やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『ひとよ』 感想

言葉は希望にも、呪いにもなる


映画『ひとよ』を見てきました。MOVIX川口。
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hitoyo-movie.jp
とてもよかった!


(以下、ネタバレあります)


この作品は、舞台が原作なんですね。映画を見ている間はまったく「舞台っぽいな」とは思いませんでした。こんな話、舞台でどうやったんだろ。
どの登場人物の言い分も分かるしどの登場人物にも肩入れしちゃう。明確な善と悪・正しさと間違いは実際の生活の中にはない。ものすごくバランスの取れた脚本でした。
脚本は高橋泉さん。白石監督作品だと『凶悪』で白石監督と共同脚本で参加しています。なるほど、だから面白いんだな、と思いきや『サニー/32』もこの方。むむむ。でも、この作品は間違いなく素晴らしい脚本でした!


日々暴力を振るう父親を、子供を守る覚悟を持って殺めた母親。刑を終え、15年後に母が戻ってきたことで起こるドラマ。
と思っていたのですが、そうではない。この15年の間にきょうだいたちはいろいろなことの中で生きていて、母が戻ってきたことでそれに向き合わざるを得なくなる、というお話です。


子供を守るために殺人を犯した母。しかしそのせいできょうだいたちは苛烈な世間の風の中を生きていかなくてはなりませんでした。
次男雄二(佐藤健)は「父親がいた方がよかった。殴られるのを我慢すればいいだけだし」と言う。その日々は確かに苦しいかもしれませんが、高校を卒業すれば地元から出ることができる。父親からの呪縛から逃げることができる。
確かにそうかもしれません。でも、そのまっただ中にいたらそんなことを考える余裕はあったでしょうか。今だから言える後出しじゃんけんなのかもしれません。
周りからのイジメにより美容師の専門学校を中退した長女園子(松岡茉優)。本人はそれについて恨み言は言いませんが、雄二はそれについても恨みを持っている。しかし、父親がいたら専門学校に行くことすら叶わなかったかもしれない。専門学校を出ても美容師として食べて行けたかどうかは分からない。そもそも子供の頃の夢がそのまま叶わないことなんてざらにある。果たしてどちらがよかったのか。
長男大樹(鈴木亮平)は吃音に悩みながらも結婚をし、娘もいる。しかし、夫婦生活はうまくいっていない。過去のことは奥さんに言えず、日常でもしっかりとした話し合いができていない。そして、時折手を上げてしまうこともある。母親がやったことは自分たちを守るためと理解していても、それを妻や世間に言うことは憚られる。
そして、母親こはる(田中裕子)は、それだけの覚悟を持って手を汚したのだから、今になってあのことが間違いだったとは言えない。


どの人の言い分も分かる。誰かが正義で誰かが悪、誰かが正しくて誰かが間違っているということではない。
この作品は、この主要登場人物だけでなく、その他の人たちもみんなそれぞれの事情を抱えながら生きています。
こはるの甥である丸井(音尾琢真)は急遽会社を継ぐことになり、以来ずっと会社のために働いてきた。いろいろなトラブルがあってもいつも笑顔で対応してきた。しかし、泥酔すると「本当は漁師になりたかった」と本音をこぼす。
タクシー会社の事務員である柴田(筒井真理子)は、痴呆の始まった親の介護で毎日大変。たまには自分の時間も持ちたいと思うが、世間の目もあるため日々徘徊する親を探しに行く。
大樹の妻である二三子(MEGUMI)は、夫婦の会話がないことに悩み、離婚を持ちかける。映画の当初は「面倒くさいヒステリックなMEGUMI」に見えるのですが、途中から彼女も「家族」に悩んでいることが分かり、こちらにも肩入れしてしまう上手い作り。そしてそれは大樹が家族というものをどう扱っていいか、どう作り上げていけばいいか分かっていない(もしくは恐れている)ことにも理由があり、これもまた「分かるぞ」になってしまうのです。
ついでに、大樹の登場シーンで従業員とのやり取りで彼が軽く扱われていることがすぐ分かる描写もものすごく上手かった!


