やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『グリーンブック』 感想

切り口、側面はいろいろ


映画『グリーンブック』を見てきました。公式サイト↓
gaga.ne.jp
さすがアカデミー賞作品賞受賞作品。派手なテーマや有名な俳優陣ではありませんが、私の田舎でもなかなかの客の入りでした。肩書きって大事。


人種差別問題という面では近年では『ドリーム』、価値観や境遇の違う二人の融和の物語としては『最強のふたり』などが思い出されるこの作品。アカデミー賞受賞という面も含めてもっと近いのは『ドライビングミスデイジー』でしょうが、私この作品は見ていません…。


人種も立場も違う二人が旅をしていくうちにいろいろ気づいたり認め合ったり自身を改めたりするのは映画としてはベタな設定で、その先にあるものも着地点も何となく見えています。そういう安心安定のフォーマットで、実際いい着地をするのですが、それでも気をつけなくてはならないのが「人種差別問題」というテーマ。ひとつ間違えれば厳しい批判の的になる問題です。実際賛否両論なのですが、それについては後述。


口が達者で腕っ節は強いが教養はないイタリア系白人のトニー・リップと、ドイツ留学でピアノを学んだお坊ちゃん育ちの黒人エリートのドン・シャーリー。マンガのように正反対の二人ですが、これは実話です。
白人と黒人のコンビで人種差別問題を扱う映画だと、これまでは「進歩的な白人が黒人を擁護・教育する」という構図が多かったですが、本作は反対。粗雑な白人と上品な黒人というコンビ。
また、こういう作品は静謐で上品なタッチで描かれることが多いですが、本作のテイストはコメディ。なので間口は広く楽しく見ることができます。


実話を元にしてありますが、キャラ設定はだいぶ誇張している感じがしました。トニーの粗雑で大食漢ぶりとかドンの初登場時の「ジャングルの王者」みたいな超然とした格好とか。
※その後のドンを見るとオフでも基本フォーマルな格好をしているので、家にいるときにあんな格好しているとは思えないけどなー。
その「二人の距離」がそのまま旅のエピソードとして機能するのだから、これは作劇としてはアリです。


人種差別問題を描く作品だと、「黒人に対し人種差別をする白人→反撃する黒人・たしなめる白人→何かしらの改善」というのが旧来のフォーマットでしたが、『ズートピア』『ドリーム』など最近の作品では「俺は白人だけど黒人差別なんてしてないよ→あなたがそう思っているのは理解した(実際は人種差別の枠組みの中にいる)」という「意識していない差別」を描くのが主流で、本作もこれです。
「私は差別なんてしていません。この地方のしきたりなのです」「昔からこうなのです」「決まりだから」結果、差別してるじゃん。宿はもちろんレストランもトイレも別、控え室は物置。黒人ピアニストを呼んで演奏会をする会場ですらこれです。一般の黒人の扱いがどれほどひどかったか。
「自分たちは黒人の音楽も認める進歩的な人間だ」と自認しつつ、何も意識せず差別を続行する白人たち。それがこの時代の当たり前の社会だったのでしょう。
トニーだって「自分はストリート育ちで自分の方が黒い(自分の方がひどい境遇だ)」と言いますが、それでも食事・トイレ・宿まで隔離されることはありません。その後トニーはドンの受ける仕打ちを目の当たりにして自身の考えを改めるわけですが。


黒人だけどピアノのエリート教育を受けてきて、他の黒人とは違うドン。ホワイトハウスでも演奏したことのある、ある種白人よりも上の立場のドン。しかし一般人として街を歩けば「黒人」として差別されるドン。南部の農場で鍬を振るう黒人を見たとき、彼はどう思ったのでしょう。ピアノの才能がなければ自分もこうだったのか。才能があってもこの環境だったらその才能を発揮する機会すらなかったのか。結果教育を受けることができてこうしてコンサートツアーをしているが、自分は恵まれているのか。自分は黒人でも白人でもない。そして男性ですらない。自分はどこにも属していない。
それでも、暴力に訴えないという自分のプライドは曲げずに戦うドン。それに対し、ときには暴力、ときには買収、ときには口八丁手八丁でその場を切り抜けるトニー。この対比もいい。理想と現実、どちらかだけが正解ではない。


