やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「母なる証明」 感想

キムタクに見せてやりたい

殺人の追憶」「グエムル〜漢江の怪物」のポン・ジュノ監督作品。
私は初めてのポン作品でした。


主人公である「母」にキム・ヘジャ。その息子トジュンにウォンビン
キム・ヘジャさんは韓国では国民的女優だそうですが、特別美人というわけではない。その母が主人公なので、途中「画がもたないよ」と思い、ダレてしまいました。
ウォンビンは兵役除隊後初の映画出演だそうですが、これが良かった。ちょいと精薄な役どころで、きれいな顔が無邪気・純粋さをうまく表現していました。
しかし、精薄なので、基本口半開きのアホ顔。「韓流四天王」の一人(これ言っているのは日本だけなのかな?)で、アイドル的人気もある彼が、除隊後初出演という重要なタイミングでこの役を選んだことに敬意を表します。
だってキムタクだったら絶対精薄の役なんてやらないでしょ。事務所も本人も嫌がるはず。


物語は、女子高生殺人事件の犯人として逮捕された息子の無実を信じる母が一人で事件の真相を探るというもの。
途中、トジュンの友人であるジンテが「この街は狂ってる。この街の誰も信じるな」というセリフがあったので、てっきり警察内部に犯人がいるのだと思っていたのですが、そうではありませんでした。
映画の中でははっきりと描かれていないので、以下は私の解釈になります。
犯人はやはりトジュン。最終的に真犯人にされてしまった彼(名前忘れた)はトジュンに電話で呼び出されたのか?
ずっと息子の無実を信じていた母は、廃品回収のオヤジから息子が犯人である決定的な証言を聞き、息子を守るために彼を殺す。そして家に火を放つ。
真犯人とされた彼に面会をする母。彼もまた精薄(ダウン症かな?)であり、両親はいるのかという問いに答えない(いない)彼に対し涙する母。多分真犯人にしてしまい申し訳ない気持ちと、彼には母がおらず、彼が助かる見込みがないことに対する涙だと思います。
ラストで母はトジュンから鍼の道具を渡されるのですが、ここが困る。
トジュンはどこまで知っているのでしょう。理解しているのでしょう。自分が犯した罪のこと、それを守ろうとしている母のこと。わざわざ焼け跡から探し出すくらいだから、全て理解しているのでしょうか。


主人公である「母」には役名がありません。周りからも「お母さん」「おばさん」としか呼ばれません。つまりこの「母」は、「母」の立場・役割にいる全ての人の総体として描かれているのです。確かに、息子を信じ・愛する無償の愛であったり、「ちゃんと食べるのよ」などいくつになっても息子を案ずる日常のセリフだったり、自分の母も重なって見えました。


この物語は愛する息子を守るためなら殺人もOK、という話ではありません。愛する息子を守るために殺人を犯してしまっても、精薄の息子を守れるのは自分しかいないので、その罪を背負ってでも今後も息子を守るという母の愛(ゆがんだ部分も含めて)の話だと思います。
それこそが「母なる証明」なのでしょう。
そのためにラストのバス旅行で「悪いことを忘れるツボ」に鍼を刺し、踊るのです。
その踊る表情は逆光により私たちには見えません。オープニングと同じ無表情だったのでしょうか。それともツボで悪いことを忘れた(ことにした)ので、楽しげなのでしょうか。


<関係ない話>
オープニングで茫漠としたススキの原っぱで無表情で踊る母。これがラストシーンにもつながるのですが、私はこのシーンで「ガキ使」の「腰振りおばちゃん」を思い出してしまいました。


母なる証明 Trailers

母なる証明 [Blu-ray]

母なる証明 [Blu-ray]

母なる証明 スペシャル・エディション(2枚組) [DVD]

母なる証明 スペシャル・エディション(2枚組) [DVD]