2回目の方が面白い
映画『ゲット・アウト』を見てきました。公式サイト↓
getout.jp
この作品は公開直後から絶賛の嵐だったので見たかったのですが、私の地方では上映せずくそうと思っていたところ、私の地方でも上映を始めたので見に行ってきました。口コミとか評判って大事ですね!
(以下、ネタバレあります)
見る前は「人種差別を題材にした社会派サスペンス」だと思っていたのですが、実際は「イカれた家族のサイコホラー」でした。
ホラーというほど幽霊やグロい描写はないのですが、サスペンスというにはあいつらイカれすぎている。
ホラー映画らしいびっくりさせる効果音とかカット割りは好きではないですが、これもネタバレに対するミスリードだったのかもと思えば「やられた」としか言えないぜ。
見ている最中は「何か変だな」「何か気持ち悪いな」「何がおかしいのかな」と違和感を持ちながら見ていたのが、後半の伏線回収で「そういうことか!」「そうだったのか!」と「気持ち悪い爽快感」とともにクライマックスを迎えます。
気持ち悪いとは、その謎や違和感の正体が気持ち悪いからです。うわー、そんなー、いやだー。
見終わった直後は「面白かった」という感想ですが、その後この作品を振り返ると「うわ、あれ伏線だったのか」「あれも伏線じゃん」「うわー、全部設計されている!」ということが分かり、もっと「面白かった!」になります。
私は1回しか見ていませんが、たぶん2回目の方が面白い。うわ、ここもあそこも全部意味あるじゃん。登場人物のセリフや行動、カットまで全部行き届いています。
黒人差別?差別でないリベラル?いや、その針が振り切れた「歪んだ憧れ」です。
タイトルの「ゲット・アウト」は、劇中の「白人っぽい黒人」のセリフですが、これは人種差別に基づいた「黒人のお前出ていけ!」ではなく、「お前、ここは危険だから早く逃げろ」という意味だったのです。
その他伏線の秘密についてはこちらが詳しいです。
www.club-typhoon.com
ラストは、もともとはクリスが警察に捕まるバッドエンドを予定していたそうですが、採用されたのは友人に助けてもらうエンディングでした。これはいい決断だったと思います。捕まるエンディングだと、普通すぎるしあまりに救いがない。見ている私は「うわ、こんなひどい目に遭って逮捕かよ、かわいそうすぎる」と思っていたので、それを裏切ることでもうひとひねりが起きるわけで、それが救いのあるエンディングだと、見ている側も救われる。
公式サイトの中の町山さん解説では
トランプ大統領になったことでラストシーンを変えた。それは現実に差別主義者が大統領になったのに、映画の中でも黒人が差別されるだけではあまりにも救いがないから、映画だけでも救いを与えたかった
と監督が語っていたそうです。そうだよなー。
もちろんおかしな部分もあります。
そもそもあんな催眠術であんなに深くかかるのか、については「かかるんです」としか言えない。
手術する前に検体はとなりに置いておくだろ、については「その通りですね」としか言えない。ここは開頭手術のグロシーンを見せるためと物語の展開を作るために必要な部分で、リアリティとしては確かにおかしい。
催眠術にかかったふりで手術室まで運ばれ、手術開始していざクリスの頭にメスを当てた時に反撃!ではダメでしょうか。
これは黒人差別を扱った作品なので、アメリカ社会の実際についてもっと知っていればもっと面白く見ることができたんだろうな。音楽、服装、しぐさ、スラング等々。
だからアメリカではヒット&高い満足度だったんだろうな。
名作です。思い出してより楽しめる、2回目の方がより楽しめる「上手い作品」でした。
- 出版社/メーカー: Universal Studios
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