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映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』 感想

倫理観が邪魔をする


映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』を見てきました。公式サイト↓
maxam.jp
Twitterで評判だったので見に行ったのですが、私はあまりはまりませんでした。


(以下、ネタバレ含みます)




カンニングって、悪いことじゃないですか。なので、映画内でそれを肯定的に描くには相当の動機や理論武装が必要ですが、私の倫理観を「よし、カンニング頑張れ!」と思わせるまでには至りませんでした。
この最も大事な部分がクリアにならなかったので物語に乗り切れず、堪能できませんでした。


現状を憎むほどに思っているのか、どうしてもお金が必要なほど切迫しているのか、見返したい人がいるのか、カンニングに手を染めないとたどり着けない場所に行きたいのか、どれなんだ、どうなんだ。
主人公が善人のまま明確な動機があっての行動なのか、悪に転向しての確信犯なのか。物語上では「お父さんに楽をさせてあげたい」「裕福な家庭は学校に賄賂を払っている」「自分のような恵まれていない貧困層は騙す側に立たないと搾取される」という大義名分がありましたが、それでも弱いなー。
そもそもリンは頭がよくて特別奨学生なんだからお金の面は心配しなくていいし、成績が良ければその後の進学・就職も有利なんだから、こんなリスキーなことしなくていいのになー。親父が多額の借金しているとか学校の悪い面を見て幻滅したとか、それくらいの動機がないとなー。


と、ここまで動機面の文句を書き終わったので、あとは褒めです。
題材はカンニングですが、映画としては『オーシャンズ11』とか『スティング』のようなチーム犯罪もの。なので、動機面さえ引っ掛かりがなければ、あとは「どうやってこのミッションを遂行するのか」と「途中訪れるアクシデントをどうやって乗り切るのか」というのが映画の醍醐味になります。
そういう部分は、面白かった!


最初は友達を助けるため。それがビジネスになり、規模が大きくなり、方法も巧妙になる。ピアノレッスン方式のカンニング方法はラストの試験では自分の回答を覚える方法になっていて、この応用は上手いですな。


でも、どうしても「単なるビジネス」であり、親友としてのつながりを感じられなかったんですよねー。金でつながっている関係に見えた。


リンと同じく特別奨学生のバンクは留学試験の前日に暴行されて試験受けられず、STICの試験ではカンニングがバレ、ついには暗黒面に堕ちます。可哀想すぎるだろ!それに比べてリンは賢く逃げ切るんだもんなー。ラストの取り調べはどういうことだったのかな?
ここです。首謀者であるリンと犯罪に誘われたバンクの差が大きすぎて、リンに肩入れできないしバンクを贔屓しちゃうよ。そりゃ暗黒面に堕ちるよねー。


後半の試験会場からの逃避シーンですが、あの怖い白人試験官は何のためにあんなに執拗に追ってきたの?ゲロ吐いているリンを捕まえて「そんなこといいから試験会場へ戻るぞ」だって。人の心ないんか。
そして、戻っても特にお咎めなしだし。何なんだよ、お前。そして、どういう目測でリンを追ってきたのだ。GPSでも仕込んであるのか?


キャストの皆さんはよかったです!
●リン
地味で頭よさそうな顔が「ちょうどいい」。最初の地味でおぼこい感じが徐々に垢抜けていき、したたかな感じになるのもいい。スタイルいいなーと思っていたら、モデルさんなのね。
●バンク
生真面目な男の子。「お母さんが望むいい息子」って感じのいい顔。リンの悪の誘いがなければねー。
バンクは母子家庭でお母さんはクリーニング店を営んでいます。先日のタモリ俱楽部のクリーニング店特集でお店の人が「映画やドラマだとクリーニング店で働いているのは貧しい家庭のイメージなのが嫌だ」と言っていて、確かに『万引き家族』の安藤サクラもクリーニング店勤務でしたな。そのイメージは万国共通なのかしら。
●パット
金持ちボンボン役。でも嫌な感じはしない。いい意味で軽い(チャラいではなく)しノー天気。
●グレース
誰かが「タイの長澤まさみ」と評していましたが、その通りだな!とにかく輝いていて、彼女に「お願い~」と言われたらどんな無茶なお願いもきいちゃう。


うーむ。面白かったんだけど、なあ…。乗り切れずすまん。