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映画『ちはやふる-結び-』 感想

この一瞬をパッケージ、それが青春。


映画『ちはやふる-結び-』を見てきました。公式サイト↓
chihayafuru-movie.com
前作の感想はこちら↓
ese.hatenablog.com
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こちらに書いた通り、「上の句絶賛!下の句残念…」が私の感想です。
私は小泉徳宏監督の他の作品を見たことがなくて、『下の句』を見たときに「『上の句』はまぐれだったのか。もともと監督や脚本の力量はあまりない人なのか」と思ったのです。『結び』の評判がいいのも『下の句』をアリだと思った人たちの評価だろ、と思っていたのです。
すみませんでした!間違ってました!土下座!ジャンピング土下座!スライディング土下座!焼き土下座!五体投地
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傑作でした。大傑作でした!!!!!


(以下、ネタバレあります)
青春映画とは「物語が終わったときに始まったときと比べて登場人物たちが成長している映画」だと思っていて、それが『上の句』ではできていて『下の句』では停滞していました(元々二部作なので仕方ない面もありますが)。
また、「登場人物がその世界で生きている」というのもいい映画の条件。特に青春映画であれば、この条件さえクリアしていればイベントは特に起きなくてもいいのだ。彼らが生きていればそれでいいのだ。これも『上の句』ではできていて、『下の句』ではセリフっぽいセリフ、演出っぽい演出が鼻について彼らの輝きはあまり感じられませんでした。
しかしそれが!本作では!十二分にできていました!!!
彼らが輝いているだけでなく、きちんと成長し、さらに物語の勝敗や決着にドキドキとその理由にちゃんとロジカルな根拠がある。「物語は脚本とキャラクターの両輪」というのが私の持論なのですが、それが高レベルで上手く噛み合い、大成功していました!
ese.hatenablog.com
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物語は前作の2年後。高校1年生だった彼らが3年生になっています。この時間経過やこの間に何があったかは『ちはやふる-繋ぐ-』を見るとより理解できます。まあ、見なくても『上の句』『下の句』を見ていれば問題ないレベルですが。
この2年の時間。前作でのエピソード、物語上での2年間という歴史の積み重ね、そして役者陣の成長、すべてが本作のためにある。
登場人物が生きているから確かに瑞沢高校かるた部での2年間があったと思えるし、役者陣は皆レベルアップしているのでセリフの違和感がない。そして本作で描かれていることは全て前作から続いている。すべてが上手くはまっている!


『下の句』で気になった「物語のベクトル」も、本作では団体戦に絞って描かれているのでずっと焦点が合っている。個人戦は『タッチ』方式で処理する思い切りのよさ。いいと思います。2時間しかない中で何を取捨選択するか。その分詩暢ちゃんの出番が減ってしまいましたが、松岡茉優なので「大御所特別出演」くらいの貫録で演じてくれました。彼女だったからできた。他の女優だったら単なるコメディキャラになり下がるところでした。
同じく新も出番は少ないのですが、これも仕方ないですよね。欲を言えばあの告白の後の心の動きなども描いてほしかったですが、まあ仕方ない。これ以上求めてはいけない。この辺を描こうとしてもしまた二部作にしたらいろいろ薄まってしまったでしょう。
同じく『下の句』で気になった「セリフっぽいセリフ」は、本作では解説者の発言や新入部員に対する説明という形を採っており、説明セリフを上手く回避していました。


小泉監督は、ロジカルな人ですね。『上の句』でもどうやって勝つのか、そこにきちんと根拠がありました。本作もその辺は抜かりなく、さらに登場人物のキャラや言動まですべてが後に活きてくる作りになっています。上手い。
あと、コメディパートが上手い。新と伊織ちゃんの告白瞬殺のやり取りとか周防名人の札の入っていない財布とか詩暢ちゃんのスノー丸LOVEな姿とか肉まん君のツッコミとか。間がいい。これは監督だけでなく、役者の力量UPのおかげもあるんだろうなー。私が見ていた席の後ろには中学生?高校生?の女子4人組がいて、彼女たちはちょいちょいしゃべりながら見ていたのですが、笑うときに笑い驚くときに驚き、とてもいい副音声でした。おかげで私も感情豊かに見ることができました。


