やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

映画『US』 感想

メタファーファースト


映画『US』を見ました。公式サイト↓
usmovie.jp
ゲット・アウト』のジョーダン・ピール監督の新作ですから、期待しかないですよ。そのためにはるばる遠出までして見に行ってきたのですが、感想は「がっかり」でした。


(以下、ネタバレあります)


最初にネタバレ結論書いちゃいますが、クローン人間の襲撃だったわけです。でもさー、そんなこと、なくね?
クローン自体はいいとして、地下で過ごしているのもいいとして、一斉蜂起もまあよしとしよう。でも、そんなうまいこと自分の本体に襲撃できる?お揃いのつなぎとかハサミとか、どうやって調達したの?手をつないでいる人は襲撃終わった組?これから?
クローンも、だいぶ前に計画は終わったのにジェイソンのような子供までクローンが存在するのはなぜ?
この辺がクライマックス以降に引っかかって乗り切れませんでした。


また、途中までは彼らのことは劇中の登場人物も見ている私たちもまったく分からないわけです。この「何だか分からん=何をすればいいのか(何をしたらクリア・ゴールになるのか)分からん」の時間が長くて、倒せば(殺せば)いいのか(そもそも殺して死ぬ相手なのか?ゾンビ的な相手なのか?)、逃げればいいのか、見ている私たちは何を期待して見るべきなのかが分からないのです。


結局主人公の家族はクローンたちを殺しまくるわけですが、子供の目の前で殺しまくるのです。子供も主体的に殺すのです。いくら緊急事態とはいえ、この辺の倫理観の破綻はずーっと違和感ありまくりでした。


ラストの「実は自分がクローンの側だった!」というどんでん返しは素晴らしかったし、それに伴う「だからああだったのか!」という伏線回収とそれぞれの意味づけは上手いなーと思いましたが、時既に遅し。そんなこと、起きないよ?の方が勝ってしまいました。
・クローンは教育を受けていないのでしゃべれない
・主人公アデレードは事件によりクローンと入れ替わったので、当初はしゃべれない。だから失語症と診断された
アデレードの影であるレッドは本来のアデレードであるためしゃべれるが、こちらは本当に失語症になってしまったため、かすれるようなしゃべり方しかできない
・この入れ替わりがこの事件の動機


もちろん、この作品がアメリカの現状を暗に描いているのも理解します。地下の人たちはアメリカで下層に位置する人たちのことなのでしょう。いるのに無視されている存在。
別荘を持つような富裕層たちはこういう存在から反撃を受ける日が来るかもしれない。
そういったメタファーを込めてこの作品を作ったのでしょう。タイトルの『US』は「私たち」であり「アメリカ」そのものなのだ。


はい、分かりますが、その前に実際の物語の方を面白く作ってくれ。面白い物語→実はこんなメタファーが、の順ですよ。メタファーのために物語を作るな。
というわけで、私はあまり乗れませんでした。残念。
あ、効果音はとてもよかった!ハサミがシャキーンと鳴る音とか。


ゲット・アウト』はめちゃ面白かったのにー!
ese.hatenablog.com


Us (Original Motion Picture Soundtrack)

Us (Original Motion Picture Soundtrack)