ラスト、車を止めて休もうと言うトニーに代わって車の運転をするドン。クリスマスだから家族に会わせようと頑張ったんですよね。優しい。
そして家に寄れよと誘うトニーをやんわりと断りつつ、やっぱり寂しくてシャンパンを手土産にトニー家を訪れるドン。このワンクッションもいい。そしてドンとハグをしつつ「手紙ありがとう」と耳打ちする妻ドロレスでラストカット。上手い!女性は何でもお見通し。



よかったです。上に書いたように物語としては鉄板のフォーマットですが、描くべきことはきちんと入っていて十分名作だと思います。
ただ、アカデミー賞作品賞受賞!というほど超絶名作かと言われるとそこまで自信はない。それでも、今年のアカデミー賞がこの作品を選んだのは時代的・政治的には十分理解できます。アカデミー賞は作品そのものだけでなく、時代と社会によっても選ばれるのだから。


そして、この作品がアカデミー賞作品賞にふさわしくないのではないかという批判。それは「黒人差別の描写がぬるい」「差別している側の白人が黒人差別を批判する演説をかます構図が我慢ならん」という批判。なるほど、気持ちは分かります。私は日本生まれの日本人なので、実際の黒人差別は肌感覚としてはまったく分かりません。それでも、この作品を見た範囲での私の考えを書きます。


まず、前者の「黒人差別の描写がぬるい」という批判。確かにそうかもしれません。あの当時のアメリカ南部なんてもっとひどい黒人差別が日常だったはずです。
でも、本作のドンは一般の黒人とは違う立場なので、この程度でいいのでは。それでも様々な場面で様々な差別を受けています。あと、身も蓋もない言い方をすると、「お話」なので映画に合った表現にするのは当然です。コメディタッチの作品にドキュメンタリーテイストは合わない。それだけの話。


「白人が説教するな問題」は、確かにその通り。黒人差別という、当事者にとってはものすごく重大な問題を軽々しく「差別はいけない」ときれい事で語るなと。確かにその通り。
でもさ、そういうシリアスな作品は別にあって、それを求める人はそれを見ればいいし、そこまで人種差別に対して問題意識を持っていない人でも「入り口」としてこの作品は機能すると思うのです。
「分かりやすい」は批判の対象ではなく、間口の広さとハードルの低さはプラスの効果だと思うのです。

『グリーンブック』は、「加害者」側の人間(トニー)を憎めない主人公にして描くことで、幅広い観客が共感を覚え、自らの差別意識に気づくきっかけを与えている。
『グリーンブック』はわかりやすくて感動的な映画だからこそ、あらゆる人々が差別問題について考える入り口になりえた。それを「幻想」と切り捨てるのは、的外れだと思う。

theriver.jp

分かりやすく「差別はいけない」ということを語っている『グリーンブック』は、それがある程度の保守性を持っているがゆえに、そのメッセージは差別者にすら届き得る可能性が大きいともいえる。

realsound.jp
どっちが正解という話ではない。「北風と太陽」のように手法の問題。


最後に。この作品の製作(プロデューサー)と脚本にはニック・バレロンガが関わっています。本作の主人公トニーの息子です。というわけで、事実を元にした作品ではありますが、いろいろ脚色はされているわけで、それはトニー側にプラスにしている部分が多いはず。ドンの遺族からは「二人は映画のような友情関係ではなかった」という批判もあったそうです。
だから、トニーは粗野に見えても憎めないキャラクターに描かれているのかもしれません。
しかし、だからこそこの間口とハードルができて、結果「誰が見ても面白い」という分かりやすい作品になったのだと思っています。『ボヘミアン・ラプソディ』にも改変があって、それが厳しいロックファンからは批判を受けつつ、そのおかげでロックファン以外にも広まって大ヒットしたように。