高校卒業ということで進路を決めなければならない。千早はなかなか決められず、やっとラストに先生に進路希望を提出してそれを見た先生が驚く描写でカットが変わる。このとき「そこ引っ張る必要ある?」と思ったのですが、エンディングで千早がクイーンになったことと彼女が瑞沢高校のかるた部顧問になったことが分かる解説者の言葉で締め。上手い!まさかの『タッチ』方式で千早と詩暢ちゃんの決着を伝えてくれました。
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もっと見たい。まだ見たい。でも、青春というのは「ある一瞬の輝き」であり、いくら原作は続いているとはいえ、実写で描くには無理が生じてくるので、これで完結でいいのです。その一瞬を映したのがこの3作であり、そこに彼らの青春は永遠にパッケージされています。
これって、千年前に歌われた恋の歌が今の時代でも有効になっているのと同じこと。その一瞬は永遠に百人一首に刻まれています。
そして、クライマックスで千早が言った通り、みんなからもらったものを次の世代に引き継ぐ物語でもあります。そこではっきり千早の成長が描かれていて、もっと見たいのに終わってしまう儚さ・せつなさも表現しています。上手い。


では、キャストの皆さんの感想。
広瀬すず(綾瀬千早)
スターなのでそこにいるだけで輝いています。一時期の宮沢りえ広末涼子と同じレベル。『下の句』では松岡茉優に女優として食われていましたが、スターの輝きで五分の闘いに持ち込んでいました。
本作ではスターの輝きは幾分落ち着きましたが、その分女優レベルが向上しており、とてもよかった。「残念美人」を嫌みなく体現していました。
あと、彼女の眼力はもちろんすごいのですが、白目部分の輝きがハンパなくないですか?
野村周平(真島太一)
彼がいちばんの伸び率!金持ちイケメン勉強トップ、なのに満たされない。これだけパーフェクトなカードを持っているのに「凡人(=私たちと同じ)」に見えてしまう。リア充死ね、ではなく応援してしまう。表面上は気を張ってリア充を演じていても内面は嫉妬と焦りと諦め。そして周防名人と出会って決心する。野村君、よかったよ!
●綿谷新(新田真剣友)
あんなにさらっと「好き」が言えるなんていいなー。結局3作ともあまり登場しなかったけど、彼が後ろにいることで千早と太一が動くので、そういう意味では重要な役。前作までは「見る役」だったのが本作で「闘う役」になったのに、新側の心情や葛藤が描かれなかったのは不満です。太一の引き立て役になっちゃっている。時間足りないから仕方ないけど。
上白石萌音(大江奏)
相変わらずの天使役、解説役。広瀬すずの声もいいけど彼女の声もいい。
矢本悠馬(西田優征)
肉まん君の名前初めて知った。前2作もコメディ役でしたが、そんなに上手くなかったのが今回は上手い!役者としてレベルUPしてる!
森永悠希(駒野勉)
机君、太った?『上の句』は全国の机君と同じ境遇の人(つまりほとんどの人ってことだ)が号泣しましたが、本作はあまり見せ場なし。
松岡茉優(若宮詩暢)
もう彼女に言うことはない。本作ではコメディパートばかりでクイーンとしての活躍シーンが全然なくて不満ですが、時間足りないし『下の句』のときみたいに物語のベクトルが分かれるのはよくないので仕方ない。上に書いたように「大御所特別出演」クラスの貫録で存在してくれました。
●佐野優斗(筑波秋博)
生意気な後輩役。何かムカつく顔がいい。三四郎の相田みたいだな、と思いながら見ていました。そしてその生意気さがフリとなり、クライマックスで活きてくる。彼の成長を私たちは見届けているのです。
優希美青(花野菫)
彼女は美人ですが、おだんごヘアはあまりに合わないな。輪郭のせいかな。髪の毛下ろしていた方がきれい。恋愛をかき乱す少女漫画要素キャラですね。最初は新入生っぽさゼロのスナックのママみたいな顔だな(失礼!)と思っていましたが、彼女もだんだんよくなる。
賀来賢人(周防名人)
私は原作読んでいませんが、たぶん原作ファンからすると「ここ間違えるなよ!」という重要キャラだと思うのですが、よかったですよね?天才と天然。視力が弱い弱点があるなど女性受けする要素だらけでキタネーなと思いますが、そんなプレッシャーの大きい役を見事に演じていました。熱さがないまま勝っていくとりつく島の無い孤高の強さ。
●清原果耶(我妻伊織)
負けん気の強い妹キャラ。バッチリじゃないか!多部未華子さんの後釜か?あと、あべみかこにも似ているなと思いました(男子だけ検索してください)。


私は青春映画はあまり見ていませんが、青春映画の代表作になったと思います。大傑作でした。ここにたどり着くまで『上の句』『下の句』も見なきゃいけませんが、絶対に面白いから見て。もしつまんなかったらお金返すから。
作中の登場人物の成長と広瀬すず野村周平を始めとする若手俳優の成長がシンクロする、まさにこのときにしか作ることのできなかった「青春のパッケージ化」に大成功した作品です。千年先まで残るよ!


ちはやふる(37) (BE LOVE KC)

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映画『ちはやふる』完全本 ―上の句・下の句・結び―

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