やりやすいことから少しずつ

好きだと言えないくせして子供みたいに死ぬほど言ってもらいたがってる

伊坂幸太郎「あるキング」 感想

映画でしかできないけど映画化しなそう


久々に伊坂さん。「あるキング」が文庫になっていたので買いました。
裏表紙には

この作品は、いままでの伊坂幸太郎作品とは違います。意外性や、ハッとする展開はありません。

と書いてあります。逆にそそるじゃないか。
読んでみると、確かに伊坂さんのお話ではない感じですが、さくさく読める文章や登場人物のコジャレた台詞回しなど、伊坂さんらしさも十分にある作品でした。


巨大な才能には、尊敬の裏に畏怖と反発がある。


出る杭は打たれるという、日本らしいお話。俺たちの楽しい遊びに空気の読めないマジの奴が来ちゃった感じ?(語尾上げで読んでください)
でも、もし王求(このお話の主人公)がメジャーリーグに挑戦して成功したら、日本人は野茂やイチロー以上に応援していたでしょう。アメリカという「どうあがいても勝てないDNAに刷り込まれた高い壁」を壊す・もしくは超えるのだから。
自分たちの世界の外で暴れる・活躍するのは構わないけど、自分たちの世界に来られると疎ましい。野球に限らず、どこの世界でもありますね。


なんてことを書いていてふと、ダルビッシュ投手を思い出しました。勝って当たり前、負けたときがニュースになるとき。
彼ももともとはメジャー志向なんてなかったのに、プロの選手が「本気出さないでくれよ」なんて冗談でも言うような状況になってしまい、もう国内ではやることがなくなってしまい、アメリカに渡ります。
現在は慣れない環境や過酷なローテーションで「大活躍」とは言い難い状況ですが、彼は多分このヘビーな環境を楽しんでいるはず。私の勝手な想像ですが。


それにしても、王求の両親は怖い。


この作品、映画化するかしら?
モノローグが多くなるのでTVドラマよりは映画のほうがいいな。でも、映画向きじゃないですよね。派手な見栄えのするシーンも少ないし。


舞台だったらどうかな?


あるキング (徳間文庫)

あるキング (徳間文庫)