私は、人種差別問題映画がどれもシビアでシリアス一辺倒である必要はないと考えます。そういう意味で、本作はあくまでエンタテイメントとして楽しめる「軽さ」を持ちつつ大事なテーマもきちんと描けている名作だと思います。


グリーンブック~オリジナル・サウンドトラック

グリーンブック~オリジナル・サウンドトラック

映画『スパイダーマン: スパイダーバース』 感想

「アメコミの実写化」の正解


映画『スパイダーマン: スパイダーバース』を見ました。公式サイト↓
www.spider-verse.jp
私は、アメコミ映画をほとんど見ません。スパイダーマンという超メジャータイトルですら見たことがありません。そしてアニメもほとんど見ません。しかし、この作品はとにかく評判がいい。じゃあ見てみよう。


面白かった!ただし手放し絶賛ではなく。


スパイダーマン』はもちろんアメコミが原作です。現在アメコミ原作の実写映画はたくさん作られていますが、「コミックの実写化」って、これが正解なんじゃない?
この作品は3DCGアニメが基本ですが、ところどころわざと手描き風にしてあったりコマ割り風の表現があったり、モノローグの吹き出しをそのまま文字として画面に出したり、顔の周りに「~」を描いて「気を感じる表現」としたり、マンガそのままの表現方法(オノマトペですね)をアニメとして使っていました。
そして肝心の動きやアクションは3DCGアニメですから、縦横無尽に360度に自由自在に動き回るわけです。このアナログとハイテクの選択が非常に上手い。


主人公マイルスはブルックリンに住む黒人の少年。成績は良くて地元から少し離れた進学校に通っています。家族からも愛されていて、映画によくある逆境の生い立ちではありません。まったく普通、もしくはちょっと恵まれている環境。
そんな環境であっても、いや、どんな環境であっても、思うことや感じることはみんなと同じ普遍のこと。周りは自分をどう見ているんだろう。周りに合わせて虚勢を張らないといけない。思春期、揺れ動く心と体。
これは、ブルックリンや黒人や少年は関係ありません。どの場所でもどの人種でもどの性別でも、現在若者・学生でも過去そうであった人であろうと、みんなに共通で普遍の感情だと思います。
つまり、この物語の主人公はマイルスであり私、私たちなのです。この映画は、俺の物語だ!


優等生であり続けることに疲れたマイルスは、チョイ悪オヤジの叔父さんのところへ遊びに行きます。たまにグラフィティを描くのが彼の趣味なのです。
※ここ、子供に非行(っていうほどの行為じゃないけど)をそそのかす場面で、物語上は違和感ないのですが、こういう場面って最近の邦画では見ないなあと思いました。物語上の必然がないから描かれないだけかもしれませんが、非行を助長する描写は描きにくいのかなあ。それが上からの指示なのか自主規制なのかは分かりませんが。
そしてここからクモによる感染、ピーター・パーカーとの出会い、別次元の発生という物語本編が始まります。


ネットを見ると別次元のスパイダーマンたちの扱いが薄いという意見がありますが、2時間で描くなら仕方ないと思うので、私は擁護します。それよりも白黒ハードボイルド風、日本アニメ風、手塚治虫ひょうたんつぎ風と、絵のタッチが全然違うキャラを同じ世界に存在させる手法に感心しました。それだけでもう十分。


新米スパイダーマンのマイルスは、まだ力のコントロールが上手くいかないため、他のスパイダーマンたちの足手まといとなってしまいます。他のスパイダーマンたちは悪気なく「俺たちに任せろ」と言いますがマイルスは悔しい。だって、ピーターと約束したんだもの。自分だってできるはず。自分がやらなきゃ。
そして同時期に父親からの「お前を信じている」という言葉。ここで「躓き→落ち込み→復活」という王道の流れは完璧。
ただ、個人的には技の習得やピーターとの師弟関係はもっと描いて欲しかったなあ。気持ちだけでなく技術も向上していてほしい。


