やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

「ラットマン」道尾秀介 感想

どうせひと捻りあるんだろという思いがもうひと捻りされた


道尾さんの本としては「向日葵の咲かない夏」に次ぐ2冊目です。
「向日葵~」はラストのどんでん返しに「なんじゃそりゃ~!」と文庫本を投げつけたくなった思い出があります。
いくらどんでん返しとはいえ、いくら叙述トリックとはいえ、それはあんまりじゃ…という思いです。


で、今回の「ラットマン」ですが、面白かったです。
三人称で書かれているのですが、ほとんどが主人公姫川亮の視点で書かれているので、一人称の小説のようです。
事故だと思われた出来事は実は殺人だった。その犯人は、その手口は…。
そして姫川の過去にも同じような、事故に見せかけた殺人があった…。
姫川視点で書かれているのに三人称なのは、姫川自身もその出来事を推察して動いているからです。
途中までは読者である私たちは姫川の行動も過去の真相も分からず、途中で姫川のやったことや過去が分かってからは姫川と同じ心情で読み進めていきます。
そしてクライマックスでどんでん返しがあるのですが、この小説はさらにその先もあるのです。
上手い。しかも過去と現在の二つの出来事についてこんなに何重に真相(に見えるもの)をかぶせているなんて。


これは映像化いけるんじゃないですか?音楽もあるので映画向けかな。
ただ、プロローグとエピローグのショートショートがなぜ必要だったのか分かりません。この話が本編に直接関係するわけじゃないし。


ラットマン

ラットマン

ラットマン (光文社文庫)

ラットマン (光文社文庫)