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映画「猿の惑星 新世紀(ライジング)」 感想

猿の惑星」リブートシリーズ第2弾「新世紀(ライジング)」を見てきました。
前作が「創世記(ジェネシス)」ですが、どっちが最初か分からなくなるタイトルですな。
公式HP↓

映画『猿の惑星:新世紀(ライジング)』オフィシャルサイト
私は、オリジナルの「猿の惑星」は1作目のみ鑑賞、リメイクのティム・バートン版「猿の惑星」は鑑賞済み、「創世記」も鑑賞済み、というキャリアです。
今回のシリーズは新しいストーリーと聞いているので、オリジナルの2作目以降は見なくてもいいかな、と思っています。


前作「創世記」は、なぜ猿が高度な知能を持ったのか、なぜ人類は絶滅の危機に陥ったのかを上手く説明してくれました。
あれから10年。猿インフルエンザの蔓延により人類は激減し、文明の維持もままならなくなっていました。この辺を1分ほどのニュースのナレーションで済ますところは上手い。いちいち描いていたら時間足らなくなるからね。
でも、いくら生存率500分の1とはいえ、わずか10年でここまで現代文明がボロボロになるかな?あと、なぜか原発メルトダウンしていたけど、これって病気のせいなの?そして、この人類の危機の原因が猿インフルエンザにあるのなら、人類は総力を結集して山に逃げ込んだ猿を殲滅するはずなのに、そこはアンタッチャブルなのね。
まあいい。今作は「そういう設定」なのだから。


オープニングからしばらく、一切人間は出てきません。動物のみ。もうCGとかモーションキャプチャーとかのレベルは越えていますね。「演技できる猿」が出演しているのです。
実際、エンディングでのキャスト紹介はシーザー役のアンディ・サーキスが最初にクレジットされていました。
そして、猿のキャラ分けも素晴らしい。顔も違うし傷などで見分けもつく。息子は幼い感じだし、悪役は悪い顔しているし。


猿の社会は人間社会を抽象化しているようで、そこが面白かったです。家族や群れを守ることが一番の目的だったのが、知能・社会の高度化によって裏切りや騙しをする奴が出てきます。
そして、銃についてもチクリ。銃があるからでかい被害が起きるんや、銃はアカン!


この物語は猿側の「猿は猿を殺さない」という格言(人間は人間を殺す。だから猿は人間より上だ)がキーワードになっています。
クライマックスで敵役の猿コバが鉄柱にぶら下がって助けを乞う場面。同族の猿を殺したコバに対してシーザーが採った行動は、「お前は猿ではない」。掴んだ手を離し、コバを見捨てます。
ちなみに、普通の猿なら片手でぶら下がっても簡単に這い上がることができるのですが、この闘いの中で脇腹に大けがを負っているという状態なので、這い上がれないのです。脚本ちゃんとしてる!
シーザーは仲間を殺したコバを(結果的に)殺してしまうのですが、ここは少し違和感を覚えました。コバは「猿は猿を殺さない」を破ってしまうのですが、シーザーにはこの格言を守って欲しかったです。裏切ったコバに対してもバカ正直に格言を守り、そのせいでピンチになるが、結果的に勝つ、という流れがいいのでは?マルコム(人間側の理解者)がコバを撃つとか。


人間との共存派であるシーザーが勝利したことにより戦いは終わりかと思いましたが、武装部隊がやってくるということで戦争は避けられない事態になりました。ということで次作に続く…。
ラスト、シーザーのアップになるのですが、目ぎりぎりまで寄ると、もはや猿と人間の区別はつきません。どっちが猿でどっちが人間なのか。もしくは既に猿と人間には差はないのでは。そんなことを考えさせるラストショットでした。


いくつかツッコミや要望を。
コバとの闘いの後で、猿を殺してしまったことに対する説明などをシーザーから群れに向かって何か一言が欲しかったです。
クライマックスで猿が銃を奪って攻撃を仕掛けるのですが、猿たち銃の使い方上手すぎ。あと火を恐れなすぎ。
前作の主人公シーザーを活かすために10年後という設定ですが、10年で進化しすぎ。馬も乗りこなし、道具も作り、火も操る。偉い猿には髪飾りやマスクのような装飾まで施してある。人類の衰退も併せて3世代くらい後にした方がしっくりくる。でも、そうしないと「あの時の思い出」などが活きないしな。しょうがないか。


さて、まだこの物語は続きます。
多分次(3作目)ではシーザーの息子の成長とシーザーの死が描かれるでしょう。そして第1作目に登場したシーザーの育ての親(ウィル)も登場するでしょう。
その次(4作目)に人類との決定的な決裂があり、5作目で最初の「猿の惑星」につながる円環が描かれてエンド。オリジナルに倣って5作でまとめるはず。


ツッコミどころはありますが、それでもめちゃめちゃ面白い作品でした。物語の筋は思った通りですが、それを大勢の頭脳が作っているのが素晴らしい。脚本のスキを埋め、無駄な台詞を省きながら状況を説明し、起承転結を作り上げる。ハリウッド大作ならではのカタルシスが詰まっています。
※ハリウッド大作だからこそ鼻につく演出の作品もあるし、小規模だからこそ監督の独断が味を生み出している作品もあるのでどちらがいいというわけではありません。
そして何よりも猿たちの描き方。CGだなぁとかモーションキャプチャーだなぁなどは全く思いません。猿が、ゴリラが、オランウータンがそこにいてしゃべっているのです。この最先端技術により、物語に入り込めるのです。技術、ありがとう。


今作を見る人は「創世記」を見てからの方がいいですよ。この世界観の前提が分かるので、今作を違和感なく見ることができます。



映画『猿の惑星:新世紀(ライジング)』新予告編 - YouTube

ティム・バートン版はあまり評判がよくないようですが、私は駄作だとは思いませんでした。あのラストを知っているので、そこに向かう筋書きを追うように見てしまうからかな。