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映画『罪の声』 感想

面白い小説!→映画にしたら面白い?


映画『罪の声』を見ました。公式サイト↓
tsuminokoe.jp
「グリコ森永事件」を、フィクションだから固有名詞は変えつつ、中身はほぼそのまま扱った作品です。原作は未読。
原作が出たときも評判がよく、映画化が決まり主演が小栗旬星野源と聞いたらそりゃ見に行くでしょ。
劇場は『鬼滅の刃』フィーバー(10スクリーン中5スクリーンが鬼滅!)で大混雑。『罪の声』も満席に近い入りでした。久々に両脇に人がいた。


感想としては、「物語としては面白いけど、映画としてはそうでもない」「つーか、映画に向かない題材なのでは」です。


あの未解決事件の真相に迫るというテーマ、事件で使われた子供の声が自分だったというつかみ。面白そうです。
実際面白かったのですが、基本「関係者に話を聞きに行く→新しい証言→次の関係者に」という流れなので、画的につまらない。台詞と情報量が多く、人名や関係性を追うので精一杯。
二人の会話を丁寧にカット割りしていく単調な絵面。アクションや暴力もないので、作品が動かない。
それでも脚本のメリハリで興味の持続は続きます。阿久津(新聞記者)と曽根(テーラー)の場面交代のテンポがちょうどよく、中盤で交わるところも上手い。
聡一郎や達雄にたどり着く場面でのカタルシスがもっとあったらよかったのになー、と思いました。この作品のクライマックスなのに。


原作は未読ですが、とても面白いようです。これは映画化したい!と思うのも分かります。しかし、この原作を映像化して、面白くなるかしら。物語の面白さと映画の面白さはイコールではありません。小説・漫画・映画と、それぞれに相応しいフォーマットはあります。何でもかんでも映像化すればいいってもんじゃない。


と書きましたが、物語は面白かったです。
事件に使われた子供の声に焦点を当てる取り上げ方は上手いなーと感じましたし、当時子供だったら今もまだ40代くらいで健在のはずで、彼らはどう生きているのか、事件のことを知っているのかなど、巻き込まれた人たちを描くことで事件の真相だけではない複合的な物語になりました。その分、真相部分は薄くなっちゃったけど。ドキュメンタリーの手法で描いたフィクション(フィクションの手法で書かれたドキュメンタリー?)のため、あまりはっきり描くことが難しかったからかな?


また、話を聞きに行く先にいるメンツが素晴らしい。名脇役勢揃い。宇崎竜童と梶芽衣子のキャスティングは見事!
もちろん主役の二人も素晴らしかったですが、特に小栗旬!いい声なので聞き取りやすく、特別な個性はなくとも「ちょうどいい熱心さ」が上手く出ていました。


そして、イギリスロケが素晴らしい。映像の素晴らしさはもちろんですが、今の時代に海外でロケができる制作費が素晴らしい。基本日本の中だけで地味な絵面がこのロケで空気が変わってとてもよかったです。


というわけで、面白かったけど果たしてこれは映画に相応しいのか。『世界仰天ニュース』や『アンビリバボー』、もしくはNHKスペシャルで十分なのではないか、とも思う作品でした。


罪の声 (講談社文庫)

罪の声 (講談社文庫)