やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画「ソロモンの偽証 後篇」 感想

原作は先に読まない方がいい


映画「ソロモンの偽証」後篇を見てきました。原作は文庫2巻の途中のまま進んでおりません。
前篇の感想はこちら↓ese.hatenablog.com
前篇は酷評してしまったのですが、これはつかみの部分で乗れなかったので、後はずっとツッコミ目線で見てしまったためです。


(以下、ネタバレあります)


で、感想ですが、何もない。
物語(お話、脚本)については思うことはありますが、映画自体には何も思うことがない。映画としての感想がない。それは前篇でも思った「映画的快楽」がないからです。
物語自体は校内裁判なので、映像的な強さはありません。なので、映画として(映像として)成立させるためにはカット割りからアングルから効果音から俳優に対する演出から、いろいろな技術が必要です。派手にすればいいわけじゃないけど、緊張感やメリハリを持たせるためにはただシナリオを追うだけではダメだと思うのです。


演出面で気になったこと。
前篇でも書きましたが、時代考証の部分。やっぱり1991年当時の風俗描写がない。私は髪型やファッションについて何も知識がないのですが、あれでいいの?こんなに時代感を感じないということは、その当時の描写ができていないということなのでは?
20代の女性がいればその当時のファッションであるはずなのに、そういう人が全く出てこない。喫茶店の客に女子大生とかOLとかいてもいいのに、街中をすれ違う一般人でも若い女性がいてもいいのに、全てサラリーマン男性しかいない!何でだ。この街は若い女性はいないのか。
さらに重箱の隅を突っつくと、この当時500mlのペットボトルはなかったよな、とかも気になってしまいました。これらは前作のせいでそういう姑目線になっているためです。本筋でない部分に気が行ってしまい、すみません。


あと、冒頭で主人公藤野涼子が家を飛び出すシーン。家から出たら急に土砂降り!そしてトラックにぶつかりそうになり「バカヤロウ、死にてえのか!」。
えー、これ、2015年の映画だよね?大映ドラマじゃないよね?
そして、雨の中を必死で走った藤野涼子を抱きかかえる父親(佐々木蔵之介)のシーンで、藤野涼子の顔が濡れていない。今までどこ走ってたんだよ!
映画なのにこういうつまんない手抜きしないでほしいです。


藤野涼子さんは今作も同じく全部同じ「意志の強い顔」のみの演技でした。同級生の部屋に入った時くらい笑顔見せてあげればいいのに。親にくじけそうになる心を告白したときくらいもっと子どもっぽくしゃべればいいのに。
役者に罪はない。そういう演出をした監督の責任。


物語について。
原作を読んでいないので変更や省略は分かりません。裁判の5日間はだいぶ端折ったと思いますが、これは時間の関係でしょうがない。
前篇の時点で殺人の線はないと思っていたので、どこがクライマックスなのか、明かされる真実は何なのか、どこに着地させるのか、という部分に興味を持って見ていたのですが、うーん、そうか。
法律では裁けない「加害者」を罰してもらうためにこれをやったのか。校内裁判をやろうというのは彼から水向けられた部分あったかな?
ラストであんなに「僕を罰してくれ!」と熱弁を振るうなら、もっと最初から自分から動けばいいじゃない、と思ってしまったのですが、「警察じゃ僕を罰せられないから」という理由。うーん、あまり腑に落ちない。
(前篇で葬式に来ていた神原君が「この事件はニュースで知った」という矛盾、全然気が付かなかった!)


そして、結局のところ中二病をこじらせた柏木君に振り回されたお話ですよね。困ったちゃんだ。神原君も被害者ですよ。中二病とメンヘラは面倒だな。


このお話は、現在の藤野涼子(尾野真知子)が当時の話をするという形式ですが、これは何も奏功していないと思うのですが、なぜこの形式を採ったのでしょうか。
現在の校長の「あれ以来うちの学校ではイジメも不登校もないんですよ」ってウソつけ!そんなわけない。絶対ない。いくらこの出来事が「伝説」であっても、25年も前の出来事が現在進行形の中学生にそんな効果もたらすわけない。百歩譲って不登校はないとしても、イジメがない社会なんてない。このセリフ、原作にもあるのかな?それだったら興ざめだな。
あと、校長の「あの裁判以降、一緒に裁判やった子たちはどうなったの?」という質問に対して「あれから、私たち、友達になったんです」って、答えになってないよ!


と、また辛口で書いてしまいましたが、前篇よりはフラットな目線で見ることができました。これから原作を読み進めると「何でここを落とすんだ」「何でこのセリフを変えるんだ」とか思うかもしれませんが。原作を読んでいないので、改変や省略部分には目が行かなかったのでよかったのかも。
でも、映画としてはやっぱりイマイチだなあ。2時間ドラマ前後編とかWOWOWとかでいいレベル。



映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』『ソロモンの偽証 後篇・裁判』第2弾予告編 - YouTube

映画『ソロモンの偽証 後篇・裁判』予告編 - YouTube