「あなたたちはこれから自由だ。何にだってなれる」母親が自首する前に子供たちに言った言葉。これは彼らにとって希望の言葉だったわけですが、科学者を夢見ていた大樹は電気屋の店員、美容師志望だった園子はスナックのコンパニオン。雄二だけが子供の頃からの夢だった小説家を今でも目指しています。そのためにフリーライターとしてエロ本に記事を書く日々。
雄二はあの日たまたま録音していた母の言葉を未だに持っています、つまり、彼がいちばん母の言葉を信じ、その通りにしようと思っていたのです。希望の言葉が、いつしか呪いの言葉に。自由にならなければならない、夢を叶えなければならない。夢は現在を拒否する拠り所になり、現在を縛る枷になる。
母親を否定してきた雄二が、いちばん母親の影響下から出ていないのです。


途中、スナックで岡村孝子『夢をあきらめないで』を歌う皮肉もとてもよかった。この選曲!呑気な歌詞!そして、松岡茉優の歌上手い。


途中まで物語本編に絡んでこず、別の父子の話だと思っていた堂下(佐々木蔵之介)が、後半の息子の裏切りにより爆発。母親を乗せてウイスキーをラッパ飲みして暴走します。
母親を追ってタクシーに乗り込むきょうだい3人。15年前のあの日、母親を乗せた車には追いつけなかったが、果たして今回は。
堂下はかつてヤクザだったが、現在は足を洗い酒も止めて真面目にタクシー運転手として働いている。17歳の息子と久々に会って焼き肉を食べてバッティングセンターに行って、男同士の楽しい時間を過ごす。別れ際に小遣いを渡すのも、嬉しいから苦にならない。
しかし、息子はシャブの運び屋になっていました。お前、どうして。だってアンタの息子だから仕方ないだろ。
都合が悪くなると親のせいかよ。ここでも堂下の気持ちは分かります。やっていることはダメだけど、気持ちは分かります。子供のために自分の人生を投げ打って犠牲にしてきた母親が帰ってきたのに、息子たちの態度はなんだ。親がどれだけ子供のことを想っているか、子供は全然分かっていない。
自暴自棄になった堂下は母親を道連れに海へ飛び出そうとしますが、すんでの所で雄二が横から突っ込み車を停止させます。そして心に溜まっていた気持ちを堂下にぶつけます。ここ、セリフ何も覚えていないけど、やるせなく、どうしようもない気持ちがこぼれ落ちるいいシーンでした。何も覚えてないけど。


ラスト、くだらないことで笑い合うきょうだい3人。このとき、雄二の表情からは険が取れ、以前より穏やかな表情になっています。この微妙な変化も上手い。
本筋とは関係ないけど、「デラべっぴん」のイントネーションは『マジックアワー』の「デラ富樫」と一緒だということを学びました。


いやー、よかった。
何となく、これは白石版『万引き家族』なのかな?なんて思いました。白石監督が描く家族の形、家族と社会の形。
それにしても、ここ数年「社会的に恵まれない個人・家族」「冷たい社会」「その結果起きる悲劇(因果関係は別にして)」という作品多くない?『万引き家族』は2018年ですが、今年は私が見ただけでも『天気の子』『ジョーカー』『楽園』、そしてこの作品。
これって、実際の社会がこういう状況だからこういう作品が生まれるのかな。現実の軋みが物語を生んでいる。もっと景気のよい社会ならもっと呑気でハッピーでアホらしい作品が多くなるのかな。何で現実が苦しいのにもっと苦しい物語を欲してしまうのか。今の時代に呑気でハッピーな作品はリアリティを感じられないのかな。自分でこういう作品をチョイスしておいて自分でよく分かっていない。


あと、タイトルの『ひとよ』は「一夜」と表示されていたし劇中でも「一夜」という意味で使われていましたが、「人よ」というダブルミーニングもあるんでない?
人に対する希望や信頼、すがるような気持ち、ダメな自分、それらをひっくるめて「人よ」と託しているような、そんなニュアンスを感じ取りました。勝手に。


役者は、全員優勝!
音尾琢真筒井真理子MEGUMIなど脇の役者までしっかり見せ場があってとてもよかったです。しかし、浅利陽介はいい人顔と長い襟足がマッチせず、韓英恵は登場シーンは多いけどおいしい場面が少なく、もったいなかった。韓さんにも何かバックグラウンドがあればよかったのにと思いますが、それはさすがにおねだりが過ぎる。
佐藤健
全員優勝の中、佐藤健が統一チャンピオンに決定しました!
ずっと眉間にシワを寄せ、諦観から来る斜に構えた態度。チンピラや不良とは違うアウトロー(でありたい)感。佐藤健、こういう悪い役いいよ!でも『るろうに剣心』のような王道ヒーローもいいし『何者』みたいな「誰でもない受け身の演技」もいいし、つまり彼は何でもできるんじゃない?
彼の説得力が物語の説得力をさらに強くしてくれました。統一チャンピオン、おめでとう!
鈴木亮平
日本のデ・ニーロ、クリスチャン・ベールである彼が今回やるのは吃音に悩む普通の31歳。長男だから大人らしく振る舞おうとする部分と、気弱だから前に出たくない部分が上手くミックスされていました。そして後半の爆発。ここは脚本と演技の相乗効果!
吃音の演技もとてもよかったです。
松岡茉優
うーむ、彼女だけ、ちょっと演技がウザいなと思ってしまいました。監督との相性なのかなー。
●田中裕子
別の女優さんだったらまた違ったのかな?田中裕子さんの女優作品を見ていないので、よく分からない。よかったのですが、田中裕子「だから」よかったのかは分からない。
冒頭の「お母さん、今、お父さんをこ、殺してきました」の「こ」の部分がものすごくよかった!一瞬言い淀むけど、言わなきゃいけないことだし決意を持って行ったことだから、すぐにちゃんと言うところ。ここにタメがありすぎるとこの母親のキャラが違ってくる。
●大悟(千鳥)
公開前からこの名前があったのでどんな役かと思ったら、大悟でした。


