やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』 感想

カンフー×ドラゴンボール×キングギドラ×マーベル


MCU最新作『シャン・チー/テン・リングスの伝説』を見てきました。公式サイト↓
marvel.disney.co.jp
MCUのフェーズ4としては『ブラック・ウィドウ』続く作品ですが、『ブラック・ウィドウ』は「ナターシャお疲れさま!最後の花道として単独主演作用意したよ!」という位置づけ(物語の時代も当然『エンド・ゲーム』より前なので、新しい展開や布石はなし)なので、実質本作品が『エンド・ゲーム』以降の第一作。そしてMCU自体も『エンド・ゲーム』で一旦終了なので、本当にこの作品から新たな時代が始まるのです。


とはいえ、私はあまり期待していませんでした。


この作品の予告編を見て、見に行くかなー。行かないだろうなー。
www.youtube.com
MCUばっかり追っているわけにはいかないんだよ。世の中には他にも面白い映画がたくさんあるんだよ。でもまあ仕方ない、MCUだから見に行こう。
と思っていたところ…
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面白かった!!


やっぱり、カンフーは面白い。アクションとして華がある。本作の武器:テン・リングスの使い方もいろいろ工夫があって面白かったし。リングを弾丸のように発射、リングをまとめて防御の盾、力を下に向ければ跳躍力のアシスト、いろいろできるね!


オープニングの「テン・リングスの歴史」もコンパクトで分かりやすかったし、その後の「スーパーカーで登場→と思ったらホテルの駐車場係」というギャグもいい。同僚のケイティの運転で目を丸くするシャンの表情もいい!渥美清か!
バス内でのアクションは、狭さやブレーキが利かないなどの条件(制限)の中でのアクションなので、工夫があってよい。そこでケイティがバスを運転するというのも伏線と回収になっているし。
さらに、このときの動画がバズって「バスボーイ」として有名になり、格闘場でのアクション、妹との再会、と上手いことつながっていく。
ここでの足場アクションもよかったなー。縦(上下)と横(左右)でずっとハラハラ。ケイティの「竹が折れちゃうよー」の部分もよかった。


「テン・リングス」は『アイアンマン』シリーズで登場していた謎の悪の組織で、これが本作とどう繋がるのかなーと思っていたら、「あのテン・リングスは我々の組織名を勝手に騙っていただけ」という説明。なるほど。確かに『アイアンマン3』では首謀者とみられていた男が単なる役者だったもんなー。矛盾はなく仕切り直す上手い説明。


で、ラストは父子対決。ここ、もう少し明確に「父を超えた!」もしくは「超えたと思ったがやはりまだ父の方が上だった」が分かるとよかったのになー。
あと、父は敵だけど「愛故に狂った」わけで、そこは正気に戻してあげたかった。で、父の愛の承継としてリングを受け継ぐ、という流れが美しいと思うのよねー。
その後の『ゴジラVSコング』のような竜の対決は正直長かった。ケイティの弓が絶体絶命の危機を救うところは、分かっていても「よし!」と思っちゃうね。ベタであってもフリとオチ、伏線と回収は大事。「今度は見捨てない」のセリフも!
このクライマックスの部分、全体的に『ドラゴンボール』感がありましたね。リングをまとめて発射すれば完全に「かめはめ波」だもんな。


とちょびっと文句をつけるところはありましたが、全体としてはとても面白かったです。ミッドクレジットでアベンジャーズの世界観に繋がるところもよい。次回はドクター・ストレンジと共演するのかな?
ついでにもうひとつ文句を。母親の死因、可哀相すぎるだろ。父親の敵に母親を男30人がかりでリンチするのかよ!せめて父を殺すつもりで間違って母が死ぬ毒殺、とかにしてやってよ。


本作はアジアが舞台なので、劇伴もずーっとアジアっぽい音階、コード、音色が使われていましたね。嫌みにならない程度なので違和感は感じませんでした。また、ター・ロー村も「アメリカ人が考えるアジア」だけどあまりヘンテコ感はないという上手いバランス。『ブラック・パンサー』のワカンダ(≒アフリカ)も同じことを感じました。
それにしても、こういう作品でアジアが取り上げられる際、もう日本はその選択肢に入ってこないんだろうなーという寂しさがありますね。『クレイジー・リッチ』を見たときにも思いましたが、もう日本はお呼びでないというか、こういうハイクラスのカルチャーのお仲間に入れてもらえない感じ。


