エンタテイメント!
映画『騙し絵の牙』を見てきました。公式サイト↓
movies.shochiku.co.jp
原作は未読。
以下、ネタバレあります。
面白かった!
いやー、これぞエンタテイメント。見ている間中、ずっと「面白い、面白い」と思いながら見ていました。
吉田大八監督の打率の高さよ!
お話が面白いのは原作のおかげなのかなと思っていたのですが、どうも原作と大きく変わっているそうですね。となると、やはり吉田監督の力なのか。
冒頭、犬の散歩をする出版社社長と、小説のゲラを読む出版社社員高野(松岡茉優)がカットバックで描かれます。徐々に足を速める犬の歩みと、小説にのめり込みページをめくる手が早まる高野の描写が呼応していて、いきなり面白い。
そして、この「犬の散歩をしていたら死んじゃった」という描写は、社長の急逝という物語の幕開けだけでなく、「手綱を握っているのは誰なのか」「主導権を握っているつもりでも、実は振り回されていた」などを暗喩しているのです!上手いぜ!
その後も、物語の動きとキャラの性格描写が同時進行で進むので見ていて気持ちいい。説明台詞一切なし。
また、出版社の権力争いだけだと画的に動きが少なくなるところを、飛行場や銃の場面で動きを出すところも上手い。エンタテイメントに徹しています。
お話は、出版社内の権力闘争がメインで、横軸に伝説の作家と期待の新人作家の話が折り重なります。そしてその中心に大泉さん演じる速水がいます。
速水は飄々としていて「面白ければいい」というスタンスかと思っていたのですが、ラストの高野に勝利を持っていかれたときにコーヒーを叩きつける描写で、「勝ちたい人」だったんだなということが分かりました。そうだったのか。
途中、ずーっとずーっと面白かったのですが、オチがちょっと弱いような…。高野にすっぱ抜かれた速水は、池田エライザ演じる城島咲に小説を書くことを依頼して終わりですが、それが起死回生の一手だとは思えないんですよね…。『騙し絵の牙』のタイトルに相応しいラストだったら100点だったのになー。
この作品は「めちゃくちゃ面白いです」なのは間違いないのですが、それでもいくつか気になる点を…。
●事件を起こした人の小説が載っているだけで、雑誌がそんなに売れるなんてことないと思うのですが…。
●「ここでしか買えない本屋」というコンセプトは面白いですが、作者にとってはメリットひとつもないので実際には不可能です。販路は多い方がいいに決まっている。今回は伝説の作家の「貴族のお遊び」だから実現したけど、絶対に続かないビジネスモデルです。
●いくら伝説の作家の22年ぶりの新作だとはいえ、38,000円(だったっけ?)の小説なんて誰が買うんだ。
紙の書籍の価値やポテンシャルは令和の現在、相当弱まっていると思うのです。
とはいえ、「めちゃくちゃ面白いです」。キャストも演出も素晴らしい。城島咲のマネージャー役まで素晴らしい。誰が見ても面白いと思うでしょう。吉田大八監督、あなたはすごい。
ちなみに、予告編のラストで速水の言う「めちゃくちゃ面白いです」は、違うシーンのアテレコです。劇中では違う場面でのセリフと場面を切り貼りしています。よく見ると口の動き違います。
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原作と違っているそうなので、原作も読んでみたいな。
吉田大八監督作品の感想あれこれ↓
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ブログには書いていませんが、『クヒオ大佐』『パーマネント野ばら』も面白かったです。『美しい星』だけはよく分からなかったな。