べた褒めですが、少しだけ文句付けるところ
●あんなちょっと当たっただけで死ぬかな。もっとがっつりぶつかるか轢いてほしかった。
●中傷ビラ、剥がれやすすぎ。あんなにきれいに剥がれちゃダメ。ポストイットかよ。もっと糊べっちょりで後始末大変な感じで貼ってほしかった。
●「デラべっぴん」、雄二が中学1年生のときの「デラべっぴん」はあんな本じゃない。表紙に登場する女優さん(写真も名前も)まで当時の通りにしてくれたら完璧だったのに!
でも、べた褒め!白石監督、『孤狼の血』超えたんじゃない?
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ひとよ (集英社文庫)

ひとよ (集英社文庫)

復活してほしい!『マンモス展』 感想

一度でいいから食べてみたい


日本科学未来館で開催されていた『マンモス展』に行ってきました。公式サイト↓
www.mammothten.jp
この記事を読んだらぜひ会場に行っていただきたいのですが、11/4で閉会しちゃった…。


とても面白かったです。最近の展示会・博物館は写真撮影OKのことが増えて嬉しい。「心のフィルムに」なんて言うけど、無理だよね。覚えてられないよね。写真、ありがとう。
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入り口前には映えるフォトスポットがありましたが、何せひとりなもんで、ただ撮影するだけ…。
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いきなりこんなマジのやつが!冷凍ってすごい。永久凍土ってすごい。
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せいこうさん!
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臼歯、でかすぎ。これ、直径50センチくらいあります。ユザーンのタブラよりでかい。
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食事に16時間。起きている間はひたすら食べていたのね。夢のような生活だ。
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毛が生えているからケサイ、草原に住むからステップバイソン、洞穴に住むからホラアナライオン。ひねりなさ過ぎ!
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もし今の時代にウサギがいなかったら、この骨格からこの耳は想像できたのかな。そういう意味で恐竜の姿もいつも眉唾だなーと思っている。


さあ、いよいよマンモスですよ。
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絶滅の理由は②と③の両方だろうな。環境の変化に適応できなかったから。恐竜もそうですが、でかい奴は簡単に変化できない。強い者が生き残るのではない、適応した者が生き残るのだ。
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マンモスの語源。結構テキトーなのね。
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こんなに分かっちゃうの?現代科学、すげえ。
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マンモス展オフィシャルプログラムより。上手いな。


ここからは永久凍土から発掘されたすごい奴らのターン。
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私の写真の腕前でどこまで見えるか分かりませんが、目(というか瞼)や肛門まではっきり分かるレベルで凍っていたのです。本当に「馬、そのまま凍らせました」なんです。ただし4万年前。永久凍土、すげー。
もちろんこの状態を維持しなければならないので、マイナス20度以下の環境で展示。そりゃそうだよね。
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お次は、ついに来た!「マンモス復活」の時間です!
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私の写真のせいでこのすごさが伝わらない!くそう!いい鼻なのに!


ここからは実際にマンモスを復活させるプロジェクトの紹介。
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この、漫画風に伝えていくのがとても面白かったです。
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お尻とか足の裏とか、リアルだなあ!
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科学的・技術的にマンモスの復活は可能かという期待と、それは生命の倫理を侵すことではないかという危惧と、それで生まれたマンモスは幸せなの?という素直な問いと、いろいろ考えさせられる問題ですね。
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ラストにマンモスの展示があったのですが、残念ながら撮影禁止。
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と思ったが、出たらすぐに完コピレプリカが置いてありました。こんな完コピだったら本物を撮影可にしても変わらないくらい精巧な出来。
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出口に髪の毛と毛皮を着て槍や棍棒を持って撮影するコーナーがあり、私はひとりだったのですが係員が撮影してくれるということなので意を決して頼んで撮影してもらいました!マンモス倒すぞー。写真は載せないけど。


