あらゆるエンタメにつながる王道の道
漫画は読んではいますが、昔に比べればだいぶ本数は減りました。
荒木飛呂彦先生といえば「ジョジョの奇妙な冒険」ですが、私は第6部「ストーン・オーシャン」の途中で脱落。
でも、荒木先生のことは好きなんです。「魔少年ビーティー」の頃から読んでいるし「バオー来訪者」も好きでした。
以前六本木で開催された「ジョジョ展」にも行きましたよ。ese.hatenablog.com
本書はもちろん「ジョジョ」を始めとした荒木先生の作品を題材に書いてあるのですが、内容は漫画に限らず、映画でも音楽でも、エンタメ全般に通じる内容でした。
第1章は「導入の描き方」。
確かに、どんな面白い作品であっても、ページをめくってもらえなければ読んでもらえません。どうやって興味を持ってもらうか、どうやってこの作品(キャラクター・世界観)を説明するか。
何ページも使って説明している時間はありません。導入部でつかまないと。そこで先生は「複数の情報を同時に示す」を心掛けよと書きます。
例えば「今日はパスタでも作ろうかな」というセリフひとつで
・主人公はイタリアンが好き
・自分で料理する人
・多分家族や彼女はいない。独り暮らし
・貧乏ではない
といった情報が与えられます。その際に髪型・服装・背景などで主人公のキャラクターも伝えることができます。
なるほど。つかみは大事。
映画でも同様ですよね。興味を持ってもらいつつ、説明をしなければならない。その際、説明セリフではない方法で。
音楽もイントロで耳を掴まないとサビまで聴いてもらえない。
第2章では漫画の「基本構造」について。
①キャラクター
②ストーリー
③世界観
④テーマ
先生曰く、これが重要順だそうです。
そして第3章以降はこの「基本構造」の説明や作り方について。
確かに、連載という形で続いていく漫画は、登場人物のキャラクターが一番重要ですね。そのキャラクターにいろんなシチュエーションを与えることにより、そのキャラクターが動いて物語を紡いでいく。
この辺は映画と違うところですね。
コマ割りや構図については、荒木先生は映画好きなのでこの辺も熱く語ってくれるかと思いましたが、思ったよりあっさり。
漫画の「右のページから左に進み、手でページをめくる」という仕組みについての言及や、ドラマを描く際の構図や画角、ミステリーやホラーのドキドキ感を盛り上げるためのカット割りなどについて知りたいなあ。
面白かったです。
荒木先生の「絵」に対する熱意も読むことができたし(だからあのイベントは「原画展」だったんだな)、漫画全体についての情熱も感じることができました。
本書は「少年漫画の王道」、つまり週刊少年ジャンプのバトル漫画を念頭に書かれています。独りよがりにならない分かりやすさや、「主人公は必ずプラスになる」ストーリー展開など、言われてみれば確かにその通りの「王道」についての説明。
こういう「ベタ」や「王道」は簡単のようで難しい。誰もが思いつくことだし、誰かが既にやっていることだし。その何人もが通った道を、新しい手法で見せなければならない。
難しい!
音楽もベタなコード進行ではありきたりな曲になってしまうので、ちょっと違うコードを混ぜたりリズムを変えたりして、現代に通用する王道を作らなければならない。
「ベタ」や「王道」は恥ずかしいので避けたいという作り手の気持ちも分かります。しかし、王道が分かっていないと異色も異端もいいものはできません。王道が分かっているからこそ、あえてそこを外すテクニック。
ピカソの絵は私でも描けそうですが、基礎や基本がしっかりしているからこそ、あの絵(ぱっと見上手そうじゃない絵)に美術的価値が宿るのです。
お笑いだって、ボケの人は「普通」が分かっているからこそ、そことの飛距離で笑いを生み出すのです。そしてその飛距離を見ている人にコンマ何秒で伝えるのがツッコミの役割です。
そして、漫画はただ描けばいいってもんじゃない。きちんとルールや構造を考えて、適切に配置し、最小限の描写で説明しなければならない。「好き」だけじゃ何年も続けることは難しい世界ですよね。
今後漫画を読む際に、作者の皆さんがどれだけこだわりを持って描いているのか、気にしながら読んでみよう。
漫画についてのエントリ↓ese.hatenablog.com
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