やりやすいことから少しずつ

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映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』感想

映画館での「体験」


映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を見てきました。
www.20thcenturystudios.jp
前作は2009年。このときも劇場で見ています。当時は3Dブームで、「これは映画館で見てナンボ!」と思いながら見ていました。
前作の感想としては「映像100点、お話はベタ」です。この映画は映像を見せることがいちばん重要なので、お話はベタで分かりやすい方がいい。だからこそ全世界で大ヒットしたわけです。
今回、続編を見る前にもう一度見たのですが、感想としては同じでした。まあ、お話はベタなので解釈の余地はないというか、感想は変わりようがないというか。
で、映像は今見ても十分素晴らしいです。2022年までにCGもVFXもずいぶん進歩したはずなのに、2009年の映像がまったく見劣りしないとはどういうことだ。キャメロン、あなたはすごい。


さて、2022年のキャメロンはどうかしら。

すごかった。すげかった。
前作の映像が今でも十分すごいのに、本作はさらにすごかった。予告編ではそこまで感じなかったけど、本作途中からの水中シーンはずーっっと「すごい」「金かかっただろうな」「ポストプロダクション重要だな」と思いながら見ていました。
そう、本作は水の物語で、水の表現がとにかく素晴らしかったのです。水の揺らぎ、映る光、揺れる髪の毛などなど。これは予告編ではあまり感じられなかった。ぜひ本編を見てください。


私は2D字幕で見たのですが、これを3DIMAXHFRで見たらどれだけすごかったか。近くにIMAXシアターがないので見に行けなくて残念。近くにないというか、当県にはないし、近県にもない。くそう、文化格差。
HFRはハイフレームレートの略で、通常の1秒間に24コマではなく48コマで撮影しているそうです。なのでさらに動きが滑らかになっているらしい。今でも別にカクカクしているなんてまったく思わないけど、HFRで見たらさらに滑らかなのかな。違い感じられるかな。


肝心のお話は、前作と一緒。つーか、前作で死んだ相手を蘇らせてまでやることかな。最初は植民地政策としての軍事行動だったのに途中からクオリッチ大佐の個人的な怨恨が目的になってる。別にいいんですけど、この映像と釣り合わない動機の小ささだな!と思いました。


それでも、話はするすると進みます。とても分かりやすい。丁寧すぎる筋運びで引っかかるところはどこもない。スカイ・ピープル(地球人)が攻めてきた→ここにいたら周りが危ないので逃げよう→海の部族へ→10億ドルの海の映像を見せつける→やっぱり攻めてきた→ハラハラドキドキ→勝った。
全世界で大ヒットさせるという絶対条件のもとで作ると、ここまで分かりやすくしなければならないし、そこに政治的メッセージを込めることは難しい(中国でも中東でも上映してもらうために)。その結果、ものすごく美しい映像を見せる家電量販店のテレビみたいな作品になりました。


ベタとはいえ、物語は十分面白かったです。捕まった!逃がした!また捕まった!とかはしつこいな、と思いましたが、それでもスリルは続く。
本作は、家族の物語です。前半は父親が子供を躾る・注意する・諭す描写が多いですが、ラストでは子供が親を助けるようになります。父親を助けるロアク、母親を助けるキリ、父親を助けるスパイダー。家族の絆と子供の成長。
つーか、クオリッチ大佐はまだ生きているけど次回作でもまた出てくるの?また同じ動機で戦いが起きるの?それはさすがに…。


本作はロアクが実質的な主人公で、彼の成長の物語でもあります。外見的な違いをからかわれ、子供同士のケンカになり、イジメがあり、仲直りがある。父親に対する尊敬と抑圧、兄に対する憧れと劣等感、自分はもっとやれると思う万能感と実際の無力さ。全世界の中学生男子あるあるじゃないですか。マジで本作は中学生男子がいちばんハマると思います。オススメです。
あと、ロアクはEXIT兼近に似ていましたね。


上で政治的メッセージはないと書きましたが、ひとつ気になったことがあります。
トゥルクンというクジラ的な生き物を狩る場面、あれは完全にクジラ捕鯨ですよね。そしてその銛の機械に付いている「日浦」というペイント(「日捕」だったかもしれない)。何で急に漢字出してくるの?何で日本の捕鯨船的な描き方するの?何でここだけアジア人使うの?
トゥルクンの油?が人間の老化防止に効くということでここだけ獲ってあとは捨てるという残虐的な狩猟方法でしたが、それは欧米のやり方でしょ。サメ漁とか。日本は油も肉もヒレも皮も全部使っているんだよ!同じにしないで!
ここだけすげーノイズでした。日本なら文句言われないと思ったのかな。舐められているぜ。


あと、これは物語上仕方ないけど、海の部族全員英語しゃべれるのね!


何度も書くように圧倒的な映像美で192分でも十分見ていられますが、それでも192分は長いよな。カットできるところ山ほどあったよな。あと50分縮められたよな。


本作は世界歴代興行収入4位以上でないと損益分岐点をクリアしないという恐ろしいビジネスモデル。キャメロンの頭の中には5作までの続編が用意されている(最近、7作までの用意があるという発言もあった)が、この損益分岐点をクリアしないと3作で打ち止めになるそうです。条件厳しすぎるだろ!
それは、金をかけすぎているから。この映像美を作り出すにはこれだけのお金が必要なのでしょうが、それにしてもお金かけすぎじゃない?お金って、技術や人数だけでなく、日数(時間)でも変わってきます。これだけの映像を作り出すためのポストプロダクションにはそれなりの日数が必要で、その結果がこの金額なのでしょう。それにしても。
最近のMCU作品のVFXが拙いのは、時間がなくてしっかりと映像作成ができていないからだと思っているのですが、時間をかけないと作り出せない映像がある一方で、そこを極めすぎるといつまでたっても完成しないし費用も際限なくなる。ちょうどいいバランスって難しいですね。


この作品は「体験」なので、後日家で見ても意味がない。今劇場で、それもできるだけ最高の環境で見てほしいです。IMAXのある地域に住んでいる人は必ずIMAXで。3Dで。HFRで。もしくはドルビーシネマで。高いとか言うんじゃない。これはその辺の映画とは別ものなのだから。