楽しかった。
私、恐竜も好きなのですが、最近はもうさすがに食傷気味というか飽きたというか新しい発見がないのであまりワクワクしなくなっちゃいました。しかし、マンモスは違うぞ。2億年前~6500万年前よりも、400万年前~1万年前だろ。人間と同時代を生きたんだぜ。人間が倒したり食べたりしていたんだぜ。想像するだけでワクワクするだろ。
そして、永久凍土のおかげで、化石でなく「そのまま」で眠っている姿を見れるんだぜ。マンモスサイコー。
個人的には倫理的な問題はあるにせよ、マンモス復活させてほしいなー。そしてゆくゆくはピクルとか宮本武蔵とかアクメツとかも作れるようになってほしい。


この展示会は、日本科学未来館では長期間実施しましたが、ぜひ全国各地でツアー展示してほしいです。冷凍展示など非常にお金がかかることは承知していますが、この知識的興奮はぜひ全国の少年少女にも味わってもらいたい。


マンモス ―絶滅の謎からクローン化まで―

マンモス ―絶滅の謎からクローン化まで―

岡村靖幸2019FALLツアー「やばいよ!この気持ち。」@中野サンプラザ に行ってきました! 感想(その2)

新規と常連と


前回のお話。
ese.hatenablog.com
アンコールは、何やらビッグバンドジャズのようなイントロからスタート。むむむ?と思っていたら岡村ちゃんがオベーションを掻き鳴らし、『Vegetable』でした!
確かに、うねるベースやアレンジを彩るホーンが素晴らしくマッチしていました!こっちの方をオリジナルにしてもらってもいいくらい!


続いては『マシュマロハネムーン』『セックス』へのおなじみのメドレー。こんなに大っぴらに「セーックス!」と叫べるのはこの曲だけ。あとはクリープハイプ『HE IS MINE』くらいか。もっとあるかな。
ここでコール&レスポンスがあったのですが、メロディもややこしい上に岡村ちゃんが何を言っているか分からず(「ドュビドゥンドュン」みたいなやつ)、こんなに高度なコール&レスポンスは初めてでした!
あと、この曲は歌詞が並列的なので覚えられない。岡村ちゃんも昔は足下にカンペ貼ってガン見しまくりで歌っていましたが、今回は何も見ずにちゃんと歌えていた!私はまだ覚えられてないのに!
※今回は足下にモニターが置いてあったのですが、これ、最初からあった?ここに歌詞が表示されていたという可能性はなくない?
もうひとつ、たぶんこの曲だと思うのですが、曲の途中でサックス上杉さんソロを呼び込んで、上杉さんが自分の足下のモニターを蹴って飛び出してソロを吹く場面がとてもカッコよかったです!しかも2回やってくれた。


『揺れるお年頃』ってアルバム『幸福』の中では箸休め的な佳曲だと思っているのですが、ライブでは結構歌ってくれる。岡村ちゃん、お好きなのかしら。
この曲はさわやかな曲なのに、歌詞に「さすって」があるばっかりに岡村ちゃんはマイクスタンドをさすりまくります。そうか、さすりたいからこの曲なのか(たぶん違う)。いいんだ、もっとさすっていいんだよ。


ここで再び横倉さんMCタイム。物販の宣伝と、今度公開される大橋裕之さん原作の映画『音楽』の宣伝。岡村ちゃんが声優で出演しているそうです!どの役なのかは内緒だって。
on-gaku.info
ここで大橋さん本人が登壇して、映画のPR。遠くてお顔はよく見えなかったのですが、小柄でバカリズムみたいなお方だな、と思いました。


ラストはもちろん『SUPER GIRL』。「本当のダンスチャンスロマンスは自分たち次第・だ・よ。知ってた?」をいただきました!
ここ最近は側転はなくなりましたが、その分踊ってくれるから十分お釣りがくるぜ。後半ではバレエダンサー的な回転をしてくれました!


アンコール2の弾き語りはギターかな、エレピかな、とワクワクしながら待つのもDATEの醍醐味。今回はギターでした!
ジョン・レノン『Jealous Guy』ビートルズ『Blackbird』を1コーラス程度歌い、そのままの流れで『帰れない二人』
おおー、いいチョイス(上から目線でごめんなさい)。これらの曲ってコード進行も近いのかな。ここでもつなぎがとてもスムーズでした。
この後ビートルズ『Dear Prudence』を歌ってくれましたが、私の記憶には一切ないな…。
(私はネットでセトリを探して、それを見ながらこういうレポを書いているのです)