キャストは、皆さんよかったですが、ケイティ役のオークワフィナが優勝、トニー・レオンが準優勝ですかね。オークワフィナはあの声がいいですね。昔の泉ピン子か今なら伊藤沙莉か。


ああ、もうMCUなんて追いかけるつもり薄れていたのに、また火が点いちゃったじゃないか。11月公開の『エターナルズ』はまた全然空気感が違いますが、これもこの先繋がっていくんでしょ?ケビン・ファイギ社長は既に10年先までいろいろ考えているんでしょ?楽しみじゃん。
ああ、また追いかけなくちゃ。


2021年8月ツイートまとめ

舞台『愛が世界を救います(ただし屁が出ます)』 感想

舞台の人、映像の人


クドカンが作・演出の舞台『大パルコ人④マジロックオペラ 愛が世界を救います(ただし屁が出ます)』を見てきました。
stage.parco.jp
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会場はもちろんパルコ劇場。会場内外に本作のポスター、まったくないのね。コロナで中止になる可能性があるから作らなかったのかな?


過去の大パルコ人の感想↓
ese.hatenablog.com
ese.hatenablog.com


クドカンの舞台だからもちろん見に来たわけですが、あとはのんさん!私、能年玲奈時代から大好きなんです。といいつつ『あまちゃん』すら見たことないのですが。えーと、『ラクスル』はいいよね!
と、期待に胸膨らませて見たのですが、のんさん、舞台の声出てないね。あと、間がよくないね。


クドカンの舞台ですから、もちろん喜劇です。コメディです。笑いは「間」ですから、これが出来ない人にコメディはできない。のんさん、あなたはできない人でした。残念。お顔は美しいしギターも上手いのに、喜劇の舞台の演技はできていませんでした。のんさんは映像の人なんだな。
その点、荒川良々さん三宅弘城さん藤井隆さんがバッチリ!さすが喜劇役者。間がいい。


お話もいまいちだったような…。クライマックスでもっと盛り上がると思ったのにな。のんさんのキャラも、どんな人(性格・目的)なのかいまいち分からないから、応援や感情移入ができない。脚本とキャラは物語の両輪なので、どちらかがいまいちだと作品全体もいまいちになっちゃう。


お話としては村上虹郎さんとのんさんが主役ですが、実際は藤井隆さんが大活躍でした。私の見た回は藤井さんの声が本調子でないように感じましたが、そりゃ毎回これだけしゃべって歌っていたら喉のコンディションも悪くなりますよね。お疲れさま。


この作品はロックオペラなので、歌が何曲も歌われます。メインテーマで「愛が世界を救います 屁が出ます 屁が出ます」の「屁が出ます」の部分、ベイシティ・ローラーズの『サタデー・ナイト』みたいだなーと思いながら聴いていました。いい曲たくさんあったし、たぶん歌詞は物語にリンクしているはずなので、舞台のセットなどに歌詞を映してくれるとよかったのになー。


というわけで、期待値を上げすぎたせいで少し残念な感想となってしまいました。
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おみやげにいただいたブーブークッション、使うことあるかな。


映画『フリーガイ』 感想

今がリアル!


映画『フリーガイ』を見てきました。公式サイト↓
www.20thcenturystudios.jp
私はゲームをまったくしないので当初見るつもりはなかったのですが、評判いいので見に行ってきました。
面白かったです!
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ゲームのモブキャラが自分の意志で動き出す。こういうストーリーなので「自由意志とは」「インターネット≒現実」みたいな補助線で見ていたのですが、そういう面ももちろんありつつ、もっとカジュアルな作品でした。


主演のライアン・レイノルズがいい。イケメンだけど二枚目すぎず、コメディもできるけどおちゃらけすぎない、いいバランスです。10年前ならニコラス・ケイジが演じていたかな、と思いながら見ていました。
ヒロインのジョディ・カマーは、「ヒロインだから美人だけどめちゃ美人ではなく、ゲーム好きなギーク、だけどやっぱりヒロインだから美人」というちょうどいい案配。野呂佳代さんに似てる。


