やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『トイ・トーリー4』 感想

「内なる声」と「あえて」の万能性


トイ・ストーリー4』を見てきました。公式サイト↓
www.disney.co.jp
トイ・ストーリー』は、昔友達が「これは傑作だ。子供ができたら絶対に見ろ」とオススメしてくれたので、私も「よーし、子供ができたら一緒に見るぞ」と思っていたのですが、どうも子供はできないらしいことが分かってきたので、今さらながら過去3作品見ました。
『1』は、今見るとCGが粗い。「おもちゃは持ち主がいないときに自由に動いている」という設定とおもちゃあるある・子供あるあるが素晴らしく、お話は王道そのもの。これでいい。
『2』は「おもちゃの幸せとは」がテーマで、「持ち主に遊んでもらうこと」という着地だったのですが、博物館が目的でもいいじゃんよーと思いました。でも、面白かったし傑作だと思います。
で、『3』の完璧すぎる大団円。かつておもちゃで遊んだことのある人ならこのシリーズ見るべし!!


この完璧な完結編に、続編作る意味ある?


私の感想は、「いらなかった」です。


(以下、ネタバレあります)


オープニングの雨の描写やボー・ピープの質感など、映像のレベルアップはとどまることを知らず、実写を超えるきれいさとアニメ(CG)ならではの表現方法で、見ている間はずーっと楽しいし面白い。でも、映画トータルでは「うむむ」と思ってしまう歯切れの悪いモヤモヤを抱えながらエンドロールを見ていました。


そりゃ、この物語を2019年に作ろうとしたらこうなるでしょう。でも、それ、いる?『トイ・ストーリー』でやる必要ある?
ボー・ピープが自由に大活躍する「女性の自立」は立派だけど、ウッディを足手まといな存在にするのはどうなのか。
そして今作のテーマである「自分の生き方は自分で決める」という点。これ、これまでの『トイ・ストーリー』の全否定になっちゃうけど、いいの?
人生は長いので、昔と考え方が変わることはあります。でも、同じ映画の中でそもそものテーマをひっくり返しちゃうのはダメでしょ。ルフィが海賊王を諦めてYouTuberになったら嫌でしょ、一歩がボクシング引退して指導者になったら嫌でしょ。後者は現実だから本当に嫌だ。もう読んでいないので今どんな話になっているか知らないけど。


それをあえてやっているんだ、という擁護論もあるでしょうが、「あえて」で何でも許されると思うなよ。じゃあ『2』の博物館行きだって認めてあげなよ。
あと、今作は「内なる声」もキーワードとして多用されており、それがラストでウッディの背中を押す決め手になっていましたが、「おもちゃにとっての幸せとは」をこれまで散々語ってきたこのシリーズで、それよりも多様性や自立・自意識を優先させるのも私は飲み込めませんでした。


「おもちゃが自分の意思を持って動く」という設定はとてもいいのですが、それを突き詰めすぎると自我・自意識・自立、という問題にぶち当たります。また、隷属・奉仕・依存という面も。
だから、ここまでやる必要はないのでは。おもちゃを超えた話になっちゃう。


もうひとつ気になったのは、おもちゃが動きすぎ。声を出すとか車をパンクさせるとか物理的にアクセル踏むとか、人間の行動に直接関与しすぎ。人間に動いているところは見られていないのでルールは逸脱していませんが、禁じ手使いすぎじゃない?


と文句ばかり書いてきましたが、面白かったのです。ワクワクドキドキ、たまにほろり。見ている間はずーっと面白かったのですが、終わった後に考えるとこんなモヤモヤが残る。
そりゃさ、ウッディとバズの物語であれば、いつでもいつまでも見たいですよ。『5』があったら見に行きますよ。新しい冒険や出会いと別れもあるでしょう。作ろうと思えば、描こうと思えばいくらでも作れる。でも、それを作るかどうか。
ピクサーは「語るべき物語があるから作る」という信念があるそうで、ということは「ある」と判断したから『4』を制作したのでしょうが、私にはそうは思えませんでした。


あ、チョコレートプラネットのお二人はとても素晴らしかったです!特に松尾さん。ワイドショー露出対策のチョイ役ではなく、主要キャラとしてちゃんと上手かった。『SING』のトレンディエンジェル斉藤さんを超えたよ!