やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

「ゴッドタン」で「ベタ・王道」の大切さを学ぶ

「ゴッドタン」、好きです。テレビ東京の深夜番組で、視聴率なんて1%台なのに、DVD出せば売れるし「マジ歌」のライブやれば観覧希望が殺到するしついには「キス我慢」は映画化。
視聴率は見ている人の「数」でしかないんです。「熱」とか「愛」とかはカウントされない。


そんな愛すべき番組ですが、名物企画に「ストイック暗記王」「キス我慢選手権」があります。これ、当初は色仕掛けなどでプレイヤーを惑わす企画だったのが、回を重ねるごとに「シチュエーションコメディー」「シチュエーションドラマ」になってきています。


これが面白い。
どれもベタで王道ですが、途中泣いちゃうくらい。笑いではなく、感動して泣くのです。
芸人さんにはその人にふさわしい舞台設定。ハライチ澤部には相方岩井の笑いに対してブレた姿(俺の相方はそんな奴じゃない!岩井の隣は俺しかいない!)、東京03飯塚にはコントをバカにするディレクター(コントバカにすんなよ!)。
そして矢作には完全に別世界の設定。
こんなことされたら怒るよな、こんなこと言われたら悔しいよな、こんなシチュエーション嬉しいよな、というセリフや設定の数々。
これがはまるはまる。演じている劇団ひとりにも参加している矢作にも見ている私にも。


これが面白いと思えるのは、既視感があるからです。ある種の「あるある」です。分かっているからその世界に入りやすいし、安心して喜怒哀楽に浸れます。
よしもと新喜劇とか「男はつらいよ」のような安心感。


短いながらもドラマとして素晴らしい。これをそのままドラマにしたらベタでダサいですが、バラエティ番組だからこういう本質の要素だけでいい。逆にダサいのがバラエティとして機能しているくらい。
そう、ドラマはこういう「本質=人の感情を揺さぶる設定やセリフ」をダサくならないように、自然に表現できるようにするのが重要なのです。


「面白い」とか「びっくりする」というのは、見たことがないものを提示することだけではありません。「見たいものを新しい形で提示する」ことです。それがエンタテインメント。
ベタや王道は恥ずかしいことではありません。そのまま出すから恥ずかしくなる。そこから逃げようとしてギミックに走っても、それは本質からずれただけ。
ベタや王道という「恥ずかしさ」から逃げずに、過去の焼き直しそのままにならずに、みんなが何回も見たことがあるものを見たことない方法で見せる。とても難しいですが、表現するひとはそこに向かって欲しいと思っています。


そのためには、俳優は演技が上手くないといけないし、カメラアングルやカット割りもセンスと技術が必要です。ベタなものに説得力を与えるために。
ハリウッドの映画はそこに全力を注いでいます。全世界で理解できる作品にするために。ピクサーのアニメなどもそう。
もちろん上手くいくときも「ベタすぎ!」と寒くなることもどちらもあります。


先日「カリオストロの城」が14回目の放送で視聴率14.5%を獲りました。いい加減みんな見たことあるでしょと思いますが、見たことあっても面白いんだもの。ストーリーも結末も分かっているけど、面白いんだもの。
これが見本。まるで古典落語のよう。
でも、古典落語だって話し手によって面白さは違いますよね。それと一緒。センスと技術が必要なのです。
男はつらいよ」だって毎回同じなのに毎回面白い。王道の中に毎回ひとひねりを入れています。


同じことは、音楽でも感じます。
ベタなコード進行は、いいけど恥ずかしい。そのまま出すとダサい。
A→F#m→D→Eなんて恥ずかしすぎる。(ちなみに「スタンドバイミー」はAメロからサビまでこの1ループです)
同じようにカノン進行(A→E→F#m→C#m→D→E)も恥ずかしい。(キーCならC→G→Am→Em→F→G)
しかし、全くめちゃめちゃなコード進行にしても音楽として成立しないし、いい曲にはなりにくいです。
そこで、みんなこの王道をもとに独自のエッセンスを加えて、新しい名曲を作っているのです。
例えばスピッツ空も飛べるはず」(キーC)はカノン進行ですが、C→Dmという進行やD7・FM7など、王道の進行の中に響きの違うコードを入れるなどして「王道だけど新しい名曲」を生み出しているのです。
参考↓
空も飛べるはず(スピッツ) / コード譜 / ギター - J-Total Music!
もう1曲サンプルを。
サザンオールスターズ希望の轍」。参考↓
「希望の轍」 | サザンオールスターズ 歌詞/コード検索サービス | 楽器.me
この曲はキーはDですが、サビ前にCが入ることにより、ベタの中に緊張感が生まれます。また、この曲に限らず桑田さんはセブンスのコードをよく使います。これでオシャレ感を出すのです。


映画も音楽も、ベタや王道が全て素晴らしいわけではないし、外れたものが全て異端というわけでもないです。別の方法論で名作・名曲を生み出す人もたくさんいます。
しかし、ベタや王道を恥ずかしい・ダサいと言ってバカにするのはもったいないのではないでしょうか。


最初からだいぶ離れた着地になってしまった。うまく風呂敷畳めないけど、おしまい。



ゴッドタン ストイック暗記王 2014年4月19日 - YouTube

ゴッドタン 第5弾  R-18 解禁!ストイック暗記王 & 傑作選

ゴッドタン 第5弾  R-18 解禁!ストイック暗記王 & 傑作選