やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

よくぞ真っ当に育ってくれた。『サワコの朝』清塚信也の回

毒親ではなかったのか?


先日も『サワコの朝』の書き起こしをしたばかりですが、また面白い回があったので書く。
今回のゲストは清塚信也さん。『関ジャム』でよく見ますが、それ以外の番組では見たことがありません。ピアノが上手いのはもちろんですが、しゃべりも上手くてとてもテレビ向き。そしてたまに「親が厳しかった」という発言をされていたのは覚えています。

母がとにかくクラシックが好きで憧れが強くて。でも子供の頃やりたかったのにやらせてもらえなかったというのがすごくコンプレックスみたいで、それで僕らにこの英才教育を。
(阿川)自分の夢を子供に託し。
そうなんです。それはそれはもう厳しくて…。

どれだけ厳しかったかというと

姉(バイオリンを弾く)がいるんですけど、小さい頃二人で遊んで笑ったりしてると、母がもう鬼のような形相で「今笑うな!人生の後半で笑え!」って言うんですよ。小学校低学年ですよ、僕ら。もう「笑う暇があったら練習しろ」って。僕らが続けてこれたのは怖かったからです。
だって、「あなたたちは音楽家になれなかったら、そのときは生きていなくていいです」ってはっきり僕らに言うんですよ。

怖ええよ!

毎朝5時起きで朝練から始まって、でもときには眠くて起きられないときもあるじゃないですか。そしたらまた母語録ですよ。「いい?人はいつかずーっと寝るときが来るんだから、今は起きなさい」って。小2とかですからね、それ。


この番組は「記憶の中で今もきらめく曲」というのをゲストが紹介するのですが、清塚さんが紹介したのは槇原敬之『どんなときも。』。これにまつわるエピソードもすごい。

僕はゲームも映画もドラマもテレビも好きだったんですけど、そういうのは禁止されているから、唯一母に抵抗できるのがピアノで、ピアノを弾いているんだけど自分の好きな曲を弾こうと。
で、バッハとかの楽譜をピアノの前に置いて、最初はバッハのポップスアレンジとかジャズアレンジとかにして弾いてみたらバレないわけですよ。これ、バレないから「よし!」と思って、じゃあ次は『ドラゴンクエスト』をって。『ドラクエ』ってクラシック調だからバレないんですよ。
これですごくスリルを感じて、逆に面白くなってきちゃって、どこまでならバレないんだろうと思って次はマリオをやってみたんですよ。そしたら、セーフだったんですよ。よし!ざまみろ!と思っていろいろ弾いてみて、『どんなときも。』を弾いたら、サビ前の「ジャッジャッ、ジャジャ」でバレたんです。

「ガキ使」「水曜日のダウンタウン」のような「限界に挑戦」を既にやっていたんですね。


コンクールで優勝するのに一生懸命だった清塚さんは、ポーランドの恩師の「あなたはショパンコンクールじゃなくて音楽を愛してやっているんでしょ?」という言葉に感銘を受け、コンクール一辺倒からは外れていきます。
そこから芸能界へ。もちろん母親から大反対されます。

二十歳の誕生日の日に朝6時くらいに僕が営業(芸能界に入るために自分を売り込みに行く)に行こうとしたら「また行くの?」みたいな感じで言われるわけですよ。
そこで、「絶対間違ってない。音楽家というのは人だかりができるところに自ら行って演奏しなきゃ正義じゃないんだ。分かってくれる人だけでいいなんて言っていたら音楽は成立しない」って大げんか。

しかし、ピアノが弾けるといってもそう簡単に芸能界で仕事になるわけではなく、100社を超える芸能事務所や音楽会社に履歴書やデモテープを送ったそうです。


そして今の活躍があるわけですが、そんな清塚さんにはお嬢さんが二人いてピアノを習っているそうです。

習っているみたいですけど、僕は全然関与してないです。自分では教えないです。っていうか母みたいなことはできないです。だってあんな可愛い子供たちにあんな仕打ちできないですもん。こんなに可愛い、純粋無垢なあの笑顔に「人生の後半で笑え」とは言えないです。

そんな母はいまどうなっているか。

「信、子供は伸び伸びと遊んで育てなさい」って。僕、母親頭おかしくなっちゃったのかと…。
今となってはもう全然優しくなっちゃって、先日姉と実家に帰ったときに「どうしたの?なんか考えが変わったの?」って訊いたら、「うん、お前たちは失敗した」って。ムカつくでしょう?なんか「子供が萎縮する」とか言っちゃって。
まあ、今となっては愛だったんだろうなって思うんですけど。

よくそんなこと思えるなー。


いやほんと、確かに愛なんでしょうけど、それは自分の夢を叶えるための愛の鞭であり、子供のための愛ではないと思うぞ。よくぞこんなにきちんと育ってくれました。娘さんは伸び伸びと育って!