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映画『マスカレード・ホテル』 感想

半年後、すべて忘れている気がする


映画『マスカレード・ホテル』を見ました。公式サイト↓
masquerade-hotel.jp
フジテレビが作るキムタク映画なので最初は興味なかったのですが、予告編でちょっと興味惹かれて見てきました。
感想は


というぼんやりしたもの。もう少しいうと、「物語としては面白かったような気がするが、映画として(演出や映像として)は面白くなかったような気がする」であり、「物語として面白かったような気がするけどよく理解していないし納得してない」です。うーん、まだぼんやりしている。


監督は鈴木雅之Wikipedia見たら私全然この方の作品見てないわ。そしてひとつも惹かれる作品ないわ。ドラマもまったく見ないのですが、『HERO』の演出の方なのね。だからお声がかかったのか。


では、ネタバレ込みで書いていきます。


●物語として面白かったような気がする編
今回のお話はミステリとしてはそんなにすごくない。そもそも、予告のメッセージは「その数字から事件発生の月日を引くと次の現場の緯度経度になる」ですが、今回の予告はいつ事件が起きるか分からないので「事件発生の月日」をいつにするかで予想される事件現場は変わるじゃないですか。このホテルで起きる確証はない。そもそもの設定が成立しない。
また、犯人としてはそんな正直な予告をする必要ないのに。今回の事件でおしまいになるのであれば適当な数字を書いておけばいいのに。「警察に勝負を挑む知能犯!」とかじゃないのに。


まあ、それを言い出すと物語が発生しないので、そこは目をつぶる。上手いなと思ったのは、「エピソードが登場人物の説明になる」「エピソードが登場人物の関係性を変化させていく」「エピソードが事件解決の糸口になる」「エピソードが伏線になっている」「エピソードが伏線になっていることを隠すためのエピソードがあり、見ている側にそこでいったん解決したと思わせる」といった点です。


伏線は難しい。ミステリは「物語上で語られていることで解決できる」がルールなので、解決のカギをどのように忍ばせるかが重要です。どこまでサラリと配置するか。それを、この作品では「伏線と思われそうなことを別のエピソードで解決する」で伏線の存在を消しています。上手い。
具体的には、松たか子扮する老婆が目が見えていたという怪しさは「次に夫と来るための下見だった」で消していましたが、実際は長澤まさみ殺害のための下見でした。また、菜々緒のストーカー騒動で他人に部屋番号を教えない重要さを語るときに過去の事例を語っていましたが、そのエピソードが松たか子の件(事件発生の動機)だったということ。上手い。


それでも、それぞれの事件の関連があるのかないのか、最後にもうひとつ事件が出てきたけど結局どんな話だったっけ?とか、「不可解な連続殺人」全体の話はよく分からないままでした。私が理解できなかっただけかもしれませんが。
なので、「面白かったような気がする」です。


●映画として面白くなかったような気がする編
最初のお客、濱田岳。お前、付け髭だな!映画館のスクリーンの大きさ舐めてんのか!こんなバレバレな付け髭やめてよー。本物の髭生やすか、髭なしにしてよー。映画開始1分で冷めさせないでくれ。


●セリフ編
続いて警察の潜入捜査開始の会議。説明と質問がテンポよすぎ。こういう説明セリフで私は冷めちゃいます。
あと、菜々緒のエピソードで、翌朝木村拓哉長澤まさみにいろいろ説明した後「じゃ、私行くね」というセリフ。何これ。お前誰だよ。長旅を経た仲間との別れじゃないだろ。1泊しただけの客だろ。何が「私行くね」だ。勝手にどこへでも行け。
そして、松たか子の独白。すげー丁寧に説明してくれるじゃん。確かにこの恨みを語ってから殺したいだろうけど、すげー語るじゃん。
「生身の人間はそんなこと言わない。そんなやり取りしない」があると冷めるんだよなー。小説なら成立しても、ドラマや映画でしゃべらせると成立しない会話やセリフというものはある。そこが映画の脚本と演出の腕の見せどころですよ。


●演出編
劇中、客室からホテル外観へのズームアウトが何度もありましたが、どういう効果をもたらしているのか分かりませんでした。
物語はホテルの中しかないので、画がもたない。そのためにカメラをぐるぐる回すか役者のアップばかりになるのはつまんない。これは映画だぞ。テレビドラマじゃないんだ。
長澤まさみピンチのとき、雨がいきなりザッザーザと本降り(©岡村靖幸『だいすき』)になる演出。下手か!ダサい!そもそも雨になる必要性は物語上も演出上もなかったぞ。
事件解決後のエピローグが長い。役者名のテロップが出た以降、全部いらなくない?後日の食事会いる?普通にお客として泊まりにきて洒落た会話をしておしまいでよくない?


私は予告編をちゃんと見ていなかったしポスターもろくに見ていなかったのですが、松たか子はちゃんと出ているのね。じゃあ物語後半まで出てこない時点で彼女だと思うお客さん多かったんじゃない?私は何も知らなかったので「おおー」と素直に驚きました。
松たか子の存在はポスターからも予告編からも外していいと思うんだけどなー。見た人だけが知る事実と存在。キャストロールの止め(最後に出てくる役者名)にしっかりと出す、でいいと思うんだけどなー。
そういえば、明石家さんまが友情出演で出ていたのですが、まったく分かりませんでした。後ろ姿だけだったのかな?


キャストはいい役者さんが多く出ていてよかったのですが、木村拓哉松たか子(と小日向文世)、勝地涼前田敦子というキャスティングはあざとすぎてなあー。好きな人は喜ぶのか?私は冷めちゃった(冷めてばっかりだな)。


●キムタク問題
私は木村拓哉作品をほとんど見ていないので「キムタクっぽくない作品」もあるのかもしれませんが、本作は私のイメージするキムタクそのものでした。眉間にシワを寄せる、不機嫌そうに口をすぼめる、ポケットに手を突っ込む。キムタクだ!想像上のキムタクは実在した!
以前『検察側の罪人』を見たときもキムタクだ!と思いましたが、同じような判事と刑事という職業でありながらまったく逆の性質の人間です。


自分のやるべきこと、自分が正しいと思っていることを遂行するためにはどんな手段も辞さないという自分を曲げない『検察側』のキムタクと、自分のやるべきことを遂行するためには自分を曲げることも厭わない『マスカレード・ホテル』のキムタク。これは演じる役の幅であって、演技の幅ではない。演技はおなじみキムタクそのもの。


こんな中途半端な感想だし、「不可解な連続殺人」もよく理解していないので、半年後にはどんな話だったのかもう覚えていないような気がする。そして、この作品は映画である必要があったのかも分からない。2時間ドラマではダメな理由はあるのか。
でも、ヒットしているし原作は3作あるので続編も作られるんだろうなー。次見に行くか分からんけど。


検察側の罪人』の感想はこちら↓
ese.hatenablog.com