君臨する<メラ>と「ムサシノSARU」に所属する<海(カイ)>。
二人を取り巻く”トーキョー”中のトライブを巻き込んだ、
激しく壮絶な一大バトルが今始まろうとしている――。

(公式HPより)
でも、それぞれのキャラクターの行動原理が分からない。皆さん、何をしたくてそういう行動してるの?
ソンミは何がしたいの?ただ家出しただけ?ヨンは何をしてるの?ブッバは何が目的なの?ンコイは何がしたいの?


そもそも、この争いの発端は「俺よりチンコがでかい奴がいるのは許せねえ」ということです。この動機がつまらないのはもちろん、その動機がオチなどに面白く転がっていかない。じゃあ、争いそのものはちゃんとした理由づけした方がよかったんじゃない?


まあ、その辺はあきれながらも見るとして、後半にでかい換気扇が出てきてしょこたん他がぶわーっとなるところは園子温らしくて笑いながら見ていました。この辺もめちゃくちゃですが、これはこれでいい。


その他、ヨンみたいな小さい奴がいくらくるくる回ったって大男倒せないよとか、銃も簡単にぶっ放す世界観なのにみんなで闘うときは誰も撃たないなとか、テラさんがああなった後で誰も病院に連れて行かずに揺さぶるだけとか、ツッコミどころはいくらでもあるのですが、この世界観ではそんなツッコミは成立しません。途中出てくるあからさまにCGな戦車のシーンも、ツッコむ方が負けです。


この映画で褒めるべきところは、「おっぱい」です。
冒頭の佐々木心音のおっぱいは最強だし、ヒロインスンミのおっぱいは最高です。
佐々木心音はあのシーンを撮るために何度もおっぱいを出し、掴まれ、辱めを受ける演技をしたわけでしょ?そう考えるだけで興奮するよね。
スンミは別に脱がなくてもいいのに脱いで、しかもしばらく無駄に放置。この美乳は20年後も愛せるね。スンミ役の清野菜名さんは吉瀬美智子に似ているので、脳内変換しながら見ていました。


よろしくない方に話が逸れたので、全体のまとめへ。
HIPHOPは、確かにこの映画のような側面もあります。しかし、それはあくまで一側面。それ以外の方が大きいし、そうではない「音楽」の部分が大事だと思うのですが、そういう意味では世間の偏見を拡大する内容になってしまったのではないかと思うのです。
あくまで個人的な好みの問題ですが。


HIPHOPが「恥ずかしい」のは認めます。でも、それを超えて「カッコいい音楽」であるということも認めてほしいのです。
恥ずかしいのも含めて描いてくれた「SRサイタマノラッパー」は、だからこそ傑作だったのです。宇多丸さん曰く「号泣メーン!」なわけです。
なので、この映画で描かれているHIPHOPは否定はしませんが(好きじゃないけど)、それだけではないことを知ってもらうために「SRサイタマノラッパー」を併映してもらいたいです。


宇多丸さんの評論が聞きたい。



『TOKYO TRIBE』予告 - YouTube

SRサイタマノラッパー映画予告編 - YouTube

宇多丸が映画『SR サイタマノラッパー』を語る - YouTube