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映画『エルヴィス』感想

健康と契約は大事


映画『エルヴィス』を見てきました。
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エルヴィス・プレスリーは、スターであることは知っていて代表曲は聴けば分かるくらいの知識で、彼の生い立ちや人生は何も知りません。本作はマネージャーだったトム・パーカー大佐が重要な立ち位置にいますが、彼のことも何も知らない。いろいろ知っていた方がより楽しめると思いますが、何も知らなくても丁寧な描き方なので問題ありませんでした。



面白かったです。
前半の、エルヴィスがブレイクする瞬間、世間に見つかる瞬間、会場の空気が変わる瞬間の描写がとてもいい。最初は「お前誰やねん」だったのが、歌い出し踊り出すと空気が変わる。すぐに反応して黄色い声をあげる女性もいれば、「何これ、反応しちゃっていいのかしら」と戸惑い・ためらう女性もいる。その後そのためらいを踏み越えて歓声をあげる女性たち。着火する瞬間を見ました。


エルヴィスというと腰を動かすダンスが有名で、そのセクシャルな動きで女性人気があったように思われがちですが、そうではなく、白人でありながら黒人社会で育ちR&Bやゴスペルなど黒人音楽を聴いてきた彼だから、肉体性や官能性を帯びた歌を歌うことが出来、あの動きはその具現化なのです。
エルヴィスが「ロックンロールの開祖」と言われるのは、ここに理由があります。カントリーとR&Bを融合し、踊れる音楽(ロック&ロール)を作ったからこそ、人々は熱狂したのです。


この「見つけてしまった」「恋に落ちてしまった」「ハマってしまった」瞬間の気持ちって、エルヴィスに限らず、自分の推しに当てはめることができますよね。マイケル・ジャクソン沢田研二、ジャニーズの皆さん、最近ならK-POPアイドルなど。私は尾崎豊岡村靖幸を思いながら見ていました。
特に、最初は世間から眉をひそめられたり半笑いで見られている段階で「見つける」と、「自分だけがこの人の価値を分かる」と、より熱狂的にファンになります。これまでの社会にはいない存在だから、すぐには受け入れられない。それが受け入れられたとき、社会は新しく更新される。


晩年、太ってしまい薬物依存もあり立って歌うことができなくなったエルヴィス(それでも歌声は素晴らしかった。ブレスは苦しそうだったけど)。そして心臓発作で42歳で亡くなる。
42歳は若い。そこで私は二人のミュージシャンを思い浮かべました。上にも書いた尾崎豊岡村靖幸です。
尾崎は、26歳で亡くなってしまいました。「10代のカリスマ」というレッテルを更新することができず苦しみ、亡くなってしまいました。何とか乗り越え、30代40代になった彼の音楽を聴いてみたかった。年齢を重ねることで生まれる新たな表現はどんなだったのだろう。
そして岡村靖幸。彼も同じように何度か社会的に死にました。しかし彼は生き返った。そして今も新しい歌を作り、ライブで歌い、ステージでデンスしています。この作品を見て、よくぞ生きていてくれた、乗り越えてくれた、復活してくれたと感謝と感慨を抱きました。


映画の話に戻る。
私はバズ・ラーマン監督作品は見たことないのですが、たぶん本質的には合わない。細かいカット割りは、ステージの狂騒を描くのに適していても、他のシーンもこれだと「せわしないな、落ち着かないな、ウザいな」と思ってしまいます。
エルヴィス役のオースティン・バトラーは美しくてよかったです。エルヴィスのあの魅力的な低音ボイスもできていたし。
パーカー大佐のトム・ハンクスは、さすがの上手さ。首回りのお肉は、毎回数時間かけて特殊メイクしていたのかな?大変!


159分という長尺作品ですが、長さは感じませんでした。『ソー』の119分の方がよっぽど長かった。それでもやっぱり長時間なので、トイレ対策して見に行ってください。


尾崎豊の記事
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