ここでバンド演奏で『Lion Heart』。あれ、「中野ベイベー」はないのか。あーん、残念。まあ最近はネタの精度が落ちていたから仕方ないか(ここでも上から目線でごめんなさい)。
しかしその分、『Lion Heart』はものすごくよかったです!このラスト間際になってこの声量!この曲だけでなく、『イケナイコトカイ』でも時折半分マイクなしの地声で歌う場面があり、こんなの、自分の喉・声に自信がなきゃできませんよ。つまりは、そういうことですね。


ラスト2曲はおなじみ『愛はおしゃれじゃない』『ビバナミダ』
これももう馴染んできた。たまには、チェンジも、いいんですよ…?(小声でおねだり)


終わってしまいました。ラストの投げキッスの嵐、なかなか2階席まで届いてこず、必死に拾ったけどちゃんと掴めた気がしない。そしてもちろん今回は遠すぎて目が合った気がしない。くそう、毎回「お、君、今回も来てくれたんだね」とアイコンタクトを送ってもらっていたのに。2階席のバカー。
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全体感想
●上手に甘い
上手ばかり行ってメガネ外してエロい仕草してサービス満点。下手ももっとサービスしてあげて。そしてもちろん2階席にも!
→(追記)上手には車椅子スペースがあるので岡村ちゃんは敢えて上手にサービスをしているという意見をいただきました。なるほど、岡村ちゃんの優しさは五郎六腑に染み渡るで。
●声は出ていた!
これがあるから今回とてもよかった。パフォーマンスできてナンボですからね。
しかし、時折歌のリズムが前のめりだったところがありました。具体的には覚えていませんが、ちょっとリズム早くない?と思った瞬間がいくつかあった。楽器だとリズム感バッチリなのに、歌だとつんのめることがあるのよねー。
●激しいデンスは控えめ
2階席という遠い場所から見ていたため余計そう思っちゃうのでしょうが、そう思っちゃった。まあ、年齢と体積を考えれば仕方ない。指先まで神経が行き届いているのは変わらず。素晴らしい!
●終わらないアレンジ更新
また今回も何曲もアレンジが変わっていました。歌い出すまでどの曲か分からない。分かる曲でもアレンジが違うと聞こえが違ってくる。これ、ツアーごとに毎回練り直すんでしょ。偉いなあ。それぞれのバージョン、どこかで聴けたらうれしいのですが…。
●曲のつなぎが素晴らしい
この曲やって、次にこの曲やって、ではなく、次から次へシームレスに変わっていく曲がいくつもありました。これがとても気持ちいい。いつの間にか曲が変わってる!まるで手練れのDJプレイ。
●ご当地ベイベー欲しいなあ
岡村ちゃんはMCをしないので、寂しい。その分弾き語りでその日限りの「ご当地ベイベー」を歌ってくれるのが楽しみなのに、今回はそれがなかった。残念!!これは復活してほしいーーーー!!
●セトリ・構成の硬直化
火の鳥』の開演前BGMがあって、数曲やって一旦引っ込んで、バンドインストがあってまた数曲やって、MCがあって『あのロン』『だいすき』、第2部で数曲やってMCがあって『SUPER GIRL』、アンコールで弾き語りやって『愛おしゃ』『ビバナミダ』。
初めての人のことを考えて敢えて固定している部分もあると思いますが、それにしても硬直化しすぎ。もう少し驚きのあるセトリ・構成にしてほしいです。
岡村ちゃんはMCがないため、余計「毎回同じ感」を強く思ってしまうのです。ぜひとも、ご一考ください。


今回のセトリ。ここを見ながら書いていました。
www.livefans.jp
1.いじわる
2.ハレンチ
3.少年サタデー
4.どぉなっちゃってんだよ
5.Love’s Holiday [EW&F]
6.イケナイコトカイ
7.ステップUP↑
8.ステップアップLOVE
(バンドインスト)
9.彼氏になって優しくなって
10.うちあわせ
11.愛してくれない
12.ターザンボーイ
13.Punch↑
14.祈りの季節
15.Out of Blue
(横りんMC)差し入れの話
16.あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう
17.だいすき
《アンコール1》
18.Vegetable
19.マシュマロハネムー
20.セックス
21.揺れるお年頃
(横りんMC)物販紹介ゲスト大橋さん
22.SUPER GIRL
《アンコール2》
23.ギター弾き語り (中央)
・Jealous Guy [John Lennon]
・Blackbird [The Beatles]
・帰れない二人 [井上陽水&忌野清志郎]
・Dear Prudence [The Beatles]
24.Lion Heart
25.愛はおしゃれじゃない
26.ビバナミダ


OH!ベスト

OH!ベスト

岡村靖幸2019FALLツアー「やばいよ!この気持ち。」@中野サンプラザ に行ってきました! 感想(その1)

