やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『イエスタデイ』 感想

女性はそんな簡単じゃない


映画『イエスタデイ』を見てきました。公式サイト↓
yesterdaymovie.jp
f:id:ese19731107:20191031085617j:plain
もし、世界中でビートルズを知っているのが自分だけだったとしたら…。誰もが一度は夢想したことがある(とは言い過ぎか)この「if」を映画化。さて、どう着地させる?


まー、映画を見る前から誰もが思ったことですが、「ビートルズ『だけ』存在しないってありえないだろ」の件。ビートルズに影響を受けたミュージシャンなんて星の数ほどいるわけで、ビートルズがいなければ現在の音楽事情も音楽産業もまるっと違うものになっていたはず。
また、ビートルズはアイドルであり社会的な発言をするラジカリストでもあったわけで、音楽のみならずファッションから思想に至るまでありとあらゆるところに影響を及ぼしまくってきた人たちですから、社会全体が違うものになっていたはず。
うん、そうなんだけど、この作品は「そういう整合性を追求していったら成り立たなくなるからそこは無視して」というスタンス。私もそれでいいと思います。考え出したらきりがないもの。


というわけで、ビートルズ「だけ」がいない世界。ちなみにこの世界ではオアシスもタバコもコカコーラもハリーポッターもなくなっています。
映画を見る前からオアシスもいないことは知っていて、「つーことは、直接的な影響を受けたバンドはいなくなる線引き?」と思ったのですが、そうではなくて世界に点々と穴が開いているような状況なのですね。


さて、ビートルズの曲を知っているのは自分だけ、自分の曲として発表したらそりゃ売れる、急に人気になる戸惑いと罪悪感。ここまでは想定通り。途中の筋運びもよいと思います。
途中の「売れるために」の会議で、ビートルズのアルバムのタイトルやジャケットをことごとく否定していく場面。確かにおっしゃる通り。でも、ビートルズはあのタイトル、あのジャケットで世界中で大ヒットしました。売れれば何でもいいタイトル・いいジャケットになるのです。「売れるために」って、本質の評価にどれだけ意味を持つんだろ。


さあ、どう畳むか。
本作では「ライブの最中に事実を告白してビートルズの曲はフリーダウンロードできるようにする」という着地でした。うん、これしかないよね。ビートルズは世界の共有財産。
これしかないとはいえ、予想通りそのままなので、あまり驚きも感動もなかったな…。
そもそも、あんな簡単にフリーダウンロードの仕組み作れるの?途中からマネージャーをやっていたロッキーが実はITオタクで、みたいなエピソード入れておけば「あの設定が活きた!」とカタルシスあったのになー。


本作は、ビートルズ云々という本筋と同じくらいの分量でラブコメも描かれているのですが、こっち側が私は乗れませんでした。
いや、いくら鈍感でもリリーの気持ちに気づくだろ!急に告白されて「まさかそんな風に思われていたとは知らなかった」は通用しないぜ。
百歩譲って本当に気づかなかったとしよう、本当に単なる幼なじみだと思っていたとしよう。それだったらなお悪い。何の気もなかったのに、離れていくと急にもったいなくなる。そんな都合のいい話あるかよ。
千歩譲って「やっと自分の気持ちに気づいたんだ」としよう。それでも、彼女に彼氏ができた後によりを戻すなんてことできる?男はいつまでも過去を振り返るが、女は未来しか見ていないんだぜ。そんな都合のいい話あるかよ。新しい彼氏の振り方もかわいそうすぎるし。


というわけで、ビートルズ云々の部分は「そうでしょうね」、ラブコメの部分は「そんなうまい話があるか」と思ってしまったので、映画としてはまあまあ。
しかし!この作品は卑怯だ。だってビートルズだもん。あの名曲たちが何曲も何曲も流れるのです。そりゃいいよ。ワクワクするしグッとくるよ。くそう、名曲たちめ。


上で「ビートルズがいないことによるいろいろな弊害は無視でよい」と書きましたが、それでも気になることがいくつかあります。
まず、ジャックは中学生の頃にオアシスのコピーバンドで学園祭に出演していますが、オアシスがいない世界では、このバンドメンバーはこの出来事を覚えていないのでしょうか。学園祭自体やコピーバンド自体がなかったこと(ジャックの記憶の方が偽り)になっているのでしょうか。ちょっともやった。


そしてもうひとつ。ジョン・レノンが生きていたこと!!!!これはサプライズ!!ちょっと涙出ちゃった。そうだよな、ビートルズがなければ撃たれることもなく、現代でも生きている可能性十分あるもんな。
ただ、これを「アリ」にしちゃうと、ポールもリンゴもいるってことですよね。ジョージもまだ生きているかも。あ、逆にポールとリンゴは亡くなっている可能性もあるのか。
この世界では、そもそもジョンとポールは出会っていないのか。それぞれが独自に音楽をやっているという可能性もないのか。
まあ、ないんでしょうね。ないからビートルズは生まれていないってことなんだろうな。
あと、ジョンが「いい伴侶にも恵まれて」的なことを言っていましたが、オノ・ヨーコと出会わなかった方が幸せなのかな?ということも思っちゃった。そもそも、あの二人だって晩年になったら別れているかもしれないもんな。強烈な個性同士が強烈に惹かれ合っている間はいいけど、ちょっとずれたらその反発力はすさまじい。別れた後で方やオノ・ヨーコの悪口ソングを作り、方やジョンに対するディス作品を発表しているかもしれない。
ああ、これもまたifだ。


役者は皆さんよかったです。
●ジャック(ヒメーシュ・パテル)
基本「いい人」な感じがよかったです。「俺がビートルズになって大儲けしてやるぜ」がないので、見ているこちら側は純粋に応援できる。
●エリー(リリー・ジェイムス)
彼女、すげー可愛かった。おっぱいも。
リリー・ジェイムスって、『ベイビードライバー』のヒロインだった子か!でも顔とか全然覚えてないな…。あとは『シンデレラ』か。でも見てない。
この子も「いい人」がにじみ出ていてよかったです。こんないい子を単なる幼なじみ兼マネージャー兼運転手の枠に入れておくジャックはダメ男だ!私の方がいいぞ。
●デブラ
やり手のマネージャー。『ロッキー4』のドラゴの嫁みたい。これはこういうがめついキャラで正解なのだ。
エド・シーラン
まさかこんながっつり出るとは。この映画、イギリスという強みを最大限に活かしているな。英語分からないけど、演技はどうだった?私は特に気にならなかったけど。