私はゲームを全くしないのですが、この世界は『グランド・セフト・オート』や『フォートナイト』みたいな感じなのですかね?
最近のゲームのグラフィックはとてもきれいなので、本作のCG使いまくりのビジュアルととてもマッチしていました。これが一昔前の『バーチャファイター』時代のポリゴンだったら違和感あるし、映画『ファイナルファンタジー』の時代のグラフィックでもまだ違和感あったでしょう。今の時代だからようやくリアルとゲームとCGが違和感なく融合した映像となっています。


ゲームのモブキャラが意志を持つ。そこでの恋愛模様。この恋は実るのか。そして現実ではゲームの技術を盗まれた証拠を追う。その証拠はゲームの中にある。これで作品中のベクトルが一致して、とても見やすい。
証拠を見つけなければ自分たちの存在は消えてしまう。現実では証拠隠滅を図るためサーバーに物理的攻撃。これでゲーム世界にもダメージが加わるというデジタルなのかアナログなのか分からない追っかけっこ。
無事証拠を見つけてめでたしめでたし。しかし本作はそこで終わりません。この「フリーガイ(途中から「ブルーシャツガイ」と呼ばれる)」は、バグから生まれた偶然ではなく、ミリーに恋するキーズが仕込んだシャイな告白だったのです!ここ、上手いなー。


ゲームキャラが意志を持ったところで、所詮はゲームの中の話。じゃあ、これはリアルじゃない?いーや、今この瞬間は、いつだってリアルだ。そうです。ゲームの中だって、オンラインでつながっていればそこはリアル、ネットの中で匿名で騒いでも、リアルな人間がやっていること。どの場(プラットフォーム)であっても、今この瞬間は、リアルなんです。


クライマックスの「20世紀フォックスはディズニーに買収されました!」の小ネタコラボも楽しかったし、基本軽くて明るくてよかったです。ゲーム会社の社長アントワン(タイカ・ワイティティ)はやり過ぎだけど。
金曜ロードショーで何度でも放送してほしい佳作でした。


映画『孤狼の血 LEVEL2』 感想

お前はまだひよっこじゃ


映画『孤狼の血 LEVEL2』を見てきました。公式サイト↓
www.korou.jp
前作の感想はこちら↓
ese.hatenablog.com
前作は「これぞ映画!」という突き抜けた面白さがありました。R15+指定のレーティング作品にお金を払って見にくるお客さんに対し、遠慮のない映像と物語を叩きつける、これぞ最高のサービスでありエンタテイメント。素晴らしい作品でした。


本作は前作の3年後。役所広司演じる大上がいなくなった後、呉原のヤクザを取り仕切るのは松坂桃李演じる日岡。前作からの見た目の変化も分かりやすくていい!
日岡に対峙する本作の悪役は、鈴木亮平演じる上林。この上林がすごい。見た目の迫力、絶対に怖い奴じゃん。他のヤクザと貫目が違う。鈴木亮平、ちょっと前まで恋愛漫画家やってたじゃん。白石和彌監督作品『ひとよ』では吃音症の弱気な兄貴だったじゃん。どうしたんだよ、怖すぎるよ。
ese.hatenablog.com
鈴木亮平って、前からあんな耳していました?宇宙人っぽいトガリ方。もみあげの上まで剃る独特な髪型で余計異様な造形に仕上がっていました。「まるでサノス」という声をいくつか目にしましたが、私は『なんと孫六』のはるみを思い出しました。一般人の倫理が及ばない人、という意味で。
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あとは千原兄弟のせいじですね。


3年間ヤクザの抗争を押さえ込んできた日岡ですが、どうも弱々しい。説得も通じず、いざとなったら拳銃を口の中に突っ込んで実力行使。大上さんならどうやったかな。もっと上手く押さえ込めたんじゃないかな。
この日岡の弱さが映画を見ている最中ずっと気になっていて、それが映画自体の弱さにも感じてしまったのですが、見終わっていろいろ考えていくうちに考えを改めました。
だって、まだ3年だもん。日岡のような若造がヤクザと五分に渡り合って押さえ込んでいるだけで十分すごいことです。大上さんと比べちゃいけない。
あー、だからもう一度そういう目線で見た方がいいな。あー、私はまだまだひよっこだ。