届かぬ距離


岡村靖幸2019FALLツアー「やばいよ!この気持ち。」の中野サンプラザ公演2日目(10月30日)に行ってきました。
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何年経っても結局なくならない中野サンプラザ。このままでいいんだぜ。
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今回は何と2階席。先行発売で購入したのにこの仕打ち…。以前は2階席は別で販売していたこともあったのになー。
開演前にスタッフが「録画・録音はダメよ。スマホもダメよ。アンコール待ちの時間もダメよ」と何度も念押しアナウンス。そんなこと、分かっていますよ。全身全霊でDATEを体感・体験しますよ!
※しかし、アンコール待ちの時間にスマホいじる人、何人もいた…。ほんの数分、我慢できませんか??


開演時間を少し過ぎた頃、客電OFF。カッコいいオープニングBGMと紫の幕に映し出されるカッコいい照明。このBGMがとてもよかった!もう何も覚えていませんが、ヒップホップっぽいビートだったなーという記憶。これも最近RHYMESTERと一緒に仕事したからなのかしら??


始まったのは『いじわる』。オリジナルよりテンポ遅めバージョン。
うむむ、2階席、遠い…!
今回は秘密兵器として双眼鏡を持ってきたのですが、見る暇がない。岡村ちゃんが歌ってないときに覗くくらいで、結局肉眼で見ちゃう。そのせいで、今レポ書いていますがデンスについての記憶がまったくないです…。距離って大事。
続いて『ハレンチ』。あれ?『ハレンチ』ってアルバム未収録?今Wikipedia見てびっくり。この曲は「月賦ローン三昧」が最高のパンチライン。リズムと日本語が一体化している。
まだまだノンストップで『少年サタデー』。この曲は軽やかな四つ打ちなので、岡村ちゃんも軽やか。こういう曲をもっと作れば可愛げ岡村がもっと見れるのだな。うむ、もっと作って!
また分からないイントロだぞー、と思っていたら『どぉなっちゃってんだよ』だった!この曲、ライブだと毎回歌い出すまでこの曲だと気づかない。さらに今回また新しいアレンジでしたよね?記憶が…。


今回の洋楽カバーはアース、ウインド&ファイヤーの『Love’s Holiday』でした。うむむ、この曲、私知らないです。途中で岡村ちゃんはいつも通り「カモッ!」と私たちに歌わせようとしますが、分からないです…。
この曲はフルコーラスでやらず、シームレスに『イケナイコトカイ』へ移行。ここのみならず、今回は曲のつなぎ部分がとても上手い。そう思ったのが何カ所もあったのですが、いかんせん記憶が…。
曲のつなぎが上手いということは、曲順の並び(テンポやコード)に気を配り、つなぎのアレンジをこのツアーのために作っているわけで、そういう細やかなこだわりが随所に感じられてとてもよかったです!
また、『イケナイコトカイ』はライブ前半に配置されることが多く、この曲で岡村ちゃんの声の調子を占うのですが、今日はいいぞ!途中のアカペラ部分(私命名「ノウホウタイム」)が、とてもよかったです。いつもは「絶対に笑ってはいけない岡村靖幸」になることもままあるこの部分、今日は「いい!声出てる!カッコいい!」と絶賛しかなかったです。


お次は『ステップUP↑』!しかもオリジナルアレンジ(細かなバージョンUPはあったかもしれんが)!最近この曲の遅いテンポバージョンもライブで演奏してくれますが、Aメロはいいけどサビがあまりにもっさりしちゃうので、やはりこの曲はオリジナルアレンジがよい。倫社と現国学びたい!
似たタイトルつながりでステップアップLOVE!ここもつなぎのアレンジがよかった(気がする。記憶…!)。DAOKOパートは完全にキーボードの富士子さん任せ。富士子さんありがとう…!
この曲はMIKIKO先生の振り付けがあるのですが、岡村ちゃん、ちゃんと踊ってた!その場の思いつきだけで踊る人ではなかった!この曲に限らず、今回はダンサーとのシンクロがとてもよかったです。ということは、「ここでこういう振り付けで踊る」という段取りをちゃんと覚えているわけで、それだけで「岡村ちゃん、できるのね」となぜか親目線で喜んでしまいました。
私の前の席の女性もちゃんと踊っていて、すごいなー、MV何度も見たんだろうなーと感心していました。