意を決したマイルスがメイおばさんの地下室でコスチュームを選び、自分のグラフィティの技術を使ってオリジナルスパイダーマンになるところ、よい!
※メイおばさん、何でこんなにすごい地下室持っているの?『バットマン』や『アイアンマン』レベルだよ!
そしてクライマックスは『サマーウォーズ』の電脳空間をさらにポップで極彩色でハイパーでサイバーにしたような世界で戦い、キングピンに勝利してめでたしめでたし。


物語は、王道中の王道。普通の人がヒーローの力を身につけ、悩みながらもその力とその責任を背負い、ヒーローとして自立していく。
映像の情報量がめちゃめちゃ多いので、物語の筋はシンプルな方がいい。バランス取れています。


私はアメリカの文化(ファッションや音楽)も分からないし英語も分からない。アメコミも分からないしスパイダーマンも分からない。劇伴の歌手や歌詞にも意味があっただろうし、部屋の壁のポスターや街の広告にも意味があっただろうし、アメコミやスパイダーマンについてのオマージュなどもあったでしょう。
それらがほとんど分からなくても十分面白かったので、知っていたらもっと面白かったんだろうなあ。


そして、この作品の最大のテーマ「ヒーローは選ばれし人しかなれないのか?」に対する「誰もヒーローになれる!」という回答。これについて私はあまり賛同しないんだよなー。テーマに賛同しないだけで映画は十分面白かったのですが。
選ばれし人だからヒーローなんじゃないの?誰でもヒーローになれたら、それはもうヒーローではなく普通の人なのでは?
マイルスだって普通の人がヒーローになったのではなく、あのクモ(あのクモに描かれていた「42」はどういう意味があるのですか?)に噛まれたからスパイダーマンになったわけで、本人の意思ではないし「選ばれし人」ではありませんが、噛まれなければヒーローになる前提条件にも立てないわけで。
物語の途中でも「お前は才能がある」とか言われていましたが、キャラ設定として何か特別な才能があるわけではなく、いたって普通の少年として描かれています。だからこそ「普通の人でもヒーローになれる」なのでしょうが、うーむ。


今の日本は「何もしなくてもあなたは素晴らしい」「ナンバーワンでなくてもオンリーワン」「個性こそ素晴らしい」という教育や社会の空気や子育てやネット上のポエムが蔓延していて、私はそこに違和感を持つのです。型があってからの個性だろ。基本があってからの個性だろ。押さえつけても出てきちゃうのが個性だろ。何もなくて出ているのは野生と本能と粗雑だよ。


この「誰でもヒーローになれる」は、スターウォーズ『最後のジェダイ』でも描かれていましたね。現在のアメリカでもこういう空気・流れなのでしょうか。
そうであってもいいけど、そうであるならマイルスの「個性」がスパイダーマンとしての能力に反映していたり、ラストの戦いでその個性が活きる勝ち方を見せてほしかったです。


まあ、そんなことは小さいこと。青春映画・ヒーロー映画として素晴らしかったです。「大いなる力には大きな責任が伴う」というスパイダーマンの命題も本質は変わらぬまま現代にアップデートされていたし、エンタテインメントとしてとても上質な作品でした。


ついでに。
SFやアクションはお金がかかるので日本で制作するのは難しいですが、アニメならできるんじゃない?イケメン王子とか難病ものとかの安パイに逃げなくても、テーマとして難しい作品だとしても、エンタテインメントにすれば表現できるしヒットするんだよ。日本映画の人、悔しくない?


RHYMESTER47都道府県ツアー@千葉LOOK に行ってきました! 感想(その2)

ライブ全編サビだけ!サビだらけ!