本作は映画オリジナルストーリーのため、脚本は少し弱い。ついに小谷組に襲撃をかけた上林たちは、トラックで突っ込んでからはちょいとドンパチするだけ。中に入らんのかい!組長代行も無事のまま上林はその場を離れちゃったよ?
その後カーチェイスとなり、横向きになった日岡の車に突っ込む上林は、なぜ車の端っこに当たるの?土手っ腹突っ込んだらんかい!(日岡の銃弾がタイヤに当たって上林の車の向きが変わったとかの描写ありました?)
そしてラストのタイマン。日岡、不死身すぎるだろ。その前から腹を撃たれて重傷なのに、そこからあれだけ戦えるものかしら。少年マンガか。
瀬島さんの騙しは、壮大なドッキリすぎる。家具全部なくなるなんて『ロンハー』レベル。他人の家を借りていた、もしくは家具はそのまま生活痕はナシ、とか。
チンタの死体丸出しで近所の野次馬やマスコミがそばにいるなんてことある?ブルーシートくらいかけてあげて。
そして何より、本作はおっぱいが足りない。R15+は目ん玉えぐり出す残酷描写に当てられ、エロスは大幅に後退。ピアノ講師のおっぱいがなぜ出ない!筧美和子、出るなら出してくれ。出せないなら出せる人を出してくれ。強姦されているのに下着着けたままなんてありえないでしょ。
あと、つまんないツッコミですが、オープニングの車、ナンバープレートが3桁でした。3桁になったのは1998年からです。舞台は1991年でしょ。その辺のリアリティ、よろしくお願いします。


と少しケチをつけましたが、全体としては大満足。ただし、「LEVEL2」といえるほどのレベルUPは感じませんでした。いや、それも前作が素晴らしかったせいで、本作単体だったら前作と同じように大興奮していたでしょう。
前作を見て面白いと思った人はぜひ!


最後に役者陣について。
松坂桃李
彼は本当に素晴らしい。どの作品でも「その人」になる。本作は前作からの飛躍と、それでもやはり「まだ3年」という弱さと青さの両面を演じてくれました。あー、私はこの後者の部分を感じ取れなくて残念。
鈴木亮平
日本のデ・ニーロ、もしくはクリスチャン・ベール。本作でも最強で最狂で最高でした!本当は彼の少年時代で「環境がそうさせた」という部分は出さず、普通の家庭に育ったのにこうなっちゃったという「ナチュラルボーン狂気」として描いてほしかったです。彼には一部の理もなく純粋悪でいてほしい。
吉田鋼太郎宇梶剛士寺島進、渋川清彦
本作は、先輩ヤクザがみんな弱くてがっかり。もっと強くて怖くていい。なのにそれを上回る上林、という構図がよかった。とくに吉田鋼太郎さん、あなたが弱かった。そういう演出だったのでしょうが、もう少し威厳がほしい。血圧放置を取り締まっている場合ではない。寺島進さんは公式サイトで「この歳でも初めて経験することも色々とあるのだなと感じました」と書いていましたが、そりゃ全裸で首輪されるなんて思わないですよね。役者って大変。
斎藤工
特に感想はない。
早乙女太一
彼がよかった!前作の中村倫也枠。見ている最中はずっと「ローランドみたいだな」と思いながら見ていました。
西野七瀬
スナックのママとして、若すぎない?どうやって店持ったの?30過ぎの女優がよかった。あと、泣きの演技が下手すぎる。涙はカット割るまで出ないし。
村上虹郎
私、彼のこと好きではなかったのです。演技下手だと思っていました。それが、本作ではよかったなー。無理した頑張りと抗えないどうしようもなさ、純粋さと弱さ。いいバランスでした。
中村獅童
前作の得体の知れない怖さは、本作では出番が増えた分薄まっちゃいましたね。