クリープハイプの新曲「寝癖」がいい曲で、もやもやと思ったことを書こう。
このシングルの前、このバンド周辺ではいろいろと話題がありました。ベスト盤にまつわる事務所・レコード会社との齟齬。武道館2Daysの敢行。
その辺の周辺情報やバンドのヒストリーに刻まれるであろう出来事とは関係なく、いい曲でした。
クリープハイプというバンドは、ボーカルの尾崎世界観の声のせいでエキセントリックだったりキワモノだったり変態だったりというイメージがあると思いますが、曲だけ聴くとこんな真っ当なバンドは今そういないよ、と思うのです。
HIPHOP以降、そしてボカロ以降、ただ数人で楽器を弾いて歌う「バンド」というフォーマットはもはや時代遅れです。
打ち込みをやれば人力では到底不可能なリズムも刻めますし、そのリズムは正確無比。キーボードやサンプリングでどんな音でも出せちゃうし。
なので現代のバンドは打ち込みビートでリズムを作ったりHIPHOPを経た韻や譜割りのメロディになったりBPM早めの高速ビートになったり、いろいろ工夫しているのです。過去のバンドでは現代の音楽シーンでは戦えないから。
なのに、クリープハイプはギター・ベース・ドラム以外の楽器はほとんど入らないし、ドラムも人力だし、BPMも早くない。オオカミもピエロもいない。あるのはエッジの効いた歌詞とグッドメロディだけ。
去年は彼らの勝負の年で、たくさんタイアップもらったりMステに出演したりして、そこそこ一般層にも届いたと思うのですが、本人たちは全然納得いかなかったようです。「ロックバンドの枠から出られなかった」とインタビューで語っていましたが、そりゃそうだろと。存在としてのキャッチーさがないもの。
でも、彼らには曲があります。歌詞とメロディがあります。
これだけで勝負できるバンドなんてほとんどないんだから、胸張っていいと思うのです。
音楽的にそう近いわけではないのですが、私はこのバンドはスピッツのようなイメージを感じることがあります。1曲1曲が独立していい曲。リフやギミックではなく、メロディの良さだけで聴かせる楽曲主義。
曲はずっといいので、いつか着火する日が来るかもしれません。いつか「ロビンソン」ができる日が来るかもしれません。そうしたら、それまでの名曲の数々も日の目を見るかもしれません。「空の飛び方」「君が思い出になる前に」など。今は「クリスピー!」時期なのかもしれませんよ。
しかし、問題点もあります。それは、尾崎世界観の声です。
このバンドが凡百のバンドと差別化できているのは、曲ももちろんですが、尾崎世界観の声によるところが大きいです。この特徴的な高い声は間違いなくこのバンドの武器です。
しかし、この声が受け付けないという人もいるでしょう。上記でスピッツに似ていると書きましたが、草野マサムネさんの声を嫌いという人はほとんどいないはず。
特徴的な声が武器でもあり弱点でもあるのです。
こればっかりはどうしようもない。武器を磨き続けるしかないでしょう。声は慣れるしね。
第2章が始まったクリープハイプ、これからも楽しみにしています。
- アーティスト: クリープハイプ
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