前回のお話↓
ese.hatenablog.com
ここから怒濤の後半戦。活動休止前のRHYMESTERをお見せしよう。
『オイ』
盛り上がらないわけないだろ!そしてこの日のエリートお客さんたちはもちろんかぶせ完璧!いやもう、ライブは演者だけでなくお客も含めて作り上げるものってのは本当ですね。何か「うねり」というか「波動」みたいなものを感じましたよ。


そのまま続いて『逃走のファンク』
この曲ライブで聴くの久しぶりな気がする。昔ロックインジャパンで聴いたなーとか思い出しました。
この曲、音源としてはそんな大好きではなく、何でシングルなんだろと思っていましたが(『WELCOME2MYROOM』の方が何でシングルなんだよと思います)、この日は完全に爆発していましたね。こんなにアガるのか!音源よりもライブで化ける曲。


さらにRun-D.M.C.『Walk This Way』のトラックで『We LOVE Hip Hop』
この流れでこのトラックでこの曲!だーかーらー、盛り上がるに決まってるだろ。途中宇多丸さんはスティーヴン・タイラーの「ウォークディスウェー↗!!」とシャウトしておりました。高音出るじゃない!


ここでMCあったはずだけど、もう何もお ぼ え て な い。
D「睡眠大事だよね」
宇「睡眠の曲作ろうかって話あったよね」
D「こうやってテーマだけある曲いっぱいあるよ」
宇「『死のブランコ』とかね」
D「タイトルだけ決まっていてまだ作ってない曲。29年前くらいに話し合ったけど、何を歌っていいか未だに分からない」
そうだ。この辺でDさんが上着を脱ごうとして、汗で脱ぎにくいため宇多丸さんが脱ぐのを手伝うというBLチラリという場面がありました。仲良きことは良きことかな。


『ザ・グレート・アマチュアリズム』!最近は後半の宇多丸ヴァースはカットされることが多かったですが、今回はフルコーラスで「社長さん~」も聴けました。まあ、この部分は全部私たちが歌うわけですが。


『肉体関係 part2』はやっぱアガる!(同じことばっかり書いていてごめんなさい…)
今回は「アナコンダ」はそのまま。「キスやポーズも」はやっぱり「フェラやポーズも」でした。ライブで「キス」と歌ったことなんて数えるほどしかないんじゃない?
後半の剣さんパートは宇多丸さんとDさんが分割してマイクリレー。そしてエンディングは「放置プレイ」でメンバー3人フリーズ!そのまま会場暗転!


暗闇の中3人は微動だにしないまま、流れてきたのは『ウワサの真相』
私は『ウワサの伴奏』で初めてRHYMESTERに出会ったので、この曲・このアルバムにはものすごく思い入れがあります。もちろんサンプリング元の『サンシャイン・オブ・ユア・ラブ』も好きだし。
曲中の出来事など何も覚えていない。


宇「世界中で、グループとして生き残っているのってマジで誰かいる?」
D「スチャくらい?」
宇「あとデラ・ソウルとか」
D「それくらいか」
宇「だから、もうずっとやります!」
いい宣言聞きました!


『Lights,Camera,Action』の後『B-BOYイズム』
『B-BOYイズム』なんてRHYMESTERの中でいちばんのクラシックでいちばんの盛り上がり曲ですが、実はこの日はそこまで爆発しない。他の曲が強すぎるから。この曲ですら並列にしちゃうほどこの日のセトリは鉄板で鉄壁。
そして本編ラストは『耳ヲ貸スベキ』
そうか。インディーズ時代の不滅のクラシックであり「血が騒ぎ出すこの世紀末」「来たるべき世代に託す祈り」「次の世紀に向けて生き残る元気」というリリックだもんな。これまでの歴史とこれからの歴史。これまでの軌跡と奇跡。これからの進化と深化。