ここでようやく岡村ちゃん一休み。一旦ハケてバンドメンバーのインストタイム。曲の内容はもう何も覚えていませんが、各プレイヤーのソロ回しは毎回素晴らしい。
横倉さんのベースはいい音がする。低音も高音も聞こえて、スラップで弾いても高音が痛くない。Dragon Ashの馬場さん、D.A.N.の市川さんと並ぶ私の好きなベースの音。
ギター田口さんは毎回80年代後半~90年代前半の「ギターはソロを弾いてナンボだ」という感じの俺様感がとてもいい。早弾きではなく、「俺のプレイを聴け!」という主張の強いソロプレイ。後半では背面弾きも披露。今回は2階席だったこともあり、森山未來みたいだなーと思いながら見ていました。


岡村ちゃん戻ってきて『彼氏になって優しくなって』。今回、少しアレンジが変わっていて、この曲の特徴である横ノリビートではなくなっていた。ちょっと残念。この曲のバウンスする感じが好きだったのに。
2番入りの「芸術的なシュート」は私がいただいた!中野サンプラザの諸君、残念だったな!


『うちあわせ』に続いては『愛してくれない』!!
私、そんなにこの曲大好きではないのですが、とてもよかったです。この曲はファルセットが重要なので、声のコンディションがよくなければ歌えない。この曲をセトリに入れてくるということは、「現在、俺、絶好調」ってことなんですよね!


この次が、何と『ターザンボーイ』!!!
私、勝手に『ターザンボーイ』『パラシュート★ガール』『チャームポイント』の時期の曲は、岡村ちゃんはあまり好きではないと思っていたので、歌ってくれてうれしい!
それにしてもこの曲のサビ「ダンボールいっぱいの子分と戦っていた」のひたすら下がるメロディライン、今聴いても異常。ライブだと今の岡村ちゃんの声に合っているのでとてもよい。
あー、「君のためにライオンと戦える男でいたい」を聴けて本当に嬉しかった!!!


『Punch↑』『祈りの季節』ときて、『Out Of Blue』
アウブルが中盤になってしばらく経ち、もう馴染んできましたね。曲の入りで人差し指を突き上げる岡村ちゃん、カッコいいぜ。


MCタイム。白石さんはもういないので、横倉さんが大役を担う。しかし、横りんはしゃべっている時間と内容が比例しない。しゃべっているんだけど、内容がない。「岡村さん、やばいですよね」しか言っていない。他に何か言っていたかもしれませんが、もう忘れた。
あ、差し入れの話してたな。入手困難なお菓子を差し入れしてくれて、「岡村さん、これ美味しいですね!」と言ったら翌日また同じお菓子があり、さらにその翌日には倍の量のお菓子の差し入れがあり。実は入手困難ではないのでは?と思ったとのこと。


んでおなじみ『あのロン』『だいすき』
うーん、これはライブのハイライトなので削るわけにいかないし置き場所もここしかないんだろうけど、それにしてももうこすりすぎじゃない?もうしがんでも味ないよ。
初めての人のために頑なに変えないのだと思っていますが、変化もほしいなーと思う常連もいる。


今回はこの辺でおしまい。続きはまた明日。


映画『イエスタデイ』 感想

女性はそんな簡単じゃない


映画『イエスタデイ』を見てきました。公式サイト↓
yesterdaymovie.jp
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もし、世界中でビートルズを知っているのが自分だけだったとしたら…。誰もが一度は夢想したことがある(とは言い過ぎか)この「if」を映画化。さて、どう着地させる?


まー、映画を見る前から誰もが思ったことですが、「ビートルズ『だけ』存在しないってありえないだろ」の件。ビートルズに影響を受けたミュージシャンなんて星の数ほどいるわけで、ビートルズがいなければ現在の音楽事情も音楽産業もまるっと違うものになっていたはず。
また、ビートルズはアイドルであり社会的な発言をするラジカリストでもあったわけで、音楽のみならずファッションから思想に至るまでありとあらゆるところに影響を及ぼしまくってきた人たちですから、社会全体が違うものになっていたはず。
うん、そうなんだけど、この作品は「そういう整合性を追求していったら成り立たなくなるからそこは無視して」というスタンス。私もそれでいいと思います。考え出したらきりがないもの。


というわけで、ビートルズ「だけ」がいない世界。ちなみにこの世界ではオアシスもタバコもコカコーラもハリーポッターもなくなっています。
映画を見る前からオアシスもいないことは知っていて、「つーことは、直接的な影響を受けたバンドはいなくなる線引き?」と思ったのですが、そうではなくて世界に点々と穴が開いているような状況なのですね。


さて、ビートルズの曲を知っているのは自分だけ、自分の曲として発表したらそりゃ売れる、急に人気になる戸惑いと罪悪感。ここまでは想定通り。途中の筋運びもよいと思います。
途中の「売れるために」の会議で、ビートルズのアルバムのタイトルやジャケットをことごとく否定していく場面。確かにおっしゃる通り。でも、ビートルズはあのタイトル、あのジャケットで世界中で大ヒットしました。売れれば何でもいいタイトル・いいジャケットになるのです。「売れるために」って、本質の評価にどれだけ意味を持つんだろ。