というわけで本編終了。まだ19時前。早いし短いけど、濃い!
手拍子をしながら「帰りたくない」「フワフワ!」と『ブレックファストクラブ』のリリックとアホみたいな合いの手でアンコールを待ちます。
そしたら、すぐ出てきた!体感1分。実際もたぶん2分くらい。もっと休んでいただいていいんですよ。
グッズの紹介。47都道府県ツアー日本地図Tシャツは
宇「行ったところを黒で塗るんですか?」
D「最終的に単なる黒Tシャツになるよ!」
B-BOYイズムTシャツについて
D「これ、赤の色を細かく指示出して、真っ赤ではなくちょっと暗めの血の色っぽくしてもらった」
このあと、何かいろいろしゃべっているうちにアンコール1曲の予定がもっと増やそうか?という流れになり、結果『After6』『カミングスーン』
話の流れからするとたぶん『カミングスーン』が当初のアンコール予定だったのが、『After6』が急遽追加になった感じでした。わーい、得した。でも今後のツアーではこれがデフォルトになっているかもしれないけど。


ラストは3人が手をつないでカーテンコール、そしてハイタッチの嵐。3人とタッチできたー。うれしいー。
Dさんがブログ用にスマホを取り出してハイチーズ。
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終わってしまいました。時刻は19時過ぎ。2時間ちょっとで終わってしまいました。短いけど、濃い。ライブ全編がサビだけ、サビだらけの2時間でした。
良すぎて濃すぎて、でも物足りない。もっとやってくれてもいいんですよ。あと30分くらいやってくれてもいいんですよ。
そこで宇多丸さんの疲れや帰京時間をまったく考えない私からの一方的な提案。『耳ヲ貸スベキ』の後『And You Don't Stop』を歌って、そこからアルバムごとに1曲ずつ現代に戻ってくるのはどうかしら。


そして皆さん、この時間に終わるということは、相当な場所でも日帰りができちゃうぞってことですよ…!時間がなくて遠征は無理だと思っていた会場も、日帰りで参加できちゃうぞってことですよ。さあ、行きましょう。さあ、さあ!
RHYMESTERのことだからMCは当然毎回違うわけですが、たぶんセトリも毎回違うはず。各アルバムから1~2曲じゃ完全に物足りないわけですから、行けば行くほどあの曲もこの曲も聴けちゃうはず。さあ、さあ!
どの会場も小さいので、最後列でもアリーナ会場最前列より近いわけです。どの場所でも間近で体感できるわけです。さあ、さあ!
私もあと何度か行きます。ああ、もう楽しみ。


30周年、47都道府県ツアー開幕。これは伝説の幕開けです。メンバーの皆様、スタッフの皆様、ご自愛しつつ、毎回完全燃焼してください。そしてヘッズの皆様、ライブを作るのは演者とお客です。キングオブお客の一員として、自分も周りも楽しめるよう、完全燃焼してください。


今回のセトリ。普段はネットを徘徊してセトリを見つけるのですが、さすがに初日なので見つけられなかった。しかし今回はアルバムを遡るという構成だったので、CDの裏面を見ながら書くことができました。
1.待ってろ今から本気出す
2.Future Is Born
3.Back & Forth
4.Kids In The Park
5.Still Changing
6.The Choice Is Yours
7.グラキャビ
8.POP LIFE
9.ONCE AGAIN
10.オイ!
11.逃走のファンク
12.We LOVE Hip Hop
13.ザ・グレート・アマチュアリズム
14.肉体関係 part2
15.ウワサの真相
16.Lights,Camera,Action
17.B-BOYイズム
18.耳ヲ貸スベキ
~アンコール~
19.After6
20.カミングスーン


RHYMESTER47都道府県ツアー@千葉LOOK に行ってきました!感想(その1)

伝説の幕開け


RHYMESTER、結成30周年おめでとうございます。そして47都道府県ツアー、先は長いけど頑張ってください。
で、初日。千葉LOOK!ツアーをここで始めるとそのツアーは成功するらしい。そして、ここでツアー初日を迎えるミュージシャンには特大ポスターでお出迎えという特典もあります。
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カッコいい!


グッズはTシャツのデザインに惹かれなかったのでタオルとキーホルダーのみ購入。キーホルダーの絵柄はランダムで、今回私は『ロイヤル・ストレート・フラッシュ』でした!わーい。
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ラバーバンドも欲しかったのですが、16時前くらいに着いたのにもう完売でした。えー、このキャパ(千葉LOOKは200人!)なのにもう売り切れ?いくつ作ったの?足りないよー。キャパ分作って残りは次の会場でまた売ればいいのに。それだと価値がないか。
あと、グッズを買うと先着でステッカーをもらえます。千葉では『俺に言わせりゃ』でした。メンバーが黒歴史として封印している忌まわしき過去。スタッフが初日だから最初のアルバムにしたのかな?今後もリリース順なのかな?


さて、入場。千葉LOOKはロッカーもクロークもなく、あるのは棚だと聞いていたのですが、実際会場に入ったら、まさに棚!でした。棚a.k.a棚。ただ棚があるだけ。(他人でも)出し入れ自由。完全な自己責任と信用。これでやっていけるんだから、人は信用で何とかなる。同じハコに来た同士だもの、悪いことなんてできっこない!
ドリンクチケットも、チケットやコインを渡すのではなく、チケットの半券に「アルコール」とスタンプを押すだけ。うん、これでいいじゃん。


今回、なかなかいい整理番号だったので最前列も行けるかなと思いましたが、あまりに会場がコンパクトなため、無理でした。ステージ横幅5メートル足らず。最前列は10人程度でいっぱい。これ、メンバー多いバンドだったら身動き取れないぜ。さらにステージ前のモニターから即柵が立っており、ステージと客席との距離ゼロメートル。すごいハコだぜ、千葉LOOK
今回は下手(Dさん側)待機。


※ここから本編書きますが、まだツアーは始まったばかり。ネタバレ全開で書きますので、これからツアーに行く人はまだ読まない方がいいかも。行った後、自分の行ったライブとどこが変わっていたか答え合わせするのがよいと思います。


さて、開演。時間ぴったり(もしくはちょっと早かったかも)に暗闇の中JINさん登場。「JINさん」ではなく「山本~!」「やまもつ~!」と呼ばれ、照れ笑いのJINさん。かわいい。
アルバム『リスペクト』の『R.E.S.P.E.C.T』のJINトロから宇多丸Mummy-Dの呼び込み。
近い近い!
宇多丸「ツアー初日、ここで伝説作らないと30周年の名がすたる。ただし、30周年だけど、今から本気出す!!」
『待ってろ今から本気出す』
www.youtube.com
そりゃこれで始めるよな!まだサブスクとダウンロードでしか出していない新曲なのに、皆さんかぶせ完璧!さらにサビでは「ヘイヘイヘイ~」「リーリーリー~」まで入れる!皆さんお客としてエリート過ぎ!素晴らしいキングオブお客!
いやもう、初日待ってました!の熱と圧がすごい。ここに燃えやすいものがあったら着火しちゃったんじゃない?それくらい、「爆発!」していました。


続いて『Future Is Born』。最新が最高のRHYMESTERですから、盛り上がるに決まっている。
さらにノンストップで『Back & Forth』。この曲の掛け合い・マイクリレー、盛り上がるに決まっているだろ。言わせんなよ。


ここで最初のMC。
宇多丸千葉LOOK、マジ即完だったらしくて、ここに来ている皆さんはエリートですよね」
Mummy-D「ここでツアー始めると、みんなツアー成功するんだって。でもさ、ツアー失敗ってどういうこと?」
宇「47回もやると、不仲とか事故とかいろいろなことあって、空中分解とか」
D「誰かが問題起こすとかね」
といきなり緩いMC。いつもの「粋なライムといなたいブレイクビーツ」のくだりですらDさんタオルで顔を拭いていて合わせられないという緩さ。
宇「まあ、初日なんでゲネプロを兼ねている部分もありますからね」


この日の衣装。宇多丸さんは白黒格子模様にPUMAのアルファベットをあつらえたTシャツに、黒地にグラフィティっぽい書体の文字(PUMAとか)やイラストが入った上着(あれ何?カーディガンでもないしジャンパーでもないし。何といえばいいの?どなたか教えてください)。
Dさんは黒地にグラフィティっぽいガイコツが描かれたTシャツに、白黒格子模様の上着。JINさんは黒地にグラフィティっぽいデザインがいろいろ描かれた長T。