さあ、どう畳むか。
本作では「ライブの最中に事実を告白してビートルズの曲はフリーダウンロードできるようにする」という着地でした。うん、これしかないよね。ビートルズは世界の共有財産。
これしかないとはいえ、予想通りそのままなので、あまり驚きも感動もなかったな…。
そもそも、あんな簡単にフリーダウンロードの仕組み作れるの?途中からマネージャーをやっていたロッキーが実はITオタクで、みたいなエピソード入れておけば「あの設定が活きた!」とカタルシスあったのになー。


本作は、ビートルズ云々という本筋と同じくらいの分量でラブコメも描かれているのですが、こっち側が私は乗れませんでした。
いや、いくら鈍感でもリリーの気持ちに気づくだろ!急に告白されて「まさかそんな風に思われていたとは知らなかった」は通用しないぜ。
百歩譲って本当に気づかなかったとしよう、本当に単なる幼なじみだと思っていたとしよう。それだったらなお悪い。何の気もなかったのに、離れていくと急にもったいなくなる。そんな都合のいい話あるかよ。
千歩譲って「やっと自分の気持ちに気づいたんだ」としよう。それでも、彼女に彼氏ができた後によりを戻すなんてことできる?男はいつまでも過去を振り返るが、女は未来しか見ていないんだぜ。そんな都合のいい話あるかよ。新しい彼氏の振り方もかわいそうすぎるし。


というわけで、ビートルズ云々の部分は「そうでしょうね」、ラブコメの部分は「そんなうまい話があるか」と思ってしまったので、映画としてはまあまあ。
しかし!この作品は卑怯だ。だってビートルズだもん。あの名曲たちが何曲も何曲も流れるのです。そりゃいいよ。ワクワクするしグッとくるよ。くそう、名曲たちめ。


上で「ビートルズがいないことによるいろいろな弊害は無視でよい」と書きましたが、それでも気になることがいくつかあります。
まず、ジャックは中学生の頃にオアシスのコピーバンドで学園祭に出演していますが、オアシスがいない世界では、このバンドメンバーはこの出来事を覚えていないのでしょうか。学園祭自体やコピーバンド自体がなかったこと(ジャックの記憶の方が偽り)になっているのでしょうか。ちょっともやった。


そしてもうひとつ。ジョン・レノンが生きていたこと!!!!これはサプライズ!!ちょっと涙出ちゃった。そうだよな、ビートルズがなければ撃たれることもなく、現代でも生きている可能性十分あるもんな。
ただ、これを「アリ」にしちゃうと、ポールもリンゴもいるってことですよね。ジョージもまだ生きているかも。あ、逆にポールとリンゴは亡くなっている可能性もあるのか。
この世界では、そもそもジョンとポールは出会っていないのか。それぞれが独自に音楽をやっているという可能性もないのか。
まあ、ないんでしょうね。ないからビートルズは生まれていないってことなんだろうな。
あと、ジョンが「いい伴侶にも恵まれて」的なことを言っていましたが、オノ・ヨーコと出会わなかった方が幸せなのかな?ということも思っちゃった。そもそも、あの二人だって晩年になったら別れているかもしれないもんな。強烈な個性同士が強烈に惹かれ合っている間はいいけど、ちょっとずれたらその反発力はすさまじい。別れた後で方やオノ・ヨーコの悪口ソングを作り、方やジョンに対するディス作品を発表しているかもしれない。
ああ、これもまたifだ。


役者は皆さんよかったです。
●ジャック(ヒメーシュ・パテル)
基本「いい人」な感じがよかったです。「俺がビートルズになって大儲けしてやるぜ」がないので、見ているこちら側は純粋に応援できる。
●エリー(リリー・ジェイムス)
彼女、すげー可愛かった。おっぱいも。
リリー・ジェイムスって、『ベイビードライバー』のヒロインだった子か!でも顔とか全然覚えてないな…。あとは『シンデレラ』か。でも見てない。
この子も「いい人」がにじみ出ていてよかったです。こんないい子を単なる幼なじみ兼マネージャー兼運転手の枠に入れておくジャックはダメ男だ!私の方がいいぞ。
●デブラ
やり手のマネージャー。『ロッキー4』のドラゴの嫁みたい。これはこういうがめついキャラで正解なのだ。
エド・シーラン
まさかこんながっつり出るとは。この映画、イギリスという強みを最大限に活かしているな。英語分からないけど、演技はどうだった?私は特に気にならなかったけど。