『Kids In The Park』ではおなじみ「いつ遊ぶの?」「今でしょ!」のコール&レスポンス。ここでDさんがステージ前の台に乗って「今でしょポーズ」をしてくれたのですが、そのときの手がきれい。腕もきれい。毛がなくて筋肉質で美しい。女子はこの手だけで惚れちゃうね。
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『Still Changing』では宇多丸さんのリリックが沁みる。

勝手に建った金字塔 毎度ぶっこわして先んじとくと
迷えばフツー先人に問うが こちとらとうに前人未踏さ
ってな調子で四半世紀 だっていうのにいまだに全盛期
世界はそれを「奇跡」と呼ぶんだぜ 「懐かしい~w」はたぶん余分だぜ

この曲はRHYMESTER活動25周年のタイミングで出した曲ですが、今でも完全に通用するし、今の方がより強くリリックが響く。
今回のライブは30周年ツアーなので過去の曲をたくさんやってくれたのですが、どの曲も「今でも通じる」「今の方が説得力ある」「あの頃から変わっていない」「現代の予言」と、今歌う意味のある曲ばかりでした。


『The Choice Is Yours』終わりで再びMC。
宇「お気づきの方もいると思いますが、今回のツアー、最新の曲から時系列を遡る構成になっております。つまり、もう『ダンサブル』と『Bitter, Sweet & Beautiful』の曲はやりません!」
えー!
宇「俺らも新しい曲やりたいよ。古い曲は俺らからするとやっぱ至らぬところもあるし」
D「でも、93年のアルバムとかは音源も残ってないしリリックもないからやれないんだよな(すっとぼけ)」
『俺に言わせりゃ』のことかー!ここで私が「覚えてるよー!」と叫んだところ
D「覚えてる?ごめん、俺は覚えてない」
と返していただきました。あざーす!


『グラキャビ』『POP LIFE』とミドルテンポの曲を並べたのはライブの構成のためで、実際この後は怒濤のアゲアゲ曲しかない(というか、過去の名曲を並べたら必然的にそうなるよな)という鬼のような神のようなセトリでした。そうじゃなきゃ『ダーティーサイエンス』『POP LIFE』からもっとやりたい曲あるもんな。


宇「次の曲は、俺たちが不死鳥だってことを証明した曲だ。こんなグループ他にいるかってことを証明した曲だ」というわけでもちろん『ONCE AGAIN』
この曲はもともとベタでエモい曲なので感動するけど、ベタでエモいからちょっと連発は食傷しちゃうところもある(その辺、歌ものポップスとラップの差でもありますね)のですが、久々にライブで聴いたら沁みる!ちょっと泣いちゃったよ。


宇「ここまでが活動再開後の曲だけど、活動再開後の方がよくね?」
その通り!
宇「活動再開後の方が調子いいグループって、います?ひとグループもいないと思うよ。普通、活動休止するのは仲違いだからね」
D「その辺は20代で経験しておいたからね」
あと、『ONCE AGAIN』の歌詞を自画自賛するDさん。
D「『己に立てるなその中指を』って、自分で歌っていながらやっちゃいそうになるときあるもん。だから、『ありがとう、RHYMESTER』って思うよ」
いえーい。
宇「ここから活動休止前の曲やるけど、凝縮するとビッグチューンしかないから、きっとみんな疲れて終わると思うよ」
D「なぜかっていうと、若いから、クールダウンする曲を作ってないの」
宇「あと、こっから感じ悪い歌詞が増えてきます。何をこんなに怒っているんだって」
D「その辺もね、若いから」
なるほど!


と、ここから怒濤の後半戦になるのですが、文字数も増えてきたのでここで一旦切ります。続きは次回。


待ってろ今から本気出す

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2019年2月ツイートまとめ(その2)